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バームのポリエチレンの今後は?

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美里
ポリエチレン?

考えてみればよく耳にする言葉

 

今回は、化粧品市場で久しぶりの製剤ヒットとなったクレンジングバームについて、ちょっとした裏話を取り上げてみます。

これまでの技術との相違点

クレンジングバーム

本題に入る前に、前説として少しこのアイテムの背景について触れておきます。

既に皆さんもご承知の通り、クレンジングアイテムのカテゴリーで久しぶりに一大ブームとなったバームタイプのクレンジングは、これまでのリップバームといった固形状のコスメとは異なる技術で作られていますね。

この処方テクニックをよく理解できていない外資ブランドさんなどもあり、まだパラフィン系のワックスといった固形油成分で固めてある製品も一部に見受けますが、少なくても国内ブランドさんに関していえば、ほぼ全てのバームタイプクレンジングアイテムはこの設計になっています。

20年前から開発されていたこの技術も、もう一般に知れ渡りましたのでこうして公開記事にしていますが、あらためてメカニズムを簡単に説明しておきます。
以前にも少し説明したところですし、よくご存じな方は読み飛ばして下さいませ。

で、最初に触れた通り、こういったバーム形状のコスメは市場になかったわけではなく、皆さんもよくご存じのロクシタンのシアバターなんかもそのひとつです。
他にも、スティック状ではないジャー容器に入ったリップバームなんかもありますね。

さらにいえば、私の年代のさらに上の年代の頃は、パレットタイプのファンデーションなんかは今のようなサラっとした使い心地の良い製品の技術はなく、ワックスで固めてパレットに流し込んだ、いわば「ワックスファンデ」と言うべき製剤の製品もありました。

つまりこれまでのこういったバームタイプのコスメは、ワックスオイルで固めた製品しか存在しませんでした。

「ワックスオイル」と言われてもピンとこないユーザーさんは、ロウソクのロウで例えれば分かりやすいでしょうか。
あれはパラフィンワックスでできており、化粧品の成分にも「パラフィン」と表記され、オイル系製品や乳化系アイテムの硬化剤として使われています。

そしてこういったワックス成分で固めたコスメは、必ず大きな難点がありました。

それは、皮膚の温度で温めてあげなければ溶けないという点です。
さらに逆に、その溶ける温度以上になると今度は製品本体すべてが溶けてしまうため、温かいところに置かれるとドロドロになってしまうという、品質上にも問題がありました。
夏場にロクシタンのシアバターをバッグに入れておくと、溶けてにじみ出てしまった・・・という経験をされた方もおられるでしょう。

これを解決してくれたのが、新しいバーム技術に使われているポリエチレンですね。

これはこれまでのワックス成分の固まるメカニズムとは異なって、ポリエチレンはオイル成分をゲル化することで固まるというメカニズムを応用したものです。
これは、昔から医薬品に活用されていたプラスチベースという、オイルゲル軟膏剤の技術です。
いわば、医薬品分野の方々はよくご存じの特許技術*ですね。
*特許の権利期限はすでに切れています

この技術のメカニズムは、この画像を見て頂ければ理解しやすいかと思います。

オイルゲル,バーム

ポリエチレンが骨組みを形成している、顕微鏡の画像です。
バームタイプクレンジングそのものの画像ではありませんが、例えるとこういった感じで、目に見えないミクロの世界で骨組みを作っていると考えて頂ければよいですね。
骨組みの周りはオイル成分が保持されていて、その中に美容成分なんかも含まれていると想像してもらえれば良いでしょう。

実はこの手の技術は、皆さんの身の回りの雑貨にも活用されています。
はい、お料理の揚げ物に使った油を捨てる時に使う「固めるテンプル」*が、まさにこの技術の応用です。
*成分)ヒドロキシステアリン酸

というわけで、こういったミクロのネットワークでオイル成分が保持されているため、物理的に手で潰してやると簡単に壊れて、液状のオイルになるというメカニズムです。
ですので、手が冷たくても液状になりますし、人体でなくても物理的に圧を加えてやったり、それこそ容器のままでガンガン叩きつけて衝撃を与えてやると、それだけでも潰れて液化することがあります。

ですので、いまだ一部のユーザーさんの中には、シアバターのように手の温度で「溶ける」と思っておられる方もおられるようですが、そうではありません。
これはあくまで温度で溶けるのではなく、手や指などで押しつぶしされることで液状になっていく仕組みなんですね。

なのでこのクレンジングバームは、必ずジャー容器に入っていますね。
なぜなら、チューブといった容器に入れるとユーザーさんの手によって外側からプニプニされ、、内部でネットワークが壊れてトロトロの液状になってしまうためです。
ジャー容器に入ったクレンジングバームも、スパチュラでコネコネしていると液状になってしまった経験をお持ちの方もおられるかと思います。

面白いからと、決して容器の中でバームをコネコネしてはいけませんよ。

オイルクレンジングなのです

さて、ここからがこの記事の本題。

まず最初に、様々なユーザーさんに使用感のご意見を伺っていると、このバームタイプのクレンジングはオイルクレンジングがゲル化剤で固まったモノだと理解できておられない方もおられるようです。
現在市場にあるクレンジングバームは、どれもがいわばクレンジングオイルを固形状にしたものがベースです。

ですので、市販商品の中にはWクレンジング不要とPRされていることがありますが、基本的にはクレンジングオイルと同様にオイル成分が皮膚に残りますので、洗顔の使用をベースにされることをお勧めします。
これをご存じなく、「バームって、なんか洗いあがりがヌルつかない?」といった声がよく聞かれています。

昨今はオイル成分がニキビになったり、毛穴からカブれる敏感肌体質の方もおられますので、ここは留意されて下さい。
特にクレンジングオイルでトラブルを招く方は、ご注意を。

ただし、つい先日発売となった資生堂のクレンジングバーム「専科 パーフェクトメルティングバーム」は全く異なるメカニズムのラメラゲル技術で開発されていますので、こちらはそれほどオイル成分がお肌に残る感じではないようです。

とはいえ、設計上では些少ながらも少しはオイル成分が残る設計になっていますので、気になる方は洗顔をお使いになることをお勧めします。

ちなみにこの製品の処方テクニックについては、すでに解析して記事にされた方がおられるようですので、この記事でのコメントは避けておきますね。
ちょっと新しい処方設計のキモを見誤っている方もおられるようですが、まぁそれはユーザーの皆さんにとっては問題になりませんし、触れずにおきましょう。

ポリエチレンの今後はどうなるのか

クレンジングバーム

実は今回の記事の本題は、こちらでした。
長引かせて申し訳ありません。

最初にこのアイテムの技術には、ポリエチレンというオイルゲル化剤成分が必須ということをお伝えしました。
ポリエチレンという成分特有の物理特性ですので、他の成分では代替できません。

さてこの成分名、ユーザーの皆さんもあらためてご覧になって、よく耳にする言葉であることに気付きますよね?
そう、コンビニのレジ袋などのポリ袋が、ポリエチレンです。
ポリエチレン袋が略されて、ポリ袋になったんですね。

一応、正確を期すために念を押しておきますと、現在正しくはコンビニやスーパーのレジ袋は「ポリオレフィン」に代わっていますので、非常に似ていますが少し異なります。

まぁ、それはさておき。
こういったポリエチレン素材は、プラスチックゴミとして今や環境問題で大きなターゲットとなっていますので、環境に排出することはあらゆる業界で規制の対象となっています。
もちろん、化粧品の成分とはいえお見逃しは許されません。
洗い流せばそのまま環境に排出されるわけですから。

また、目ではっきりと見える高重合ポリエチレンのポリ袋と違い、オイルに溶け込んでいる低重合ポリマーですので、さらにやっかい。
知らないうちに河川に流れていってしまっていますし、ポリ袋のように人の手で回収することもできません

言ってしまえば、化粧品への使用なんて量がごくわずかですので、すぐに環境に負荷を与えることにはなりませんが、それでも大量に原料を生産している原料メーカーさんには環境保護団体から圧力が掛かっています。
以前は海外で何社も原料製造メーカーさんがありましたが、今や廃盤に追い込まれてごくわずかなメーカーさんしか残っていません。

このような時代背景から、そのほかの化粧品に使われているポリエチレンは、どんどん他の成分に置き換わっています。
しかしながらあのクレンジングバームは、ポリエチレンなしではあの特異な「とろける」性能が出ません。

今後どうなっていくのか私にも分かりませんし、弊社や工場のお客様にもどんどん提供していますが、今後の動向から目が離せないという今回のお題でした。

ちなみに私達はこれを見越して新しい技術のバームを開発しています。
それはまた新しい成分を使い、最新の容器技術とコラボレーションすれば、一気にすべてが解決するアイテムになっています。

これはまた、化粧品プロデュースのお仕事をなさっておられる方にだけご提案することにして、今回の記事を締めくくります。
企業さんからのお問い合わせは大歓迎です。

ユーザーの皆様には中途半端になってしまいまことに申し訳なく思いますが、技術ノウハウゆえに何卒お許し下さいませ。

ではまた次週。

by.美里 康人

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