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化粧品業界の”裏”歴史~【化石コスメ】その8

化石コスメ08

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美里康人

「ブロー」という言葉はご存じでしょうか
今ではほとんど聞かれなくなりました

ヘアケアの世界で頻繁に使われてきた言葉として「ブロー」という言葉がありますが、最近はほとんど聞かれなくなりましたね。
というのも、このブローというヘアセッティングの技術に使われてきたあるアイテムがその昔に市場を席巻し、そのアイテムにメイン成分として使われてきた成分がありますので、今回はそんな話題です。

ブローとは何?

ブロー102

今回の本題に入る前に、このヘアセッティングの技術について簡単な説明から入っていきたいと思います。

昔話になりますが、私達の親の世代の美容院でのカットやセットの最後は、カーラーを巻いてお釜のようなドライヤーに入り、クルクル髪に巻いて髪型を整えるというのが主流でした。
そのため、美容院には必ずお釜が数台並んでいるのが当たり前の光景でした。
ですので、ブラシで解きながら髪をセッティングするという概念そのものが、なかったのです。

そんな時代ですから、カーラーで巻いた髪をセットするのに、それを固めるかのようにスプレーやクリーム・ジェルといったセット剤が商品として存在しているのが、当たり前の時代でした。

その後、時代とともにこういったおばさんチックな髪型は流行らなくなり、若者を中心に風になびくようなフワフワなスタイルが流行り始め、それに合わせたカットのヴィダル・サスーン氏も先駆者として有名になり、「サッスーンカット」なる言葉まで流行しました。

芸能人では松田聖子さんの「聖子ちゃんカット」なんていうのは、皆さんも耳にされたことがあるかと思います。

で、こうしたサラサラヘアのフワスタイルも、ちょっとしたウェーブや髪の流れをつけたりといったセットが必要になります。
そこで生まれたのが、ドライヤーを片手にブラシを用い、髪をドライしながらセットをしていくという手法が、「ブロー」という技術ですね。

髪の水分を強引に飛ばしていくことで髪にカタチがつきますので、それを利用してオリジナリティを訴求していくというヘアスタイルが一気に主流となっていきました。

ところが、これにはひとつ難点がありました。

フワ髪スタイルの悩ましさ

このブローというセッティング技術でセットされた髪型。
確かにセット後は可愛らしくてオシャレなのですが、残念なことに髪の水分を飛ばすドライヤー技術によって作られているため、雨に降られたり汗をかいたりといった水に濡れることで、すっかりリセットされてしまうというわけです。
特に髪の細い方などは湿気の多い曇り空といった日にすらセットがもたず、悩まされたご婦人も多かったのではないでしょうか。

こうなると誰しもが考えるのが、昔から使われてきたスプレーやセッティングゲルを使ってのブロー。
読み進めてこられた皆さんも、瞬間的にそうイメージされたかもしれませんね。

残念ながらそういうわけにはいかないところが、美容業界の革新技術に繋がっていくキッカケですね。

皆さんも普通に考えてみれば分かりますが、セットで固めた髪にクシやブラシを入れてしまうと崩れてしまのはお分かり頂ける通りです。
ですので、セット剤を塗布してブラシやコームを入れてしまうと髪同士がくっつかないため、セット剤の役目は果たさないということなのです。
簡単にいえばそういうことではあるのですが、ブローという作業にはさらに悩ましい問題が秘められています。

普通のセット剤は使えないブロー技術

ブロー001

さて、ここまで読み進めて頂いて、セット剤で固めてある髪にブラシを通すと崩れてしまうことはご想像頂けることでしょう。
で、さらにブロー作業のように何度も何度もブラシを通していくと、どうなるでしょうか?

そう、髪を樹脂のようなものでくっつけて接着してあるのがセット剤の仕組みですので、接着剤がブラシでしごかれてポロポロと落ちてくることになってしまうのがお分かり頂けるでしょう。
この接着剤に該当するのが、樹脂だとかポリマーと言われる成分ですね。

ということは、髪が濡れている間にこのセット剤を塗布してブローをしても髪同士がくっつきませんので、根本的にセットがされないことになってしまうわけです。
そしてそれを続けてやがて乾燥してくると、固まったポリマーが白くなってポロポロと剥げ落ちてくるというわけです。

つまり、結果的にセット剤の意味をなさないということがお分かり頂けます。

どうすればセットが維持できるのか

このような背景で芸能人の方々の対策は、ブローでセットを仕上げてから最後にセットスプレーを振りかけて髪を固めてしまい、ヘアスタイルを維持するという強引な手法でメディアに出ていました。

松田聖子さんの歌唱シーンを思い出してみて下さい。
フワフワサラサラ風のヘアスタイルですが、歌っている時の小踊りで全く髪型が動かなかったはずです。
そう、ヘアスタイルが崩れないように実はガチガチにセットスプレーで固めてあったんですね。

こうなると、一般人はそういうわけにはまいりません。
通勤電車に乗り遅れそうになると、駅まで走りますからね(笑)
朝一番の出勤で、せっかくのフワ髪スタイルが一貫の終わりです。

こうしてブロースタイルの髪型が主流になり、ブローでも使えるセット剤の開発が求められたというわけです。

実はここで、開発されたばかりの成分に目をつけたのが、その時の私の上司であった研究室長でした。
こういうメカニズム理論です。

樹脂やこれまでのポリマーといった成分は、髪と髪同士をくっつけて接着する、いわば「横のコーティング」
なので、物理的なチカラではがされてしまって、セットが維持できなくなるということ。ということは、「接着」ではなく髪の一本一本そのものをコーティングするコート剤があればセットができるのではないか?という理屈です。
いわば、「縦のコーティング」

そこで目をつけられたのが、少し前にもシャンプーに使われている技術の成分でご紹介した「カチオン化セルロース」
この時はこの成分名でしたが、今は「ポリクオタニウム-10」となっている成分です。
このセルロースポリマーは、髪のお隣同士をくっつける接着力は全くなく、髪全体をコートしてくれる効果があります。
それはカチオン性であることでさらに発揮され、髪全体をしっかりとコートしてくれることで、動いてもブラシを入れても崩れにくいヘアスタイルを維持してくれるという効果を見出したんですね。

水に溶けやすいポリマーですので、普通に水に配合するだけでブローに使えるセット剤ができ、あとはブラシの繰り返し摩擦によって白いカスが出ないように処方設計の工夫をしてあげることで、セットローションが完成しました。

この素晴らしい発想、当時在籍していたヘアケアブランドさんは一般ユーザーさんには知られないサロン向け専門製品のメーカーでしたが、その後この技術は一気に市場に広がり、花王さんやカネボウさん含めホームケアヘアアイテムを販売している大手ブランドさん全てから発売される、大流行のブローローション技術となりました。
セッティングローションやスタイリングローションといた製品名で、ドラッグストアにもズラりと並んでいました。

とともに、アルコールが必ず配合されていたセットスプレーは、市場から一気に姿を消していったというわけでした。

実はこの成分、前回のこの企画ではシャンプー成分として取り上げていますが、実はそのもっと昔にこういったセット剤として一大ブレイクした、有名な成分だったんですね。
「ブローローション」という言葉はほとんど使われなくなりましたが、今でもミストタイプのヘアローション・コンディショニングローション・スタイリングローションとして販売されているブランドさんもありますので、店頭で見かけましたら裏側の成分を見てみられて下さいね。

この化石コスメの企画はさておき、今でも常々思いますが、こうして当時の上司の方は時代の先駆者と名乗られてよかったような、市場を席巻した隠れた革新技術の開発アイテムが他にもたくさんあります。
例えば、揮発性シリコンなどもそのひとつです。
私は本当にいい上司に巡り合えてきたとつくづく感じてなりません。

もう亡くなられた元上司ですが、直属の部下として恥ずかしくないこういった起死回生の発想転換を自分もまだまだ心がけ、さらに次世代に警鐘していかないといけないと感じて止まない今日この頃でした。

ではまた次週。

by.美里 康人


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