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クレンジングはメイクアイテムを見極めて~その1

クレンジングを見極める

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美里康人

様々な種類のクレンジング
何を落とすのかの、メカニズム解説

連日の猛暑日です。
水難事故や熱中症にはくれぐれもご注意下さいませ。

さて今回は、暑中お見舞いスペシャルとして、3回に渡ってクレンジングの選び方について専門的な立場からかなり踏み込んで解説していきたいと思います。
特に昨今はマスク生活が長くなり、リップメイクをほとんど使われない方も多く、そうするとリップメイクをしっかり落とす必要のあるクレンジングは必要がなくなり、お肌への負担の少ないクレンジングで良いのではないか?といった考え方も出てきますね。

メイクも様々なカタチの種類が増えて多様な時代になりましたので、当然のことながらご自身がお使いのメイクアイテムや、その種類に応じて使い分けていく必要性のお話をしてまいりましょう。

メイクの種類

まずは始めに、オフしなければならないメイクアイテムの種類について、あらためてピックアップしておきましょう。

 ・日焼け止め
 ・化粧下地
 ・ファンデーション
 ・チーク類(プレスド・クリーム・リキッド)
 ・ルースパウダー
 ・マスカラ
 ・アイブロウ
 ・アイライナー、アイシャドウ
 ・口紅
 ・リップスティック

他にもコンシーラーといったアイテムもありますが、主だったのはこのようなところかと思います。

で、今回あえてこのようなお題としたのには理由があり、意外とユーザーの皆さんはそれぞれのアイテムの設計上の特長をご存じなく、それぞれに適応すべきクレンジングを考慮する必要があるためです。
例えばオイルクレンジングをお使いの方がおられたとして、本当にお肌に負担の掛かりやすいオイル系が必要なメイクをお使いなのか検討してみられることで、実はもっと負担の軽いクレンジングで対応できる可能性が出てきます。
そうすると、人によってはお肌のコンディションが改善されることもあり得るわけですね。

これは逆もしかりで、実はお肌への負担を考えてライトなクレンジングを使っていたけれど、実はメイクがしっかり落ち切っておらず、肌コンディションを悪くしていた・・・なんてこともあり得るのです。

ということで、それぞれのアイテムについて選ぶべきクレンジングについて解説していきましょう。
またその中でも重要なのは、同じメイクアイテムでもマスカラといった全く設計の異なる製品もあり、それによって落としやすさが異なってきますので、同時に解説していきます。

日焼け止め

日焼け止め

日焼け止めアイテムは、基本的に汗や水に流れてしまっては機能が果たせなくなることから、かなり落としにくいアイテムと考える必要があります。
基本的にはオイル系のクレンジングを使用するのが原則で、オイルクレンジング・バーム・クリームといったオイル剤が多く含まれたクレンジングを選択することをオススメします。
オイル剤が含まれているかどうか判断に困った時は、メーカーさんの問い合わせ番号に電話して聞いてみれば良いですね。
今は必ず製品に0120から始まる電話番号が記載されてあり、問い合わせ先が設けられています。

ただし、ここからが重要なポイント!
昨今はウォータリーUVや子供向けといったライトな日焼け止め製品も多く出てきていますので、選ばれた日焼け止めによってクレンジング剤もフレキシブルに選択しましょう。

【POINT-1】
SPFやPAの数値だけで決めてはダメ!
紫外線吸収剤(ケミ)タイプか紫外線散乱剤(ノンケミ)タイプかが、見極めのカギ。
紫外線吸収剤タイプは、ノンオイル系のジェルやリキッドクレンジングでも落とすことが可能で、製品によっては石けんでも落とすことが可能。

【POINT-2】
全成分の基剤(シリコンベースか水ベースか)をみて見極めるべし。

紫外線吸収剤が使われた日焼け止めかどうかを成分名から判断する方法は、以前のブログ記事を参照下さい。

メルマガアーカイブ日焼け止めがお肌に合わない、本当の理由(FILE No.024)

これで全て見極められますよ。
そして【POINT-2】のところも同じで、全成分の一番最初がシリコーンの類いではなく「水」になっていれば、オイル系ではないライトなクレンジングでも対応が可能と判断して良いでしょう。

一例をあげておきましょう。
どの製品もややこしい名称がたくさん並んでいますが、ベースは前から4番目までで十分に判断できますね。
この通り。

<ビオレUV アクアリッチウォータリー エッセンスタイプ>
 、エタノール、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル・・・

<ビオレUV アクアリッチ アクアプロテクトローション>
 、エタノール、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、グリセリン・・・

ファンデーションなど

アイブロウ、チークの類もこの中に入れましたが、その理由はいずれのアイテムも大きく分けて3タイプの設計があり、どのアイテムも処方設計のベースは同じだからです。
お使いのタイプにあてはめて、検討して頂ければ良いかと思います。

プレスドパウダー

固形状のパクトになっており、添付のパフなどを使って塗布するタイプがこれにあたります。
粉状の原料である色などのパウダー成分に、少しのシリコーンやオイル成分を含ませてプレスして固めてある剤型のメイクアイテムです。
オイルやシリコーンは少量なため、簡単には落ちませんが日焼け止めほど落としにくいわけではありませんので、オイル系のクレンジングでないと落とせないというほどではありません。
メイク落ちに優れたリキッドクレンジングでも、落とせると考えて良いでしょう。

クリームファンデ

クリームとはいえ、保湿クリームと違ってオイル分も多くシリコーンも多めに配合されていますので、プレスドに比べて落としにくいと考えて良いでしょう。
オイル系クレンジングがモアベターと言えます。
とはいっても、中には耐水性も比較的ゆるやかで、ウォータリーなクリームファンデもあったりしますので、これも「水」が一番前に来ているかどうかと、二番目にシリコーン原料が来ているかどうかである程度判断できると思います。
BBクリームなどもこのカテゴリーと同様の製剤が使われているケースが多いですが、同様に水とシリコーンの量バランス(記載順位)をみれば同様に判断できるでしょう。

リキッドファンデ
以前はシリコーンが主剤となった製品が多く、もっとも落としにくい製剤がこれだったりしました。
とはいえ、今でも水と同量に近い配合量でシリコーン原料が使われていますので、使用感はサラっとしていてもかなり落としにくいアイテムであることに変わりはありません。
結論的には、オイル系のクレンジングを使っておくのがベターと言えます。

【POINT】
「水」「ジメチコン(またはシクロメチコンやシクロペンタシロキサン・トリメチルシロキシケイ酸)」が3番目までを占めていれば、オイル系クレンジンング推奨

ルースパウダー

ルースパウダーは成分の90%以上がパウダー成分でできていますので、これはオイル系のクレンジングに拘る必要性はありません
もちろん、ツキを良くするためにルースパウダーにもシリコーンが少し含まれていますが、オイル系のクレンジングを使うほどのことではないでしょう。

マスカラ

今回のクレンジングを選ぶコツの中でも、しっかりと見極めの必要なメイクアイテムの代表的なのがコレ。
というのも、製剤が180度異なる2タイプの設計のマスカラが市場に存在しているためです。
一部のユーザーさんは「洗顔で落とせるマスカラ」をキーワードとしてきちんと見極めておられる方もおられますが、全成分をみて製剤を見分けられるユーザーさんはまだまだ少ないと思います。
この辺りを中心に解説していきましょう。

【POINT】
水に溶ける製剤かどうかが、重要な見極めポイント!

製剤の違いは明確で、ようは水に溶ける製剤か、溶けない製剤になっているかが見極めポイントです。 当然ですが、これによって選択すべきクレンジングが変わってきます。
ただこれを見極わめるには、全成分をみて判断するスキームが必要となります。

実はさほど難しくはありませんので、覚えておくとかなりポイントが高いと思います。
早速、ここを見極める大きな全成分の違いを解説していきましょう。

水性マスカラ

大きくは簡単。 一番目の成分が「水」になっているか否かだけで、ほぼ断定できます。 つまり水ベースの処方設計かどうかを見極めることで、オイルクレンジングが必要かどうかの判断が可能になるというわけです。
もっといえば、逆に水ベース処方のマスカラは水にしか溶けないポリマーが使われていますので、むしろオイルクレンジングでは落ちないといった事態を招くことになります。

これは私達の仕事でもよく経験することで、非常にメイク落ちが良いとされているクレンジングオイルを企画してご提案しているのに、メーカーさんの企画担当の方が「マスカラが全く落ちない!」と指摘されることがよくあります。
きちんと説明して差し上げるとなるほどとご理解頂けるのですが、マスカラの性質をよくご存じない方は疑問に感じるようです。
今は水に溶けるポリマーでも乾くと耐水性の高い素材が出てきていますので、こういった新技術のマスカラが市場を占めてきています。
これは塗料の業界が分かりやすく、今ではほとんどがシンナーといった溶剤を使わない水性塗料が市場を独占していることも、この新技術による業界改革と言えます。

油性マスカラ

さてお話は戻り、さらにほぼ100%の正確さを求めるために、水に溶けないマスカラを見極める全成分のコツを解説しておきます。
水に溶けない、つまりはウォーターレスのマスカラは、一番目がこういった成分になっているはずです。

 ・イソドデカン
 ・水添イソポリブテン
 ・ジメチコン
 ・エタノール

水性マスカラの技術がこれだけ高くなっていると、オイルクレンジングでないと落とせないマスカラはもう不要のように思われるかもしれませんが、このタイプのマスカラがいまだに市場に存在しているのには、大きな理由があります。
それは「ロングラッシュ」。 いわゆる”ボリューム系“と言われるまつげを”盛る“タイプのマスカラは水性では難しく、この非水タイプに分がありますね。
あとはキレイなカラー系も、こちらでしか再現できません。
加えてやはりいくら水性ポリマーが水に強くなったといっても、耐水性に拘るとどうしても油性に軍配があがります。
よく涙目になる方はこちら?(笑)

以上がマスカラの種類を見極めるコツですが、もうお分かりのように水性系のマスカラはオイルクレンジングでなくても落とせますし、もっといえば洗顔でも落とせる製品が多くありますので、油性マスカラをお使いでない場合はクレンジングで落とす機能に拘る必要性がないということになりますね。
つまりクレンジングで落ちていなくても、その後の洗顔で落とすことが可能ということです。

ただし昨今は、逆のケースが存在している点に注意が必要です。
オイル系クレンジングなのにW洗顔不要を謳っている製品です。
例えば潤いを謳うクレンジングバームなどに存在しますが、水性マスカラだとこれでは落ちにくいため、本来は洗顔できちんと落とす必要があります。

今回のお題は長くなってまいりましたので、複数回に分けて解説していきます。
次回はマスカラよりもさらに複雑怪奇で、もっとも見極めが必要なアイブロウ、アイライナー、アイシャドウに入っていきます。

ではまた次週。

by.美里 康人

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