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界面活性剤の進化~その2(FILE No.056)

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◆◆FILE No.056 / 2007年6月配信◆◆

界面活性剤の進化~その2

今回は、「界面活性剤の進化~その1」のお話の続きで
最近の界面活性剤について、二回にわたって書いています。

前回は洗浄剤に使われる界面活性剤をとりあげましたが
今回はスキンケアコスメに使われる界面活性剤について
その傾向をかいつまんでお話します。

洗浄剤のところでも書いたように
最近の新しい界面活性剤の傾向は
いずれも人間にとって優しく
より天然素材を取り入れたものへと
ターゲットが絞られているような印象です。

それは幅広くスキンケアコスメに使われる
非イオン界面活性剤についても同様です。
例えば、乳液やクリームといったアイテムに使われているのは
みなさんもよくご存知の事でしょう。

ではこれらは
いったいどういった形で進化しているか
早速覗いて見ることにしましょうか。


今もっともホットな界面活性剤といえば
やはりグリセリンを素材のベースにしたもの。

もちろんこうした方法は昔からありましたが
今は昔のように
グリセリンを1個だけ界面活性剤の中に取り入れるだけでなく
構造中に複数の「グリセリン」を導入する事で
界面活性剤の能力にバリエーションが増えてきました。
今は最大10個のグリセリンをくっつける事で
簡単に言えば10倍のバリエーションが揃ったというわけ。

さらに親油基側の脂肪酸を2つ3つと増やすことで
それが3倍のバリエーションになります。
そしてそれは精製工程を増やす事で
さらに使いやすさが向上し
今ではあらゆるアイテムに使いこなす事ができるようになりました。

身のまわりのエマルジョン(乳化)系スキンケアコスメを手にとって
成分のところを見てみて下さい。
「○○○ポリグリセリル-○(数字)」
といった表記をよくみかけると思います。
そう、「ポリ」というのはポリマーのポリで
複数という意味ですね。
つまり
グリセリンが○の中の数字の数だけ
くっつけてあるという事です。


次に最近よくみかけるようになったのは
ナノカプセル化という言葉とともに発展してきた
「レシチン」という素材です。

ちょっとモノ知りな方なら
「リポソーム」という言葉をご存知かもしれません。
これに必ずといっていいほど使われる
界面活性剤ともいうべき素材です。

コーセーをはじめ
カネボウ、そして中堅化粧品メーカーにおいても
よくみかけるようになりました。

ただしこのレシチン
完全といっていいほどの天然素材にあたりますが
残念ながら使いこなすには難しすぎる素材。
まだまだ化粧品会社の技術レベル的に
使いこなせるメーカーは少ないのが現状です。

そういえばこのレシチン
手作りコスメの材料ショップで
販売されているところもありますが
決して誤解されないで下さいね。

これって一般のみなさんが買われても
全く使い道はありません。
上でも書いたように、これを使いこなすには
高度な製剤技術と特殊な機械が必要とされますので
念のため。

一応ここで書いておきますと
レシチンには卵由来の「卵黄レシチン」
大豆由来の「大豆レシチン」とがあります。


続いては、アミノ酸系の界面活性剤でも
新しいカタチの素材の登場です。

今までのアミノ酸系の界面活性剤といえば
1個のアミノ酸に脂肪酸と
そして石鹸と同様ナトリウムをくっつけたものでした。

それに対して新しいアミノ酸由来の「サーファクチン」
アミノ酸7個が円型に並んだものに
ナトリウムをくっつけたもので
大変界面活性剤としては能力が高く
そのために
今までのアミノ酸系界面活性剤に比べて
何10分の1という使用量で
乳化物が作れるというシロモノです。

まだまだ非常に高価だという難点がありますが
今後の商業展開に注目したい素材といえます。


さて最後に登場するのは
「イヌリン」と呼ばれる界面活性剤です。

イヌリンというのは
芋類の植物繊維に含まれる
フルクトースという天然の多糖類が
さらに数10個も繋がったもので
この界面活性剤は
それに脂肪酸をくっつけた新しい素材です。

まだまだ使い方が難しく
使用用途はこれからですが
今後の用途開発に期待したいところです。

* * *

以上で
スキンケアに使われる
最近の新しい界面活性剤
そしてその化粧品への製剤技術について
簡単にお伝えしてきました。

しかしながらここで一つ心配なことがあります。
天然素材を活かして界面活性剤を作る事は
確かに人間にとっては優しいのかもしれません。
しかしながら
地球環境という観点からみると
それは果たして正しい事なのでしょうか。

例えば現在問題となっているのが
洗浄剤として石鹸や界面活性剤の原料としてよく使われる
もっともポピュラーな植物の「ヤシ」ですね。
このヤシの木の伐採が問題となっています。

こちらに
大阪の高等学校の授業でこの問題を取り上げたレポートがあります。

https://www.jica.go.jp/kansai/enterprise/kaihatsu/kaigaikenshu/report_osaka/pdf/2006/hokoku18_komoguchi.pdf

こうしたレポートは
全く社会の作為的な要素の影響を受けない情報源として
大変有意なものです。
様々な情報が無作為に散乱する昨今ですが
このような情報こそ真なものとして
活用いただきたいと思います。

*

最後になりますが
界面活性剤を含めた化粧品用の素材が
私自身今後どのような方向に向かうべきなのか
まだまだ結論が見出せないところではあります。

まとめが中途半端になってしまいましたが
全ての成分に対して真剣に考えをめぐらせていく姿勢だけは
大切にしていこうと思います。

それはむやみに
「○○○はよくない」
「○○○は安全だ」
と、簡単に口にしてはならない事でもありますね。

上記で紹介しているURLのレポートは、教師海外研修をいかに授業に取り入れたかという報告書ですが、パームヤシを取り巻く状況がよく分かる内容でした。こんな授業を受けたなら、今話題のSDGsへの取り組みも加速度的に進んでゆくのでしょうね。

ゆっきー

 

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