今回の記事は
コメントでご要望頂きました製品をとりあげ
全成分データと業界情報を合わせて
分析させて頂こうと思います。
市場商品の評価記事について
その前にこうした製品の分析について
少し前置きをさせて頂きますと
これまでも市場商品については
問題があると判断したの方は
よく取り上げてきています。
一方で、オススメ評価となると
業界の最前線に身を置く私の立場では
ステルスマーケティングだと誤解を生んでしまうことにもなり
実際に手掛けさせて頂いた製品も市場に存在しますので
ユーザーの皆さんは信憑性に疑問を生じかねません。
そんなことから、その昔@cosmeのQ&Aでは
10年以上に渡ってかなり要望にお応えしてきておりましたが
現在では市場商品の分析を自粛していた経緯があります。
ただ、今後につきましては
ご要望頂いた製品のみに限定して
忌憚のない評価をさせて頂こうと思います。
とはいえ、過去のように
本職に影響する容量になると困りますので
時にセーブさせて頂くことを
ご了承下さいませ。
また、メーカーさんからのご依頼には応えられないことも
ここに記させて頂きます。
セラミド高配合コスメ
さて今回はセラミドコスメの話題から
小林製薬さんのヒフミドよりさらに
セラミド4%を越える
生セラミド高配合で話題になった
トゥヴェールさんブランドの
「セラミドミルク」の疑問について
解明をご要望頂きました。
※「トゥヴェール」HPより
製品の方向性は明確なアイテムですので
もっとも気になる点はやはり
「ヒト型の生セラミド4.5%」の部分でしょう。
まずはここに重きを置いてチェックしてみます。
前回とりあげた商品は
ここが「原液5%」となっていましたね。
で、この「原液」を指しているのはヒト型生セラミドそのもののことではなく
この生セラミドを化粧品に配合しやすいように
「加工してある水溶液のプレミックス原料」のことを原液としていました。
実はこれは、消費者に誤解を与えないように
明確にしないといけないと決められています。
なので、よ~~~く製品の説明を読み込んでいくと
ほんとに小~~さな文字で
配合された原料のことが記述されています。
それこそ、スマホで読むと読めないような小さな文字で(笑)
いわゆる「摘発逃れ」という手法ですね。
問われるブランドの正義感
さて、対してトゥヴェールさんの製品はいかがでしょう?
ここでウソをつけないのが全成分。
全成分)水、マカデミアナッツ脂肪酸エチル、BG、セラミド2、グリセリン、イソステアリン酸、マカデミア種子油、ペンチレングリコール、グリセリルグルコシド、アルギニン、DPG、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸セチル、水添レシチン、ダマスクバラ花水、スクワラン、水添ナタネ油アルコール、フィトステロールズ、ラウロイルラクチレートNa、セラミド3、セラミド5、セラミド6II、セラミド1、コレステロール、フィトスフィンゴシン、PCA-Na、乳酸Na、アスパラギン酸、PCA、グリシン、アラニン、セリン、バリン、イソロイシン、トレオニン、プロリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、アラントイン、アルカリゲネス産生多糖体、サッカロミセス溶解質エキス、ポリクオタニウムー51、ダイズ種子エキス、リンゴ酸、加水分解ローヤルゼリータンパク、ヒアルロン酸Na、キサンタンガム、ポリソルベート60、ステアリン酸グリセリル(SE)、1,2-ヘキサンジオール、カプリリルグリコール、グリチルリチン酸アンモニウム、エチルヘキシルグリセリン、トコフェロール、カルボマー
これを見ると、ずいぶんと前に
生セラミドの「セラミド2」が位置しています。
で、位置関係として着目すべき点は
「BGのすぐ後ろ、グリセリンの前」という点です。
これでセラミド2そのものが
1%以下の微量ではない事がほぼ確定します。
しかもBGやグリセリンといった
水性の保湿を担う成分は
数%レベルで配合されるのが定石ですので
標ぼうされている4.5%配合は
その通りの確率が非常に高くなります。
もちろん、それでも100%確定とは言えませんが
その後、説明文を詳細に読み込む限りでも
プレミックス原料を配合したのではなく
セラミドそのもの4.5%配合を達成したことが明記されていますので
記載されていることに
ウソはないと思って良いでしょう。
こちらの商品の説明にも書かれている通り
これまでの業界常識では
セラミドは水にも油にも非常に溶けにくい成分ですので
通常は1%以下が当たり前の成分でしたから。
業界的には驚愕の数字を達成されていますし
なにより、普通に考えるとコストが非常にお高くて
利益をかなり絞って製品化に至っていることが
推定されますね。
業界No.1のウワサに
ウソはないことが感じ取れます。
メーカーのユーザーさんに対する誠意は
まずはこうでないといけないと思わせる一品ですね。
化粧品としての評価はいかに?
さて、そしてその他の成分を拝見して
化粧品としての評価はどうかという点です。
クチコミを見る限り★の少ないレビューがいくつか見られ
少数ではありますが
お肌にストレスを感じている方がおられるのが見てとれます。
その要因となるのは
防腐剤フリーに拘っている点にあるかもしれません。
パラベンやフェノキシエタノールといった防腐剤が使われたコスメと
こうした、ペンチレングリコール・1,2-ヘキサンジオール・カプリリルグリコール
いわば「多価アルコール系」と言われる
防腐剤フリーコンセプトのコスメは
どちらがお肌に合うのか、非常に難しいところです。
まさに個々人の肌質ということになりますので
どちらが良いということは言えませんが
こうした多価アルコール系防腐設計で
刺激やかゆみといった肌ストレスを感じる方が
一部にみられています。
もう一点は、オイル成分がそこそこ多い点です。
この製品ではオイル成分が10%か
もしくはそれ以上使われており
もともと油性成分であるセラミドが高配合されていることと相まって
まるでクリームのようなコクが期待できると想像されます。
これは非常に良い評価に繋がると思うのですが
その反面で、昨今はオイル成分に肌ストレスが現れる方がおられ
見た目以上にオイルが多いことから
オイル成分が肌に合わない方は
注意される必要があるかもしれません。
特にこの製品のメインで配合されているオイル(マカデミアナッツ脂肪酸エチル)は
ベタつかない非常にテクスチュアの良いオイルである反面
皮膚なじみの良さがマイナスに出るケースもあり得ますので
オイル成分が合わない肌質の方は留意されて下さい。
界面活性剤などなど
これに付随して、その他の成分との相乗も考える必要があります。
この製品は乳液製剤ですので
その乳化を担っている成分
つまり界面活性剤は何かとチェックすると
以下4点の可能性をあげることができます。
・水添レシチン
・ポリソルベート60
・ステアリン酸グリセリル(SE)
・イソステアリン酸とアルギニンの石けん乳化
これを見る限り、界面活性剤を使わずに
天然素材の水添レシチンで
乳液を達成されている可能性があります。
加えて、イソステアリン酸を脂肪酸として
アルギニンで中和した石けん乳化で
不足分をサポートしている可能性があります。
ただ、2番目のポリソルベート60は合成界面活性剤ですので
ここが皆さんとしては気になるところかもしれません。
この部分は、正直なところなんとも言えません。
他の数種類のセラミドが配合されていますので
ほぼ間違いなくセラミド3以外の
セラミドプレミックス原料も配合されているのは間違いなく
その中に含まれている成分である可能性も捨てきれません。
それは合成ポリマーであるカルボマーにも言えることで
増粘剤としてトロミを付与するために配合されているのか
それともこのプレミックス原料中に含まれているものなのか
ここは推測が難しいところです。
とはいえ、いずれも1%以下の微量であることを考えると
皮膚への影響といった懸念材料にはならないでしょう。
水添レシチンのメリットとデメリット
最後になりましたが
基本的には非常にこの製品は高評価で
乳液とは思えないコクと
セラミドのバリア効果を実感できる
付加価値の高い製品と言えると思います。
ただ、私の経験則を踏まえて
ほんの少し気掛かりな部分があります。
それは水添レシチンでしょうか。
いえ、これ単独の課題というのではありません。
水添レシチンは非常に肌再生能力が高く
乳化剤としてではなく美容成分としても
お肌の構築を助けてくれる心強い成分です。
そしてもちろんリポソームの基剤でもあることから
非常に皮膚浸透の高いコスメを達成してくれます。
おそらくそれは
テクスチュアに大きく出ていることが容易に想定できます。
ですので、私個人的にも水添レシチンは
非常に評価の高い成分のひとつです。
ただその反面、皮膚のバリア層にしっかり届いてくれることから
その他の成分のリスクも倍増してしまう
マイナス面も持っています。
いわゆる「表裏一体」な成分。
なので、その他の成分の使い方に
非常に神経を使わないといけない一面を持っています。
つまり、ここで防腐剤フリーの設計が関わってきます。
そして同時に、油分の問題です。
これらがトータルで相乗して
化粧品の効果として表現されますので
これが人によってプラスに働くのか
それとも肌に合わずにマイナスに働いてしまうのかは
まさに個々人の肌質によると言えます。
結論的には
毒にも薬にもならないローコストコスメではなく
まさに、お肌に能動的な結果が出るコスメと
感じた一品でありました。
どうでも良いコスメが市場にあふれる昨今にあって
久しぶりに期待度の高いコスメに出会ったと
最後に書き記しておきましょう。
そして今の私にとっては
まさにライバルと言えるでしょうか。
では、また。
by.美里 康人