◆◆FILE No.073 / 2008年2月配信◆◆
この記事の目次
よく分からない”医薬部外品”~その2
さて、今回も医薬部外品について前回の続きです。
さっそく3項目目の説明に入りましょう。
3.厚生労働省に有効性の承認を受けた薬剤が、規定量配合されていなければならない。
この「有効性の承認を受けた薬剤」とはいったい何でしょう??
前回書きました、資生堂のトラネキサム酸を例にとって説明していきましょう。
皆さんご存知のように
トラネキサム酸が有効成分として配合された資生堂のアイテムは
『美白アイテム』です。
つまり
「”美白”を謳える医薬部外品商品」という事になります。
こうして美白商品として有効性を謳い文句にしようとすると
「厚生労働省において美白有効性の承認を受けた成分」
を配合していなければならないわけです。
この『美白有効性の承認を受けた成分』というのが
実はもっとも重要な部分です。
新規な成分で、厚生労働省において美白効果を認めてもらおうとすると
大変労力と時間と費用がかかります。
当たり前ですが、データや臨床試験によって
人の肌が白くなった事を証明しないといけないわけですから
それはもう大変な事です。
さらに重要なのは、安全性です。
効果があっても、皮膚に悪影響やアレルギーがあっては
お話にもなりません。
当然、安全を証明するデータも必要になります。
基本的に厚生労働省は
新しい薬剤に関してはあまり認めたくないというのが
大前提にあります。
それは
厚生労働省が承認してしまってから
もしも市場で大変な皮膚薬害問題でも起きようものなら
おおごとになってしまうリスクがあるからです。
そう、医薬品で過去に何度もそういった問題がありましたね。
血液製剤による薬害肝炎問題・薬害エイズ問題と・・・
厚生労働省が、薬剤の承認をおろした事で
何度も叩かれてきて訴訟を起こされています。
政府が認めたからだ!という事で。
*
話は戻りますが
以上のような理由で
こうした新規な成分の有効性の承認を得るには
何年もの期間と、何十億といった費用が必要となるわけです。
当然の事ながら
小さな化粧品会社程度ではこんな事ができるはずもありません。
「え? 弱小メーカーでも医薬部外品アイテムはたくさんあるけど??」
ここでこうした疑問が出てきますね。
これはどういう事でしょうか?
実はこうした有効性のある薬剤は
その薬剤を作っている原料メーカーが開発する事が多いのです。
そうして何年・何十億の費用をかけて有効性の承認が取れたら
たくさんの化粧品会社にその素材を提供するという仕組みです。
つまりこの薬剤メーカーが開発して承認を取得した有効成分を
一般の化粧品会社がそれを購入して配合するだけで
医薬部部外品の称号が得られるというからくり。
化粧品会社がそれぞれの商品の医薬部外品の承認を得る際には
この薬剤メーカーが厚生労働省から承認を受けた
その薬剤の有効性や安全性のデータをゆずり受ける事で
それを添付して提出すれば
比較的容易に承認を受けられるわけです。
こうする事で、有効性・安全性の審査を受けなくても
前回書いたように1年未満程度の厚生労働省の書類審査だけで
各アイテムの医薬部外品の承認を受けられるという事です。
薬剤メーカーはたくさんの化粧品会社が
医薬部外品薬剤として採用してくれる事で
薬剤の開発費用がペイできますね。
これが弱小化粧品会社の医薬部外品アイテムの仕組みです。
つまり言い方を変えれば
「どこにでもある医薬部外品」という事になるでしょうか。
いや・・・
効果がないという意味ではありませんので、誤解のないように(汗)
*
そんなわけで
大手のメーカーは自社独自の成分を開発する事で
弱小メーカーと差別化をはかっているんですね。
ちなみに現在認められている医薬部外品の効能は、次のとおりです。
・美白
・紫外線による日焼け防止
・肌荒れ防止
・育毛
・フケ・かゆみの防止
・コールドパーマネントウェーブ用剤(縮毛矯正含む)
・ヘアダイ
例えばアンチエイジングなど
これ以外の効能を謳うことは認められていません。
気付かれた方もおられるかもしれませんが
基本的に医薬品と違って医薬部外品は
あくまでも「予防」あって
「治療・治癒」ではないところがカギです。
さて、最後に4項目目です。
4.効能・効果は、有効性の承認を受けた薬剤の効能だけを謳う事。
もう上でも書いてきましたのでお分かりかと思います。
医薬品も同じですが
医薬部外品の場合も、配合された有効成分がもつ効果の
効能しか謳う事はできません。
いくら医薬部外品だからといっても
美白有効成分しか配合されていないのに
「肌荒れを防ぐ」といった効果は謳う事は許されていません。
*
長々と書いてきましたが
以上が医薬部外品の説明です。
さてお待ちかね。
「じゃぁ、医薬部外品ってそれなりに効果がある??」
といった部分に触れていきましょう。
ここまで書いてきた内容をよく見ると
大切な『有効成分』のところで少しチグハグな事が出てきます。
というのは
例えば大手が開発した独自の有効成分というのは
自社が使用権などをもっているために
当然、他社や医薬部外品ではない普通の化粧品には
配合することはかないません。
ところが、昔から使われて大変汎用性の高い有効成分は
化粧品にも配合することが可能なんですね。
例えば美白成分として有名な「ビタミンC」。
これは美白有効成分としても医薬部外品の承認を受けていますが
化粧品に使われる成分リストにも収載されているために
化粧品にも自由に配合が可能なんですね。
しかも医薬部外品の場合は
有効成分の配合量に関しても承認を受けているために
それ以上の配合量で作る事はできません。
ところが化粧品の場合はそういった規制を受けていないために
医薬部外品の配合量を超えて配合することが可能というわけ。
という事は
医薬部外品よりも有効成分が多量に配合された
有効性の高い化粧品もあり得ることになります。
実際、水溶性ビタミンCの場合でも
現在のところ医薬部外品では3%まで(*)しか配合できませんが
化粧品の場合は7%や9%といった商品も存在します。
(*一部のメーカーで、例外あり。)
となると
高配合の化粧品の方が効果が高い???
こうしたチグハグな現象も起きてくるんですね。
もちろん医薬部外品ではありませんから
美白の効果を謳うことは許されません。
でも、当然その効果は高いはずだという事は
皆さんもお分かりですよね。
という事で
医薬部外品といっても
効果はあるとも・・・ないとも言えないという・・・
そんな中途半端な言葉になってしまったんですね。
まさにケースバイケースというべきでしょうか。
* * *
最後に皆さんに決して誤解してはならないことをここでひとつ。
ここまでのお話で
化粧品は、医薬部外品ではないのですから
効能・効果を謳ってはならないという事が分かったと思います。
でも実際は
アンチエイジングや美白など
さもすごい効果があるかのような怪しい化粧品の宣伝が多いですね。
これはどういう事かというと
例えば美白アイテムの場合
医薬部外品で定められた
『美白』『ホワイトニング』『日焼けを防止する』
といった美白の有効性を表現する使ってもよい文句が
きちんと決められているのです。
当然こういった言葉は
化粧品では使う事は認められていません。
薬事法違反になってしまいます。
逆に言うと、化粧品の場合
この文句さえ使わなければ
それらしく思わせる文句なら問題ないという事になります。
これが抜け道なんですね。
『白さを保つ。』
『日焼けあとは気になりませんか?解決しました!』
これでも十分、ユーザーにとっては
美白を思わせる言葉になってしまいますよね(苦笑)
でも法的には
単に主語がない抽象的な表現という事になります。
医薬部外品も化粧品も
売らんがためには色んな画策を考えるという事ですね。
結論は
どっちもどっちという事になっちゃいましたね(笑)
<2021年8月追記>
年々、薬事法(現、薬機法)が厳しくなり、広告表現に使えないNGワードが増え、“抜け道”整備が進んでいます。