化粧品開発のご相談はビークラボへ >>

化粧品業界の”裏”歴史~【化石コスメ】その5

化石コスメ101

週一で仲間ブログの記事も更新されます
チガウがワカル!? 新米コスメ技術者のドタバタ奮闘記

週3で異なる目線の美容記事をお届け


美里康人「化石コスメ」企画の第5弾

いわゆる貴金属が配合成分として

使われたコスメのお話

 

貴金属コスメ

貴金属といえば、女性の方は金やプラチナ・銀といったあこがれの宝飾品が、すぐにイメージされると思います。
そこでこんな名前をつけてみましたが、ちょっと意味が分からない方も多いかもしれませんね。
でも思い起こしてみれば、そういった貴金属を配合したコスメが、実は何種類もあったことに気付くことでしょう。

それらの中には女性の欲求をくすぐる、いわば単に高級感をイメージさせるだけのコスメもありました。
一方で、化粧品の成分としてきちんと機能を有する貴金属もありましたので、その辺りも今回は解説をしていきたいと思います。

ただ、事前に言い訳というか、あらかじめ記しておきますが、高級なアクセサリーというカテゴリーをくくりにした話題ですので、貴「金属」ではなく成分としては鉱石にあたる宝石のお話も含んでいますが、そこは了承願いたいと思います。

貴金属成分の種類

もうここまで読まれれば、すぐにイメージさせる化石コスメが思い浮かぶことと思います。
そう、金箔が散りばめられたジェルや美容液ですね。

まだ販売されているメーカーさんがありますので、「化石」と書いてしまうと失礼かもしれませんが。
とはいえすでにブームは去っていますし、市場にお目見えしたのはもう30年も前のことですので、立派な化石コスメと言ってよいかと思います。

そしてそれ以降は、さらにプラチナや銀も化粧品に使われました。
もっといえば、実はオリンピックのメダルも驚きの「銅」もあって、それこそ金銀銅と揃っていたんですね。

とはいえ、銅の場合は同じ金属でもコバルトや鉄・亜鉛・チタンなどと並んでメイク製品の着色剤として使われていますので、これは今回のお話からは外しておきます。

では、こういった金属として超高級な貴金属成分は、どういった目的で配合されていたのでしょうか?

これまで同様、今回もそんな部分に踏み込んだお話にしてみました。
続いてそれぞれの貴金属が使われた目的を解説していきましょう。

これは先ほども触れたように、非常に分かりやすいですね。
化粧品メーカーさんには怒られそうですが、まさに金箔の状態のままゲルや美容液に配合されて、見た目にキラキラとした演出をするために使われていました。
一応、化学元素名では「Au」になります。

金は、皆さんがお持ちの宝飾品を見て頂ければお分かりの通り、色がほとんど変色しないことが大きな特長で、実は化粧品に配合される成分としてはここが非常に重要なポイントなんですね。
つまり、酸素や水の存在下で起きる酸化が非常におきにくい、もっとも安定した金属であることが重要で、ゲルや美容液といった水がたくさん含まれた化粧品に配合しても酸化されずに色が変色しないことで採用されたというわけです。

もしも今も手元にお持ちの方がおられましたら、見てみて下さい。
今でもまだキラキラと光を失っていないと思います。
普通の金属であれば光が失せてしまい、曇って変色してしまいます。
鉄で言えば、「錆びる」という言葉でお分かりでしょう。

これ、実は他の金属ではあり得ない特異点で、金でしかあり得なかったことだったんです。
まぁ、製剤技術というかどうかは別として、それなりに意味はあったのですね。

また、一応金が持つ抗酸化能が・・・というお肌への効能もなかったわけではありませんので、かなり市場を賑わせた成分でありました。

ちなみに最近の新しいアイテムでは、全部が金箔で作られたシートマスクもありますね。
パックの後は捨てるわけですから、これは贅沢極まりない、まさにセレブコスメの極みです。
もちろん、金箔は純粋なものですし、もったいないと感じた方は水で洗って食べちゃっても悪くないのですが、そこまでセレブな方がそれをするのはどうかと・・・。

プラチナ

こちらは、金と違ってそのままのカタチで配合されていた成分ではありません。
金と同様に非常に抗酸化能(還元力)を有していますので、ナノサイズにまで粉砕して安定化させた素材が開発され、お肌の抗酸化、つまりはアンチエイジング成分として市場に広まった機能性の成分です。
化学元素名は「Pt」です。

素材の名称「プラチナナノコロイド」という言葉は、ご存じな方も多いかと思います。
そういう意味では、セレブリティ感を演出するためのコスメとは異種なものです。

実は、プラチナというと金と同様にキラキラとした成分をイメージされた方も多いかもしれませんが、原料としては紫というかドス黒い色をしていたのは、あまり知られていません。
抗酸化力が強いということは、お肌を含め内容の他の成分も還元しにいきますので、自分自身は酸化されて色が変わってしまうことが難点で、どうしても製剤中でも色が変色してしまうことが難点です。

先に書いてしまいますと、こちらも金と違って高級感の演出に使われているのではなく、銀イオンが持つ機能を化粧品に応用した成分です。

化学元素名の「Ag」と書くと、ピンと来られたユーザーさんも多いことでしょう。
そう、デオドラント製品によくこの元素名が大きく書かれているのを見ますね。

銀イオンが持つ高い抗菌力を活用し、資生堂さんがゼオライトに保持させたパウダーで特許を取得、化粧品に配合することで雑菌が発生するのを抑制するデオドラント製品に広く応用されています。
資生堂さんでは、このAgを有効成分として有効性のエビデンスをまとめ、医薬部外品として承認を受けています。
今ではあちこちのブランドでも採用が進み、銀ナノコロイドも開発されてデオドラント製品のかなりの市場を占めるまでに広まっていますね。

化石102

で、化石な番外

ここまで貴金属の代表格と言える金属を活用したコスメを取り上げてきましたが、どこかから声が聞こえてくるような気がします・・・。

--これで大げさな化石コスメ企画???

金はまだしも、その他の貴金属は化石コスメでもないし、今でも広く使用されていますので、化石とは言えません。

ということで、実は文頭で書いた、成分的には貴金属とは言えないが宝飾品の代表と言っても過言ではない素材が、実はもうひとつ化粧品に使われていたのです。

鉱石の部類に入ってしまいますが、それは驚きの「ダイヤモンド」
しかもなんと、小さく砕いただけでそのカタチのままで化粧品に配合されていたのです。

そのブランドは、かの有名な「ドゥ・ラ・メール」
一時は超がつく高級コスメの名を欲しいままにしてきた、海外高級ブランドのコスメです。

どういうアイテムに配合されていたのか不思議に思われるかもしれませんが、実はそれはクレンジングクリームに配合されていたんですね。
つまり、クレンジングのスクラブ剤としてダイヤモンドが配合されていたというわけです。

こう書くと金箔コスメも真っ青な、ため息が出そうなセレブなお話ですが・・・。

とはいっても、ダイヤモンドといえどこれはそもそもが「合成」ですので、言ってしまえばつまり「ジルコニア」
価値観をどう考えるかは議論の的ではありましたが、微細粉末にされていましたので配合量もごくわずかですし。

そしてなにより、微粉末とはいえそんな固い鉱石が配合されていますので、使用時にお肌を傷つけることになり兼ねないだけでなく、もしも目の中に入ってしまったら眼球を傷つけてしまうということで、すぐに市場からは消えてしまったという顛末でございました。
ちゃんちゃん。

では、今回はこの辺で。
また次週。

by.美里 康人

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です