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VC配合濃度と含有量

VC誘導体

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ビタミンC誘導体の配合%は

その数字がイコールではない?

 

以前に、この美容業界においては「流行成分」が市場活性化のキーという定説のお話をしました。
そういう意味では、前回の記事で取り上げたCBD(カンナビジオール)なんかも話題性に富み、美容業界の主流になり得るかどうかの分岐点にたっていると言えるでしょう。

ただ、前回の記事にしたためたように、化粧品への製剤化には技術的障壁が立ちふさがり、なかなか商品への展開が進まずに立ち止まっているというのが現実のようです。
そんな業界事情のせいか、最近ではふたたび美白成分としてのビタミンCが再燃している傾向があり、特にその配合濃度に注目が集まっているようです。

今回はこのビタミンCについて、これまでの記事で書かなかった裏話に触れてみたいと思います。

「分子内濃度」とは

ビタミンCの話題は、過去にシリーズ化して何度も話題に取り上げ、その中で配合濃度のことについても説明してきました。
そしてその中の重要なポイントとして、「分子内比率」という問題についても取り上げています。
今日はその辺りについて、もう少し分かりやすく掘り下げてみます。

「分子内比率」なんて言葉は、なんだか化学の専門用語で難しそうに受け取られるかもしれませんが、いつものように理解しやすい例えも用いながら簡単に説明していきます。

まず最初に、なぜこんなことを理解しておくことが必要なのでしょうか?

それは簡単なことで、化粧品の成分に使われるビタミンCには、大きく分けて「生ビタミンC」と呼ばれるそのままのアスコルビン酸と、これに何かの分子をくっつけてある「ビタミンC誘導体」と呼ばれている成分の2種類があります。

生ビタミンCは化粧品に配合すると非常に不安定で壊れやすいため、一部のメーカーさんを除いて美白をうたう製品のほとんどのビタミンCは、この誘導体が使われています。

イメージを絵にするとこういうことです。
バカじゃないだから・・・なんておっしゃらず、この後で分かりやすくなりますので。

ビタミンC誘導体120

で、この絵の面積は正確ではありませんが、まぁオレンジ部分と誘導体のグレー部分はほぼ同じ面積ということにしましょうか。
となると、生ビタミンCを100%としたとすれば、誘導体の方の大きさ、つまり面積は2倍になっているということになります。

ということは、例えば化粧品に配合する場合に各々を同じ1%配合したとすると、こういうことになりますね。

ビタミンC誘導体123

こちらも絵は正確じゃありませんが、面積は両方とも同じで総合で1%と考えて下さい。この絵の通り、同じ1%配合したとしても、生ビタミンCの方はそのままの1%ですが、誘導体の方のビタミンCの占める量は半分の0.5%になります

化粧品の成分配合量に、いちいちこうした成分分子の中の構成比率など明かしませんので、製品の説明には「ビタミンCを〇%配合」としか書かれていないはずです。
でも、誘導体の場合はビタミンCそのものの濃度は単純に比較できないということになるわけです。

 --じゃ、誘導体はどれくらいの割合で記載されている配合量を考えればいいの?

これを「分子内比率」「分子内濃度」といった言い方をします。
今回の話題の焦点は、ここになります。

誘導体の種類によって違う

さて、話題の核心に入りますが
ユーザーさんにとって商品のPRなどに書かれているビタミンC誘導体の配合濃度をどうみれば良いのか、気になるところでしょう。

上の絵のような分かりやすい表現で、進めていきます。

ビタミンC誘導体とひと言でいっても、実はいくつかの種類があって同じではありません
例えば皆さんもご存じの“アプレシエ(APPS)”といった、浸透性が何倍も高いと話題になった誘導体もその種類の中のひとつです。

こうして成分構造内のビタミンCが占める割合を、「分子内比率」「分子内濃度」といった言い方をします。
そして成分によってこの分子内比率は変わってきますので、当然のことながら「ビミタンCとしての濃度」は変わってくるわけです。

そこで、市場でよく見かけるビタミンC誘導体がどんな感じなのか、具体的に絵にしてみました。
先ほどと同じように1%配合したとして、オレンジ色の部分をみて頂ければわかりやすいですね。

ビミタンC誘導体124

%は端数を切り捨て、覚えやすいようにおよその数字にしてあります。
これを参考にして頂いて、製品に書かれている配合量にこの数字を掛ければ、およそのビタミンC含有量が分かってきます。

実際に製品に書かれている全成分名をきちんと掲載しておきます。

<生ビタミンC>
化粧品)アスコルビン酸

<リン酸マグネシウムタイプ>(通称:APM,VC-PMG)
化粧品)リン酸アスコルビルMg
医薬部外品)リン酸L-アスコルビルマグネシウム

<リン酸ナトリウムタイプ>(通称:APS)
化粧品)アスコルビルリン酸Na
医薬部外品)リン酸L-アスコルビルナトリウム

<油溶性タイプ>(通称:VC-IP)
化粧品)テトラヘキシルデカン酸アスコルビル
医薬部外品)テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル

<アプレシエ>(通称:APPS)
化粧品)パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na

<グルコシドタイプ>(通称:アスコルビルグルコシド)
化粧品)アスコルビルグルコシド
医薬部外品)L-アスコルビン酸 2-グルコシド

<VCエチル>
化粧品・医薬部外品)3-O-エチルアスコルビン酸

<グリセリンタイプ>(通称:VCグリセリル)
化粧品)ヘキシル3-グリセリルアスコルビン酸
   ※ブライトニング効果タイプの誘導体

生ビタミンCではダメなのか

ビタミンC

ここまで美白系化粧品に使われている、ビタミンC誘導体の濃度について解説してきました。

ただこうなると、ならば生ビタミンCでいいんじゃないの?という、さらに疑問が大きくなる方もおられるでしょう。
しかもアスコルビン酸は食品の酸化防止剤としてもよく使われるため、amazonあたりで破格なお値段で買うことができます。
食品向けですので、厳密にいえば化粧品などに使われている医薬品グレードのアスコルビン酸とは異なりますが、正直なところ純粋成分ですのでほぼ同じと考えて良い範囲です。
一時、手作りコスメのユーザーさんの間でも、これを購入して水に溶かし、美白アイテムとして使われた時代もありました。
コスパフォという意味では、これほどお安いコスメもありませんし。

しかしながら、果実の実が空気に触れると一気に色が変色するように、アスコルビン酸は空気・水にさらされると急速に酸化されてしまい、美白どころか逆にシミ・シワの原因になってしまいます
当時は、お肌に塗布したら水もなくなって酸化する前に浸透するだろうからと、あくまで抵抗を続けられるユーザーさんもおられたようですが、皮膚の上で成分がどんどん酸化されていく事実が広まってから、この流行は下火になりました。

というわけで、生ビタミンCという言葉はよさそうに聞こえますが、お肌にそのまま使うには問題があるというわけです。

もちろん、空気に触れないように水を使わない製剤化に工夫を凝らして生ビミタンCを配合したコスメメーカーさんもありますし、ならばそれで良いかと問われれば、課題がないとは言えません。

それは、皮膚内浸透の問題です。

先日もVCエチルのお題の際に取り上げたように、生体膜を使った医療機関のサブ試験でも、アスコルビン酸そのままではほとんど皮膚内導入されていない治験が得られており、成分開発に膨大なコストを掛けてでも、「塩(えん)」といった誘導体にしてあるのには大きな意味があるということですね。

ここはこのような試験結果をみないでもいまさらのお話で、皆さんも点滴の「生理食塩水」アクエリアスといった飲料でも耳にしたことがあるように、ヒトのカラダは浸透圧の関係で食塩といった塩類が浸透しやすいようにできていることから、そのメカニズムは明確にされています。
これは、体内に持つイオン性と関りがあるんですね。

市販コスメをどうこう述べることと繋がるのは避けたいので、今回の解説はこれ位で終わりにしましょう。

また次週。

by.美里 康人

6 COMMENTS

Noah The Cat

お久しぶりです。Noah The Catです。
寒暖差が激しい季節ですが、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

まだこのブログをご覧になっているか、心配ですが、最近またビタミンCについて、面白げな情報を得たので、ご存知であれば教えてください。

日本製品ではなく、韓国の製品なのでブランド名など開示してしまいますが・・・
VARI:HOPEという韓国のメーカーが純ビタミンC/Ascorbic Asid濃度13.5%の美容液で、水溶性にこだわって、pH3.338の酸度のまま、特許を取得した特殊なベータグルカンと純ビタミンCを組み合わせて、pH3.338というかなりの酸度でも肌に刺激が出ないように調整し、+イオンポリマーと-イオンポリマーで二重コーティングして安定化を図り、気温50度の保管器で15日間保管しても「褐変色」しない、つまりは変質しづらい純ビタミンC成分を開発したそうです。
気温50度で15日間保管というのは、VARI:HOPEのビタミンC研究者曰く、2年間の品質保持耐久試験に相当するらしいです。

これはアメリカのDr.Obagiのセラムやロー〇製薬のオバジセラム(pH3.8だそうです)(私は両社の20%濃度セラムを使ったことがあります。アメリカ版と日本版は処方が全く違うらしく、アメリカ版の方が独特のべとつきがなく、私の肌の上では酸化安定性が高く、酸化臭や変色が目立ちにくく、刺激も弱かったです。正直〇ート製薬処方の方は臭いし変色するので嫌いでした)を凌駕する新しい安定化純ビタミンCだそうです。←VARI:HOPE主張するところ。

ネットで開示されていない、企業秘密な部分も多分にあると思いますので、上記の情報だけで不安定なビタミンCを2年間安定化できるとは思わないところもあるのですが。

そのビタミンCの安定化を研究しているというのが、御年70歳でビタミンC研究42年の調 兵器(ジョ・ジュンギ?)さんという博士らしいです。いくつか論文を発表しているらしいのですが、ご存知の方でしょうか?韓国ではそこそこ有名なビタミンC研究者のようです。

ネットで拾った情報なので、どこまでが真贋なのかさっぱりわかりませんが、もし純ビタミンCの最大の欠点である不安定性・刺激性が緩和できたのなら、かなり優位な研究で、画期的な商品だと思います。

美里さんの知見としては、いかが思われますでしょうか。経験豊富な研究者目線で教えていただけると幸いです。
ご自愛ください。

返信する
美里

Noah The Catさん、お久しぶりです!
しばらくこちらを更新しておりませんでしたので、コメントに気づかず申し訳ありませんでした。。。

ご質問の生VCの安定化の件、少し調べてみましたが、確かにカチオン化ポリマーが使われていますね。
これがどう安定性に絡んでいるのかは、ちょっと分かりません。
ただ、全成分を見る限りではシリコンポリマーが使われていますので、主たるメカニズムは水に触れないようにこの中に入れる事で安定化を図っているのかもしれません。

しかしながら、どうなのでしょう?
シリコンポリマーの被膜はかなり強固ですので、これが皮膚表面に塗布されると肝心のVCが浸透しないように感じますが。
確かに皮膚に直接触れにくいので刺激は少ないかもしれませんが、本末転倒な気がします(苦笑)

また、メカニズムとは無関係ですが、50℃で2週間が2年間の品質保証というのは理に適っていません。
先人者の学術論文によれば、2年間を担保するのであれば最低でも1ヶ月はクリアしないといけないのが通説ですね。
もちろん、品質変化に係る劣化メカニズムにもよりますが。

そして最後にこれは私の私見も含まれますが、生VCは皮膚内に浸透しにくいという医療機関の治験がありまして、自分はこれを支持しています。
つまり、あえて塩にしているのはもともと安定性の問題だけではなく、浸透性能にも効果を期待しているのが出発点と思っています。

明瞭なお答えとは言えず申し訳ありませんが、参考になればと思います。

美里

ps.ご質問頂いたなら、メールでもご一報下されば良かったのに^^;

返信する
Noah The Cat

先ほどのコメントの補足・訂正情報です。
博士の名前の読み方はチョ・ビョンギさんのようです。
発表されている経歴は慶南大学食品KAIST化学科(修士)卒業、バイオテクノロジー科(博士)卒業。コスメティックR&D研究経歴40年(いつの時点からでしょう?)特許出願225件、論文投稿20件、論文発表26件、だそうです。
私ではこの情報の真偽は確かめられませんが、VARI:HOPE公式サイトではこのような肩書の方のようです。

返信する
Noah The Cat

またまたすみません。コピペミスです。KAIST化学科(修士)卒業、慶南大学食品バイオテクノロジー科(博士)卒業です。
博士の経歴については、補足事項としてご参考までにしていただき、公開情報にしていただかない方が良いかもしれません(苦笑)真偽不明の情報なので。

返信する
Noah The Cat

ご返信いただきありがとうございます。ダメもとでコメントしてみました。恐縮です。

やはり・・・というかL-Ascorbic Asid配合製品は難しいですね。刺激を緩和させるためにシリコンコーティングする、おもしろいトリックです。シリコンはコーティング剤でしたね。皮膚にバリアを張る機能もあるので、浸透してほしい成分が入っていかなくなってしまえば、本末転倒ですね。日焼け止めやファンデーションに入っていると心強い成分ですが。

いっそリポソーム化すればいいのにと思ってしまいます(サプリメントではリポソーム化ビタミンCを謳う商品があるので)いや、シリコンポリマーとカチオン化ポリマーでなんちゃってリポソーム化しているんでしょうか?

結局、美里さんがなんども言及されているメーカーさんT〇〇T V〇〇T(なんという分かりやすい伏字)のAPPSや油溶性ビタミンC誘導体、水溶性ビタミンC誘導体が今のところ続けやすいミドル価格で効果もある程度期待できるかなぁ、という結論に至ってしまいました。

このメーカーさん、良心価格の割には攻めた成分を使っているので、いったいどんな人が中で働いているんだろう?と想像しています。
ほとんど広告を打たず、容器も頑張りすぎず、「中身勝負」な質実剛健さが凄いので、もっと評価されてもいいのでは?と思っています。
資〇堂さん、〇王さん、コー〇ーさん、〇ーラさんの様な大資本はテクスチャー・香り・容器・広告からして素晴らしいのですが。

なぜか私は〇ート製薬が作った化粧品に接触性皮膚炎など肌荒れ発生しやすくて、使っている成分が微妙に合わないのか、成分設計で合わないのか?と思いながら、どんなにバズっていても使うことをためらってしまいます。
皮膚が薄い&アレルギー体質なので、顔よりも首辺りが高確率で接触性皮膚炎出ます。顔の方が丈夫なんでしょうか(笑)

12月末の割には寒暖差の激しいこの頃ですが、ご自愛なさって残り少ない現役時間をお楽しみください。

返信する
美里 康人

>Noah The Catさん

疑問に感じられたところのみですが、ご参考になると思い返信させて頂きますね。
VCをリポソームで抱合して安定化させる考え方についてです。

この考え方はすでに一部でチャレンジされており、実用化にも至っています。
しかしながら抱合量に限界があり、配合量として大した事にならないというのが結論です。

なぜならVCは「有機酸」ですので、”リポソームの被膜は酸に弱いから”、です。
かといってpH調製してしまうと「塩」となりますので、さらにリポソームは塩にも弱く皮膜を破壊してしまうという問題に突き当たります。
ゆえに、誘導体も塩ですので、これもリポソーム抱合はムリとなります。

まぁ、正直なところ現状の技術背景では今が限界と思いますので、高配合で効果を期待するならばあらたな誘導体が開発されるのがもっとも近道ではないかと。

ご参考になれば。

美里

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