ビークラボ株式会社のサイトはこちら

“血みどろ”は、なぜ危険なのか

血みどろ

週一で仲間ブログの記事も更新されます
チガウがワカル!? 新米コスメ技術者のドタバタ奮闘記

週3で異なる目線の美容記事をお届け


美里康人

血みどろピーリング“は30%が怖いのか?
実はそうではない事実

実はツッコみも頂いたので、今日はきちんとピーリングアイテムの核心について解説しておきましょう。
あまり商品を特定してツツくのは避けてきましたので曖昧に説明してきましたが、どうやらユーザーさんがお知りになりたいのは具体的な問題のようで、輸入製品という事もあって今回は掲題の核心に迫ります。

とはいえ製品名は記述しませんので、何を言っているのか分からない方はキーワードを引っ掛けてGoogle先生から情報を得て下さい。

最初におわびと訂正

以前のピーリングをお題にした記事で一箇所記述ミスがありまして、まずはその部分を訂正しておきたいと思います。

毛穴訴求・ピーリング どう変わる?

この解説で、「AHAとはα-ヒドロキシ酸の略」と説明しながらも、その種類の中にサリチル酸を入れてしまっていました。
間違った記述になり、本当に申し訳ありませんでした。
酸ピーリングに使われるヒドロキシ酸で括っておくべきところをAHAと限定していましたので、訂正させて頂きます。
サリチル酸は皆さんもご存じの通り、ヒドロキシ酸の中でもαではなくβ-ヒドロキシ酸ですのでBHAになります。
今回の解説に重要なキーワードになりますので、きちんと訂正しておきます。

ちなみに、せっかくなので今回はもう少しユーザーの皆様にもお勉強になる説明も加えておきましょう。
ヒドロキシ酸の「ヒドロキシ」という言葉に覚えがある方もおられることでしょう。
そう、アルコールの記事のところで「アルコールとは化学構造にヒドロキシ基(-OH)がついた成分のこと」と説明しましたね。
ですのでこの酸も同じで、このヒドロキシ基がついたヒドロキシ酸は、別名「アルコール酸」とも呼ばれています。

さらにもうひとつ、α(アルファ)・β(ベータ)・γ(ガンマ)って意味がよく分からないかと思います。
これはヒドロキシ基(-OH)のついている位置のことで、α→β→γ→δ・・・と酸(-COOH)の位置から遠ざかっていくことを意味しています。
で、位置が近いほどに酸としての性質が強くなりますので、αはもっとも酸としては強いということになるわけです。

では、訂正と予備知識はこれくらいで本題に入っていきましょう。

血みどろ30%の謎

上で述べた前回のピーリングの記事では、具体的に市場の製品をあげてのお話は致しませんでした。
もちろん、昔のような解析記事へのご期待を頂く旨も理解はしていますが、以前にも提言したように現在はユーザーさんにとって利のある方のお話か、もしくはよほど消費者被害に及ぶような製品でない限りは、一製品をとりあげたコメントを控えるブログポリシーとしています。

というか、美容業界全体がきちんと化粧品に対して基礎知識を持って製品を見極められる業界向上の方が、社会的に大事だと思いますしね。

余談になりましたが、そんなわけで前回は具体的な製品については取り上げませんでしたが、あまりにもひど過ぎるといっても過言ではない製品の存在について、今回は詳細の説明をしておきたいと思います。

それは、お題のキーワード“血みどろ”でお分かりのことでしょう。
グリコール酸30%配合されている製品が、海外からの輸入で流通しているという事実です。
前回の記事で賢明なユーザーさんはこの製品の謎が解けていると思うのですが、いくら海外輸入とはいえ米国の規制で30%は一般流通させられませんので、裏があると考えて頂くべき製品なのですね。
それが前回解説した「実は中和されていて濃度は低い」というものです。

全成分が英語で書かれてあるので気付かなかった方も多いかもしれませんが、成分の4番目に「Sodium hydroxide」と明記されています。 日本語に直すと「水酸化ナトリウム(表示名称:水酸化Na)」
はい、前回の解説記事のコレです。

ピーリング

pHが3~4の間で規制を守っていますので全て中和されてはいませんが、おそらくグリコール酸として残っているのは3~4%であることは間違いありません。
であれば日本のコスメでも存在していますので、特に凄い効果が見込めるわけではないことが分かると思います。

これまでもこのブログでは、「魅惑の数字はマジック」のお題シリーズでPRのための数字利用を見破る見極め術を解説してきましたが、これなども最たる例のひとつ。

数字のマジックシリーズをご覧になれなかった方は、コチラ。

魅惑の数字は、マジック<99%〇〇〇編> その1
https://cosmetic-web.jp/column/cosme-mysterious/

魅惑の数字は、マジック<99%〇〇〇編> その2
https://cosmetic-web.jp/column/cosme-mysterious-2/

魅惑の数字は、マジック<〇倍!編> その3
https://cosmetic-web.jp/column/cosme-mysterious-3/

魅惑の数字は、マジック<な、なんと〇億個!編> その4
https://cosmetic-web.jp/column/cosme-mysterious-4/

魅惑の数字は、マジック<1,000mg編> その5
https://cosmetic-web.jp/column/cosme-mysterious-5/

魅惑の数字は、マジック<原液編> その6
https://cosmetic-web.jp/column/cosme-mysterious-6/

実は怖いのはソコではない

さて、もうくだんの製品のブームは2年以上にもなりますしいまさら感がありますので、もう少し巷のレビューなどとは異なって深堀りした解説をしておきたいと思います。
その核心に触れるのに、少し前説をしておきましょう。

皆さんもご承知のように、酸ピーリングといえばグリコール酸と言われています。
日本や海外での規制においても、このグリコール酸の濃度が対象になっていますので、これが原則のようになっているのはご存じでしょう。

でも、日本でも規制の対象とはなっていない「乳酸」あたりは、同じAHAでも高濃度の製品がいくつも見られています。
これはなぜなのでしょう?

これはいわば、酸としての強さ分子量に理由があります。
酸としての強さは酸解離定数によって決まり、グリコール酸は乳酸よりも数値が低くて酸としても強く、なおかつ分子量も小さいため皮膚への作用が強いということになります。

・グリコール酸
分子量:76
酸解離定数:3.83

 ・乳酸
分子量:90
酸解離定数:3.86

で、これを踏まえた上で、実は例の製品のもうひとつの数字に着目して頂きたいのです。 実は、これがこの製品の話題をあえて取り上げた大きな理由なのです。

それは、「BHA2%」

いくらグリコール酸の酸としての濃度は数%レベルだとしても、実はこちらが大きな問題。
このBHAはきちんと「Salicylic acid」と明記されており、つまり「サリチル酸」
これが2%ということです。
日本の規制では、化粧品へのサリチル酸配合は0.2%までしか認められていません
それが10倍配合されているのですから、これはマズいとしか言えません。

お若いユーザーさんはご存じないかもしれませんが、サリチル酸はその昔「タコの吸い出し」と名付けられて、イボやかかとのタコを溶かして除去する薬によく使われた、角質溶解剤なのです。
今でも残っているのは「イボコロリ」という製品で、これはサリチル酸が10%配合された医薬品で、まさにイボを除去してしまうほどの強力なアイテムです。
このような成分が2%も配合された製品をお顔に使うなど、無謀としか言えません。

この製品のレビューの中にも、数日たつとポロポロと皮膚が剥がれてきたというコメントをいくつも見受けます。
イボやタコみたく硬くて分厚く、しかもお顔ではない部分の角質がポロポロ剥がれるのならまだ良いですが、顔の皮膚がポロポロと目に見えて剥がれてくるのは、酸ピーリングのメカニズムとは異なって、正常な皮膚の再生とはならない可能性が高いと言えます。
例えば分かりやすい例では、やけどや擦り傷で治った後の皮膚はケロイド状になり、周りの皮膚とは違う状態になることを皆さんも経験されていると思います。
やけど後の皮膚は、他の部分の皮膚を切り取って移植整形することもご存じでしょう。

これと全く同じとまでは言いませんが、これに近い異常皮膚細胞として再生が進む可能性があるのです。
それが一部の方に指摘されている「ビニール肌」で、これはまさにツルっとしてしまった異常皮膚細胞として再生されてしまった可能性が高いのです。
これのマズいのは、基底細胞のところに損傷を受けているためにずっと同じ異常細胞で細胞生成が繰り返され、もう二度と元には戻れない点です。
やけどや傷跡が、何十年たってもずっと同じままというのがこの現象です。

サリチル酸の怖さ

というわけで、サリチル酸が2%も配合されている製品を、医師の監修なく自宅で自己責任で使うのは非常に恐ろしい行為であることをお話してきました。
ちなみにこの皮膚ポロポロ現象ですが、皮膚内部に湿潤していますので洗い流してもどんどん進行していることを忘れないで下さいませ。
塗布から数日経過してからポロポロ剥がれてくるのは、そういう意味です。

最後に、サリチル酸(BHA)がなぜそのようにヒドロキシ酸(AHA)と違って強い作用を示すのか、解説しておきたいと思います。

AHAに関しては酸の強さと分子量で比較して使い方を考えれば良いという話をここまでしてきました。
そういう意味では、サリチル酸も同様に並べるとこうなります。

・サリチル酸
分子量:138
酸解離定数:2.97

酸の解離定数はこちらの方が低いので、酸としても強いということに気付きます。
ただ、分子量がかなり大きくなるため、その分を差し引いて考えれば良い???

いえ、実はこれで判断してはいけないのがサリチル酸の特性。
それはココにあります。

サリチル酸

以前にもこの”亀の甲“は、ベンゼン環といって皮膚にとって色々と影響を及ぼしやすい話をしたことがあると思います。 例えばパラベンといった防腐剤や紫外線吸収剤などなど。
単純にこの亀の甲が全て皮膚に悪いというわけではないのですが、サリチル酸の場合はこのベンゼン環にヒドロキシ基(-OH)がついた酸であることが大きな問題で、この特別な性質によって分子量が大きくても酸としては非常に強い性質を示して、皮膚を溶かすというより「侵す」と言い替えるのが正しい理解になります。

まぁ、そういった背景があるからこそ、日本では化粧品への配合は0.2%に規制されているのですし。

今回は特別に市場製品をとりあげて解説しましたが、滅多に取り上げることをしないポリシーの中での特筆ということで、皆さんもひどい目に合われないようご注意下さいませ。
少なくても、塗布部位が全体にテカっとしてきたらツヤっぽくなったと喜ぶのではなく、危険信号と考えておかれるのがよろしいかと思います。
幾人かの芸能人の方に、この現象が表れている方をお見受けします。

では、また次週。

by.美里 康人

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。