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微生物は「変異しやすい」というお話

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美里康人

「変異株」という言葉でよく知られるようになった「変異」
これってどういう事なのか、解説

さすがに10年以上も毎週に渡って記事を書かせて頂いていると、なかなかネタに困ってしまいます。
こうなるといつネタが枯渇してもおかしくありませんし、時にはつまらない話題になることもありますが、何卒ご了承下さいませ。

というわけで、今週は「変異」というお話なのですが、今まさにコロナウィルス問題が第9波か?という専門家筋の声が出てきていますので、ちょっとそんな問題もカスりつつお話を進めてまいりましょう。

変異って何?

「変異」という言葉は、このコロナウィルス問題でユーザーの皆さんも「変異株」という言葉で目にすることも多くなり、なんとなくウイルスの何かが変わっていってるだろう程度のことはご理解のことと思います。

で、実はこちらのブログ記事でも、“パラベンの防腐力が効かなくなる”という話題をとりあげたことがあります。
いわゆる化粧品の中身を作っている工場さんで、パラベンを配合した製品を毎日のように生産しているとその環境下に存在している微生物が耐性を持ってしまい、防腐剤の効力が失せてしまうというお話でしたね。

実はこれも、微生物の変異のお話なのですね。

このように微生物が耐性を持ってしまう「耐性菌」といえば、病院などで院内感染がよく取り沙汰され、病院内に巣食っている微生物たちが殺菌剤や抗菌剤、さらには抗生物質に対して耐性を持ってしまい、おクスリが効かない病気が広まってしまうことなんですね。
まぁ、短い解説なので簡単に説明しましたが、本来は複雑怪奇な問題で一言で言い表される問題ではないのですが・・・。

とはいえ、とにかくこれら全てがいわゆる「変異」と言われる、生物の進化を意味すると考えて頂ければ良いかと思います。
いわば、海から陸上に上がって生活できるようになった動物の進化の歴史も、この変異のひとつと考えて頂ければ良いでしょう。

微生物はすぐに変異するというお話

さて、話はウイルスや菌に類する微生物(ウイルスは実は生物ではありませんが)のお話に戻りますが、上で少し触れた動物などとは違って微生物は、変異の速度が異常に早いということなのです。
ウイルスに至っては、この3年ほどのコロナ禍の間に何度も何度も呼び名(略称)が変わってきたことは、皆さんも記憶に新しいことと思います。

一応、その変異株の数をズラリとみて頂きましょうか。

delH69V70、N501Y、E484K、K417N、K417T、N439K、D614G、A222V、Y453F、P681H、 Q27stop、delY144、A570D、T716I、S982A、A1708D、A701V、L242_244L、D80A、L18F、 R246I、D215G

えー!!という感じだと思いますが、もちろんこれはどんどん日を追う毎にさらに種類が増えていっています。

この記号の意味するところの詳細はさておき、つまりは遺伝子を構成している20種のアミノ酸配列のほんの一部が入れ替わったり欠損したことを表しています。
たったそれだけのことで、昨日まで効果があったワクチンが効かなくなったり、感染力が強くなったりしてしまうのですね。

ん?
どこからか声が聴こえてきましたよ?

--おいらの生まれついてのバカ、変異することでちっとは賢くなったりしないものかねぇ?

あはは。。。私のつぶやきでした(苦笑)

動物もこれ位早く変異してくれれば、それこそ色んな気に入らないところが改善されると思うのですが、そうはいかないものですね。

それはなぜか?というお話に進みましょう。

細胞の数がカギ

さて、コロナウイルスの「ウイルス」というのは実は生物とは少々異なる部分がありますのでさておき、身の回りの微生物「菌」を例に話をすると分かりやすくなります。

人を小バカにする時に使われるあんた単細胞だねという表現が、実はこのお話。
微生物というのはこの言葉通り、細胞がたったひとつしかない「単細胞生物」なのですね。

ほら、皆さんもよく見るこの絵の通りです。

微生物

中にある細胞核もひとつしかありません。

そして人間を代表とする動物は、この細胞がたっくさんある「多細胞生物」です。
ほら、皮膚の断面図もこう絵にされていますよね。

皮膚細胞

皮膚細胞です。

つまり微生物は細胞がたったひとつしかありませんので、上のコロナウイルスの変異のようにDNA因子の構成アミノ酸のほんの一部が変わってしまうだけで、性格が全く変わってしまうというわけです。
そう、化粧品工場にいた単細胞生物の菌は、毎日パラベンに触れていることでそのうち強くなってしまい、効かなくなってしまうということなのですね。

これが耐性菌ができてしまうメカニズムです。
なので大手ブランドのメーカーさんは、時々少しパラベンの量を変えたり、他の防腐剤をちょっとだけ足してあげることで対策しているというわけなのです。
そこは単細胞生物。
ちょっとだけでも違っていればあれれ?となって対応できなくなるので、耐性菌は作れなくなってしまうという次第です。

まぁ、単純といえば単純ですし、素直といえば素直
これを利用し、ひたすら単純かつ素直に同じ生成物ばかりを永遠に作り続けてくれる性質を使ってバイオヒアルロン酸も作られていますので、人間にとっては大変有り難い素直な子たちということになるのですけれどね。(これがバイオ技術です)

あ、毎日皆さんが食べておられるヨーグルトや乳酸菌飲料も、そうなんですよ。

おいらも変わりたい!!

さて今回の話題も最後になりました。

上でも触れたように、人間もこのように簡単に変異してくれないものか・・・との声がありますが、残念ながら動物は何十兆という膨大な数の細胞で作られていますので、ひとつやふたつ・・・いえいえ、数百個や数千個が変異したところで大した影響を及ぼすわけはなく・・・。

「細胞壊死」という言葉がある通り、日々たくさんの細胞が死んではまた生まれを繰り返していますので、そう簡単に性格や身体能力、そしてお脳の性能が変わってしまったりはしないですね。
単細胞か!!と言われ、実はそうなりたくてもなりようもない、多細胞生物の性。

私のこの悪い性格も、きっと棺桶に入るまで変わりようもないということらしいというオチで、今週のブログの〆と致しましょう。

ではまた次週。

by.美里 康人

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