美里康人
今回はそんな話題
今さらなお話ですが、化粧品の成分として使えるものの基準として、「全成分表示名称」があるかないかが基準になります。
でもその中に宝石や貴金属があることは、ユーザーの皆さんは意外とご存知ないかも?
今回は、そんなお話。
この記事の目次
ストーン宝石と貴金属
上のプロローグでは、ユーザーの皆さんの垂涎の的となる宝飾品素材として宝石と貴金属をひとくくりにしてしまいましたが、原材料という意味ではこれは全く別の原材料になりますので、最初に区分けしておかないといけませんね。
貴金属は鉱物の中に含まれている金属成分のことですので、金や銀・プラチナなどがこれに該当します。
で、これらは既に皆さんも御存知のように、ナノコロイドにまでに加工した状態でお肌への効果に期待した抗酸化成分として、有名なところです。
「プラチナナノコロイド」などと呼ばれている成分も、これに該当します。
また、銀は「Ag」(化学名)という言葉をよく目にするように、除菌成分としても有名ですね。
S社さんのデオドラント製品のTVCMは、よく目にするかと思います。
この貴金属成分の解説については、ずいぶんと昔のメルマガ記事をブログに収載しています。
■おぉっ!あこがれの貴金属コスメ???~その1(FILE No.038)
https://cosmetic-web.jp/column/mail-magazine-38/
■おぉっ!あこがれの貴金属コスメ???~その2(FILE No.039)
https://cosmetic-web.jp/column/mail-magazine-39/
で、一方の宝石。
となると、これはダイヤモンドが有名ですし、他には一気に価値は低くなりますがトルマリンなどもあります。
ちょっと変わったところではこんな成分も。
温かくなる温泉効果?・・・なんて考えてしまいそうですが。
とまぁ、いずれにしてもこうしてこの2つに分けて想像して頂いて、今回のお話はこの宝石の話題を取り上げます。
ただ、技術者の方々は異論があるかもしれませんね。
厳密に化学成分で考えていくとこれらはいずれも金属物質ということになりますので、その議論はここではさて置いて頂きましょう。
ということで、今回の本編はストーン宝石についてのお話。
化粧品配合の目的は?
さて、宝石はもともと自然界の土中に含まれている鉱石であることは、ユーザーの皆さんもご存知かと思います。
ただ、このようなストーンを化粧品に配合する意味が分からないですよね。(自分たちも分かりませんが・苦笑)
また、どのように配合されているのかも・・・。
厳密にいえば、シリカやアルミナといった鉱石も化粧品の成分として認められていますが、これらは非常に細かい微粉末にされてパックなどに使われていますので、泥成分という考え方になります。
もしくは、パウダー材料としてメイクアイテムに使われています。
なので、スキンケア成分というのとは少し異なる感じで、今回の話題からは少し外れます。
そんな中でダイヤモンドについては、実際にこのような使用目的で配合されたことがあるという話題を過去にとりあげました。
■化粧品業界の”裏”歴史~【化石コスメ】その5
https://cosmetic-web.jp/column/diamond_cosme/
その昔、かのセレブ御用達のコスメとして世界的に有名になったブランドさんですが、いわばスクラブ剤として洗顔クリームに配合されていました。
最近のお若いユーザーさんならば、もっとも高級なクリームがニベアと全成分がほとんど同じで、中身は一緒だ!と話題になったブランドさんといえば、ピンと来るかもしれませんね。(ちなみにアレはガセです)
世界のセレブは、スクラブ剤もセレブリティでないとダメなようです(笑)
まぁ、いくら微粉末にされてあるとはいえ、こんな硬い宝石はお顔を傷つけることは容易に想像できますし、なにより目に入ってしまったらとんでもないことになりますので、すぐに廃盤になってしまいましたが。
とはいえ、これもまだ洗い流してしまいますので、もったいないといえばもったいないですが目的として無意味とは言えないレベル。
今回の話題は、もっと想像もつかないコスメが本題です。
トルマリン効果
ここまで業界の背景をお話して引っ張ってきましたが、実際の驚きのストーンの使われ方はこんなものではありませんでした。
商品は、またもやこちらのセレブブランドのドゥ・ラ・メールさん。
その使われていたストーンは「トルマリン」。
まだ今でもクレンジングジェルにも使われているようですが、どのように加工して配合されているのかは私には分かりません。
少なくても微粉末以上に小さな粒子に加工されていると思いますが。
しかし、今回の話題の製品の場合は、コロリとした塊の状態です。
しかもその昔に販売されていたスキンケアアイテムへの使われ方は、業界でも驚きでした。
こういう設計になっていたと記憶してます。
化粧水アイテムで、容器がこのような設計になっていたはずです。
容器の中の上部に隔離された空間が作られていて、その中に檻のようにトリマリンの塊が鎮座していました。
つまり成分として化粧水の中に配合されているのではなく、化粧水にトルマリン石が浸っているように容器が作られてあるという次第。
この頃はトルマリン石がある種のブームになっていて、マイナスイオンを発生し続けて人間に良い効果をもたらしてくれるという“エセ科学トレンド”が、背景にありました。
宝飾品に留まらず、枕の中に入れられていたりと、その効果を謳った様々な雑貨商品が市場にあふれていた最中に発売されたトルマリンコスメの、最たる製品とでも言えば良いでしょうか。
国内でも、クリームなどに微粒子に加工された成分をほんの微量配合した製品なども存在しましたね。
※今でもドゥラメールには、配合されたクレンジングがあるようです
というわけで、こうして化粧水の中に入れられたトルマリンが永遠にマイナスイオンなのか磁気なのかを発生し続けて、化粧水に美容効果をもたらせてくれるという謳い文句だったように思います。
効果のほどは分かりませんし評価コメントは致しませんが、技術屋らしく当時は“エネルギー不変の法則”が頭をよぎった私でありました。
中で石が動いて欠けて破片が化粧水に入ったり、何か成分が溶け出したりして問題にならないのか等気掛かりではありましたが、その後しばらくすると市場から消えていたという悲しき製品のお話でした。
評判になってこの製品が売れたかどうかまでは存じませんが、今なら考えられない化粧品と言えるでしょうか。
次回はまたクリームのお話をしたいと思いますが、乳化製品のミクロの世界を実際に覗いて頂きたいと思います。
ではまた次週。
by.美里 康人