美里康人
実はカンタンに分かるウソの見抜き方
今回は説明の必要もない、市販コスメに関するお題の話題。
なんだかちょっとしたムーブメントになっているそうで、ここはきちんと是正しておきたく記事にしてみました。
まぁ、長く業界にいますと、何年かに一度はこういった発言で関心を集めようとする人種が現れます。
似たような話では「原価は10円」なんていうのも、あるあるな切り口でして・・・。
熱が冷めた頃にまた湧き出すというのは、もう業界の恒例と言っても過言ではないたわごと話です。
ご本人は関心の的になれば天下をとったかのように感じているのでしょうが、SNSという注目を浴びたいがために発信するというのは、これまでとは少し事情が異なるのかもしれませんね。
とはいえ、化粧品は中身が見えないことから、どうせバレないと思っているのでしょうが、中身を知る人間からすると恥ずかしいとしか言えない虚偽と言うしかありません。
当の本人方は、分析するにも大変だし証明のしようもないだろうとタカを食っているのでしょうね。
なんとも情けない時代になったものです。
今回はそんなバレないとお思いの貴兄に、一発でそれを証明する方法を話題にしてみたいと思います。
過去の記事にもそのヒントがありますので、既に以前からこちらの記事をご覧になられている賢者の方はバカバカしいと思われるかもしれませんが、そこは申し訳ありませんがご容赦頂いてお付き合い下さいませ。
せっかくこのためにこちらの記事を埋めるのですし、ご利用頂いている賢者の方々にも参考になるお話にしていきたいと思います。
この記事の目次
カンタンに証明
こういった話題が拡散すると、中身のことをご存知ないユーザーさんの中には、発信者の方が業界の裏側を知っているのかも?などと勘ぐって、つい信用してしまうといったことがあります。
でもそれは、全くの逆ですね。
業界人なら恥ずかしくて、そんなウソは口にできないというのが真実です。
なぜなら、それは業界を知る人間であれば、カンタンに証明できてしまうためです。
中身の成分の詳細を知らなくても、それは実に単純なことなんですね。
何も成分分析などしなくても、簡単に分かることなのです。
また、社会人ならばそんなことはあり得ないことくらい、誰でも理解できる常識的なことと言えます。
今回は、ユーザーさんでも確認することができるその方法を解説しておきましょう。
もっとも単純な方法として、それは2つあります。
・乾燥させてみる
・凍らせてみる
ひとつめの乾燥させてみる方法は、少しだけ手間が掛かります。
もっとも手っ取り早いのは、化粧水を何かの小さな容器に少し入れてグツグツと煮えたぎったお湯の中で温める方法です。
あまりたくさん入れるとなかなか乾燥しませんので、5g程度くらいまでならば1時間も掛からずにほとんど水分は蒸発してしまいます。
まず間違いなくねっとりした状態の液が残るはずで、カラカラにはならないので99%もの水ではないことが判明しますね。
正確な計りがあれば、乾燥させる前と後とで重量を計ると何%ほどの成分が含まれていたかが判明します。
もちろん、残った成分が何であるかはこれだけでは分かりませんが、少なくても水やアルコールといった揮発する成分ではないことが判断できるというわけです。
これは業界の専門用語で「乾燥減量」といい、きちんと公的機関の試験方法の中に指定されている品質管理の手法です。
そしてもっとカンタンに見極める方法が、ふたつめの凍らせてみる方法です。
ご覧の皆さんも、水は0℃で凍るということくらいはご存知と思います。
ですので、99%が水であれば0℃で凍ってしまうというわけです。
そう、つまり水よりも氷点が低い成分が配合されていれば0℃でも凍らなくなりますので、冷凍庫に入れてみればすぐに判明するんですね。
ただし、家庭の冷蔵庫についている冷凍庫でも温度は-15~20℃まで下がりますので、ここまで低くなるとさすがに化粧水でも凍ってしまいます。
温度計をさしておいて、何度くらいで凍るのか見てあげればカンタンに判明します。
--いやいや、どうせ文字での解説だし、こっちがウソかも・・・
ならば、証明しておきましょう。
化粧水は0℃で凍らない
本来ならば正確に測定して証明したいところですが、とりあえずは簡単にできる実験をしてみました。
まずは99%が水ならばどうなるか。
そしてもう少しマシな感じで、一般的な化粧品によく使われる保湿成分「BG」を5%とで0℃以下にしてみました。
いかがでしょう。
マイナスを正確に測れる温度計がコンパクトではないため普通の温度計を使いましたが、0℃のラインよりも少し下になっているのが見てとれると思います。
およそ-1℃というところでしょうか。
99%水だと0℃を下まわるとかなり凍ってきているのがお分かり頂けるかと思います。
それどころか、5%BGを配合した右側でも、99%よりもマシとはいえすでに少し凍り始めています。
ならば、オーソドックスな化粧水の基本設計で試してみましょう。
一方は「BGを10%」、そしてもう一方は「グリセリン10%」でテストしてみました。
上の検体よりももう少し温度を下げてみましたが、この程度ならば-2~-3℃でも凍らずにいけます。
こうしてちょっと氷結温度を測ってみてやれば、化粧水がほとんど水でしかないという話はウソであることが判明するというわけです。
普通の化粧水であれば最低でもこの程度の設計になっていますし、確かめてみればすぐに分かることです。
凍らないのが当たり前説
今回はカンタンな実験を混じえて話を進めてきましたが、こんなことをわざわざしてあるのか?といった疑問をまだお持ちの方もおられるかもしれません。
いえいえ、よ~く考えて頂きたいのです。
もしも化粧水が0℃程度で凍ってしまったら、商品として流通した時に寒冷地で凍ってしまうというクレーム、つまり品質不良ということになりますね。
上の実験では温度が0℃程度になったところで測定しましたのでまだシャリシャリしていますが、この温度のままでずっと放置しておくと全体がカチカチになってしまい、それこそ使えなくなってしまいます。
ですので、必ず化粧品はおよそマイナス5℃程度までは凍らないことを試験して設計されているのです。
市販商品としてこんな常識的なことを踏まえれば、あり得ないことくらいすぐに判断できるのですね。
つまり、以前に記事でも記したように、BGは単に保湿成分として配合されているのではなく様々な製剤上の目的があって使われており、そのひとつに“氷結温度を下げる”という目的も持っているというわけです。
それは実験どおり、グリセリンでも同様です。
まぁ、化粧品研究者の中にはそんなこともご存知ない方もおられて、普通にカチカチに凍ってしまう化粧水も世の中には存在しているかもしれませんが、きちんとしたブランドの商品であればそんなことはあり得ないというお話をさせて頂きました。
また、カンタンな身近なテストでそれは判明することも解説してまいりました。
発信する方は浅はかですが、それを信じるのも同類と感じて頂いて、今回の記事の締めくくりとさせて頂きます。
こちらのブログ発信のキッカケとなった通りまだまだ業界には闇があり、市場には価値観やPR手法に疑問を呈したい商品が溢れています。
しかしながら、ビックラ感を演出したいのか、あり得ないウソを流してユーザーさんを陥れるかのような噂話で注目を集めようとする輩も、昨今は多くなっています。
正しい知識を蓄えて、ことの真意をきちんと見極められる賢明な消費者を目指しましょうね。
ではまた次週。
by.美里 康人