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化粧品業界の”裏”歴史~【化石コスメ】その7

リンスインシャンプー

美里康人

化石コスメ企画の第7弾
今回はリンスインシャンプー

久しぶりの化石コスメ企画ですが、ネタはそろそろ尽きてきて企画も終盤といったところでしょうか。

で、早速の本題ですが、もう今や掲題の「リンスインシャンプー」なんて言葉すらも、死語となりました。

今回はこの言葉が世に出たキッカケとなった成分の逸話を話題にしますが、ただ単に言葉が一時の流行になっただけでなく、いつものようにその後の化粧品業界の大きな改革となった裏話へと展開していきます。

シャンプー

真逆を同時に、の発想

さて、その当時から髪を洗うといプロセスは、シャンプーで髪を洗った後に必ずリンスかコンディショナーを使ってくし通りをよくするという流れが鉄則でしたから、シャンプーとリンスが一緒になるなんていう発想は、キテレツとも思える発想でした。

確かに、処方技術的にもそりゃそう。
油分といった汚れを落とす洗浄アイテムに対して、かたや髪に油分などを付与して残すという、真逆のメカニズムを担わせないといけませんから、これはもう普通の考え方ではあり得ない発想ということになります。

誰が考えても、そんな意味不明なことはできるはずもないと思われていました。

発想の原点

あらためて考えてみると、どう考えても「脂汚れを落とす」「油分を残す」をひとつのアイテムで、なおかつワンアクションでやってしまうのは、理論的に不可能に思うのが当たり前。

でも、確かに油汚れを落としてしまうのに油分を残すのはムリとしても、髪の指通りやくし通りといった髪のからみつきを解決するのは、必ずしも油分だけではないという発想が、この相反したメカニズムに可能性が見出されたキッカケだったんですね。

とはいえ、そう簡単にこの理想を満たす方法がみつかるわけもなく、オイルではない素材で髪に滑りを与える素材として以下のような素材がピックアップされました。

  • シリコーン
  • ポリマー物質

一つ目は、シリコーンオイル
シリコーンは、シリコーンオイルという言葉があるように、オイル成分と同様に水に溶けない成分でありながらも、オイルのように界面活性剤では簡単に乳化できない難解な物質。
ということは、洗浄剤でも洗い流されにくい素材ということになります
つまり、可能性として油汚れだけを洗浄剤で落とし、シリコーンは髪に残すということが可能という発想です。

二点目はポリマー素材
被膜を作ってくれる高分子、いわばポリマーは、髪にくっつくことさえできて、そして洗浄成分で洗い流されることがない素材さえみつけることができれば、可能性が見えてくるという発想。

こうして、これまでと全く異なる機能を持たせてリンスやコンディションーを使わずに済む製品が開発され、「リンスインシャンプー」という言葉が市場に登場しました。

カチオン化セルロースという素材

さて、今回の話題はただこれだけになってしまうのですが、せっかくですのでこの二つ目の素材のポリマー素材について、もう少し詳細に取り上げてみたいと思います。

なぜならこれまでのこの企画のように、この素材はその後の化粧品業界に活用が広がっていったキッカケとなったからです。

で、そのポリマー成分が何かといえば、「カチオン化セルロース」という素材。
ライオンさんが開発した素材ですが、今の全成分名称では「ポリクオタニウム-10」になります。
素材の名称をみてお分かりの通り、セルロースという高分子にプラスイオン(カチオン)をくっつけた成分です。

セルロースと言われてもピンとこない方のためにもう少し詳細に解説します。

セルロースとは
糖がたくさん連なってできた天然の高分子(ポリマー)。
早い話が、多くの植物にたくさん存在している植物繊維です。
身近なところでは、ごぼうや豆類に多く存在している炭水化物のことですね。

この自然素材にプラスイオンをくっつけたポリマー素材と考えれば、理解しやすいでしょう。
繊維でありながら、カチオン化することで水に溶けるように改造されたポリマーということになります。

水に溶けるように設計されていますので、本来ならばシャンプーに配合しても水で洗い流されてしまうのですが、プラスイオンに電荷されていることで髪のマイナスイオンとくっつき、髪の表面に被膜として残ってくれて滑りを保ってくれるという非常にユニークな素材で、市場に出ると一気にヘアケア製品への配合が広まりました。

今ではもう当たり前のように市販のシャンプーには配合されていますので、今やリンスインシャンプーなんていう言葉も死語となりましたが、昨今のシャンプー技術の先駆けとなったのがこの言葉という話題でした。

リンスインシャンプーという言葉はおおげさとしても、昨今の市場のシャンプーはどれを使っても昔のようにキシキシにならず、どんなお安い商品でもそこそこの指通りが確保されているのは、この成分のおかげといっても過言ではありません。
髪の短い男性であればシャンプーだけで全く問題なく、それだけでヘアケアが終えられてしまう画期的な改革となったというわけです。

実はさらにユニークなメカニズムが判明

で、話題をここまでで終えてしまうのならばまだこのブログとして中途半端。
その後に、この素材がただ単に髪にくっつくカチオン性のポリマーというだけではなかったという、ユニークなメカニズムが解明されたお話も知恵袋として知っておいて頂ければ、化粧品の面白さも倍増すると思います。

この素材の機能とメカニズムに、さらに何か裏があると目をつけたのは資生堂さん。

色々と実験と検証を重ねた結果、水でシャンプーの洗浄剤が薄められる段階で洗浄成分とこのカチオン化ポリマーと反応し、いわば第三の成分が生成されることが見出されてメカニズムが解明されました。

その論文はこちら

カチオン性高分子と界面活性剤のコアセルベートに関する研究

リンク先:J-STAGE

化学的にいえば、アニオン性の洗浄剤が水によって希釈されることで特異的にカチオン性のポリマーと反応を起こし、水に溶けない物質が生成されて髪にコート効果をもたらしてくれるというメカニズムです。

資生堂さんはこの現象をコアソルベーションと呼び、この第三の物質を「コアソルベート」と名付けて理論体系化してくれています。

今ではこの技術はさらに進化し、プラスイオンとマイナスイオンの両方を持つソフトな洗浄剤との併用といった技術に応用が進み、サロン向けシャンプーやダメージヘア用といった高付加価値なシャンプーの開発へと応用されています。

シャンプーを手にしましたら裏の全成分をちょっと見てみて、この成分をみつけたらなるほどと感じて頂ければ幸いです。

ちょっと面白いと感じましたら、また次週の記事もお楽しみに。

by.美里 康人

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