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化粧品業界の”裏”歴史~【化石コスメ】その6

化石コスメ06

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美里康人
今回は「化石コスメ」企画の第6弾

“ウォータージェル”って?
水があふれ出てくるジェル

 

手品のようなウォータージェル

化石コスメ06_02

この企画は「化石コスメ」ですので、今回もお若いユーザーの皆さんはアイテムの表現にピンとこない方も多いかもしれません。
まずはこれはどういう製品か、説明の必要がありそうです。

それは、使った時の特異性を書けば「知ってる!!」という声が聞かれるでしょうか。
ほとんどの製品が大きなチューブ容器に入っていて、見た目は少し白く濁ったジェルになっています。

コンセプトはお顔用のジェルだったりボディジェルだったり、中にはハンドジェルなんていうのもありましたね。
ちょっと変わったところでは、「ジェル下地」というコンセプトでメイク前のサラっとしたゲルタイプの下地という製品もありました。

で、早速その特長ですが、手に取って塗り広げた瞬間にその特長は分かるアイテムでした。
「ウォータージェル」という表現の通り、塗り広げた瞬間に水がプチュプチュっと浮いて出てくるという、面白い使い心地のゲル製品です。
こう書けば、記憶されていた方がおられるかもしれませんね。
こんな感じ。
化石コスメ06_03

つまり、ゲルを手で崩すと目で見て分かるほどに水があふれ出てきて、なおかつ使用感はスベスベサラサラなジェルアイテムでした。
ユーザーさんにとってはまるで手品のように水があふれ出てくる摩訶不思議な面白さと、若い人たちにもウケやすいサラサラ感が、一気に市場を席巻しましたね。

スキンケアメリットは?

さて、この特異的な処方設計のジェルは、お肌のケアにとってどういったメリットがあったのでしょうか?

おそらくユーザーさんが受ける印象としては、目に見えて水が出てきてそれをお肌になじませていくわけですから、水分を補うスキンケアアイテムとして実にダイレクトで分かりやすいイメージを持たれたことでしょう。
ただ、設計した私達側の人間がここを解説するとすれば、「特に水分を補ってくれるゲルというわけではないのだけれど・・・」ということになってしまいます。
あえてこれを使うメリットをあげるとすれば、以下の機能ということになるでしょうか。

・外気や水からお肌を守るバリア効果
・ファンデのノリをよくするための下地効果

  --ええ???

水が出てくる水性ゲルなのに・・・まさに意味が分からないかと思います。

そりゃそうですね。
ほとんどの商品のPR文言は、最初に書いたように「ウォータージェル」だったり「あふれ出る保湿」といった、とにかく目で見た水玉のイメージを膨らませる水分補給アイテムのウリでしたから。
にも関わらず「お肌を守るバリア機能」とか「メイクのノリがいい下地」なんて言われると、なんともとんちんかんな解説になっているかと思います。

この製剤メカニズムの解説をきちんと進めていくことで、この謎と手品の種が明かされていきます。

メカニズム解説

あのジェルがなぜ手で塗り広げた時に水が飛び出てくるかは、実は簡単な手品です。
それは、水には決して溶けない「シリコーンを水性ゲルに混ぜ込んであるから」ということですね。

驚かれた方も多いことでしょう。
普通のスキンケアゲルだと思っていたのに、シリコーンが出てくるなんて・・・というところでしょうか。

もう20年にもなりますが、この当時シリコーンメーカーからは、今はファンデーションやUVミルクなんかにもよく使われる「シリコンクロスポリマー」が市場に表れていて、その中に界面活性剤としての機能を持つシリコンクロスポリマー系の界面活性剤が市場に出てきました。

つまり、シリコンクロスポリマーは以前に化石コスメでも取り上げたように、シワ隠し機能として使われるほど耐水性が高く水には全く溶けない素材でしたが、これに界面活性剤としての機能を付加させることで水にも少しなじむ性質を付与した素材が表れたということなんですね。

この素材、今でもクリームファンデーションやBBクリームといったメイク製品によく使われますが、この当時は水性のカルボマーゲルにムリヤリ混ぜ込むことで面白いゲルができると話題になり、一気に市場でブレイクしたというわけです。
「混ぜ込む」というよりも「物理的に練り込む」という表現の方が正しいかもしれませんね。

水に全く溶けない素材をムリヤリにゲルに混ぜであるため、ゲルを手で崩すと一気にシリコンからはじき出されて水が浮いてくるというメカニズムです。

結果的にお肌の上に残るのはシリコーンだけですので、サラサラスベスベして当たり前。
そして水とはなじまないので、出てきた水はシリコンからはじかれてその上でどんどん蒸発していくだけ・・・ということになります。
つまり、保湿効果は全く期待できないというわけでした。

ユーザーさんの肌感覚はバカになりません。
結局はちっとも肌内部が潤うことがないことを実感し、数年で衰退してしまったという悲しい技術でありました。

コスメとしての価値

あらためてこうして解説すると、なんともはかなくみじめな製剤技術でありましたが、ユーザーさんにとっては、いわばバカバカしい流行だったということになるでしょうか。

いえいえ、実はそんなことはありません。

自分はこの製剤開発ができあがった後に、これをハンドジェルとしてメーカーさんに提案したことがありました。
それは上で解説したメカニズムを再度思い起こして頂ければ納得がいくかもしれませんね。
これをハンドジェルとして活用すれば、以下のような機能が期待できます。

・バリア効果
シリコーンが手の表面に薄い被膜として残るため、水をはじいて炊事といった作業から手を保護してくれる手荒れ防止効果

・手作業に影響しない使用感
ハンドクリームなどは手指がベタついてパソコンなどの作業に支障をきたしますが、サラサラの使用感によって手作業を阻害しません

・皮膚内の潤いを保ってくれる保湿効果
シリコーンは、自ら水分を集めてくる保湿性能はありませんが、皮膚内に存在する水分が蒸発するのを防いでくれる保湿効果に期待できます

こうして考えていくと、これが流行した時のメーカーさんの販売方向がすれ違っていたと感じます。
見た目の面白さを優先してしまったことで、この技術は地下に埋められてしまったと感じてなりません。
いわば開発側と企画側の意見の相違から生まれた、はかない運命とでも言いましょうか。
なので、きっと保湿ゲルという目的のアイテムではなく、この薄い被膜を皮膚状に形成してくれるシリコーンの特性を活かしたアイテムの使い道を考えてあげればよいように思いますね。

他にも、潤いを維持でき、ファンデの顔料からお肌を守るサラサラ下地・・・といった方向性の商品として、ニーズがあるようにも思いますが・・・。

まぁ、今回の記事はこれくらいにしておきましょうか。
また次回の化石コスメ企画をお楽しみに。

by.美里 康人

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