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バイオ化粧品とは

バイオ化粧品

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美里康人

よく目にする「バイオ」の言葉
化粧品業界では、どんな意味で使われる?

お題の言葉「バイオ化粧品」ですが、これは実は私が勝手に名付けたものです。
今のところこのように名付けられたカテゴリーのコスメは、まだ目にしていません。
でも、近い将来にこのような言葉で定義されたコスメが出てくるかもしれません。

今回はそんなお話。

バイオって何?

今回はちょっと少し難しそうなお題ですが、いつものように簡単に理解できるよう説明していきます。
石油からの合成素材が避けられている世界的な動向の中、ある意味非常に理に叶っていますし、なにより自然派に拘る消費者の方々も受け入れらるひとつの考え方として、読み進んで頂ければと思います。

まず最初に、やはりこの言葉の意味を解説しておかないといけません。
特に化粧品業界の素材にはこの「バイオ技術」を使って作られた原料も多くなっていますので、ユーザーさんがその意味を誤解しないようにきちんと説明していきましょう。

で、この言葉は実はいくつかの複数の意味を持って使われることがありますので、その辺りをまず理解して頂きたいと思います。

まずバイオは【bio】と書きますが、「ビオ」とも読まれます。 単語としては「生命の」とか「生物に関する」の意味を表す言葉ですので、本来は単独で使われる単語ではありません。

「バイオロジー」という言葉が、自然科学の分野の「生物学」全体を意味しています。
そしてよく皆さんが見聞きする言葉としては「バイオテクノロジー」でしょう。
これは日本語では「生物工学」となり、いわば生物の機能を活用した技術と理解すればよいですね。
いずれにしても、生物のチカラを利用した様々な技術という意味で使われると考えればよいかと思います。

ただし、ここでよく誤解を招くのが、バイオテクノロジーというと生物のDNA遺伝子を操作したり組み替えたりといった先端技術をイメージし、「生物としての尊厳が・・・」などと排他的な感性をお持ちの方がおられる点です。
まさに時流のコロナウイルスに対抗するワクチンなんかも、その技術で開発されていますね。
でもこの世界はバイオテクノロジーの中でも「遺伝子工学」という分野で、すべてのバイオ技術がこれにあてはまっているのではありません。

もっとも分かりやすいのはお酒や醤油の製造技術で、これらは酵母菌のチカラを借りてお米や大豆を発酵させるバイオ技術のひとつです。 ヨーグルトや納豆もそのひとつと言えば、分かりやすいでしょうか。 ヨーグルトの製品名「BIOダノン」というのは、この言葉から来ています。

つまり私達にとって、かなり身近な技術のことなんですね。

発酵というバイオ技術の面白さ

バイオ

で、化粧品の美容成分でも、成分名にこの発酵という言葉が用いられているのを見かけると思います。 「乳酸桿菌/豆乳発酵液」などは代表的で、よく目にする成分でしょうか。
ちなみに全成分名称としては、500種類以上も登録されています。

さて、こうした成分のどこが美容成分として有効性があるのでしょうか。

あらためて説明することでもないかもしれませんが、納豆をはじめ味噌や醤油など、身近な食品でイメージして頂ければよいですが、もともとの大豆を発酵させるとあらたな味に変わりますね。
これはなんらかの新たな成分が生成されて風味が加わったことになります。
つまり、微生物(菌)が大豆の成分を栄養にしてあらたな成分を作り出し、それが旨味として味に表現されているという理屈です。

例えばヨーグルトは、酸っぱい味がします。
これを化学的にいえば、あれは菌が牛乳を栄養として乳酸を作り出すことから、味が酸っぱく酸特有の香りになるわけです。

ちょっと表現が美しくないですが、私達がトイレで排泄物を出すのと同じと考えればよいでしょう。
微生物は細胞がひとつしかない単細胞生物ですので、人間の排泄物のように汚物成分ではなく、純粋な旨味成分を生み出してくれるというわけです。

これは化学反応を利用した化学的な合成とは全く異なり、これまでの化学の英知を使っても作り出せない未知な成分が生み出される可能性も秘めている、ユニークな考え方と言えます。
もちろん、栄養素としている大豆も様々な成分からできていますので、複数の色んな成分が作り出されて、その中にはお肌にとって美白効果があったりアンチエイジング効果が期待できたりと、無限に可能性を持っているのがこのバイオの技術ということです。
また当然のことながら、菌の種類によって作り出される成分も全く異なりますので、あらたに生み出される成分の可能性も無限大ということになりますね。

現在、500種類にも及んで化粧品の成分として登録されている素材は、原料の研究者がどういった成分が含まれているか成分を解析したり、さらにはエビデンスを採取してその有効性を確認したりといった試験・調査をし、お肌への有効性が確認された成分として使われていると理解して頂ければよいでしょう。

そしてさらに未来へ

ここまで読み進めて頂いて、発酵というバイオ技術を利用して開発された美容成分としてのユニークさの概略を、ご理解頂けたかと思います。

ただ今回の記事で「バイオ化粧品」と名付けたのは、これだけの意味ではありません。

例えをいえば分かりやすいのですが、私達の業界には「バイオヒアルロン酸」という呼び名があります。
成分名では普通のヒアルロン酸Naなのですが、これは実は昔のヒアルロン酸とは製法が異なっているためにこう呼んで差別化をしています。
ある種の糖を使用し、乳酸球菌(Streptococcus zooepidemicus)という菌を繁殖させて生成させ、製造されています。

まぁ、今はすでに市場製品に使われているヒアルロン酸はすべてがコレですので、あえてこの言葉も使われなくなりましたが、昔はヒアルロン酸といえばニワトリの鶏冠(とさか)から抽出されて製造されていましたので、このバイオ技術で作られたヒアルロン酸とは差別化されて、ニワトリ由来のものは「天然のヒアルロン酸」として区別されてPRしていた時代がありました。
もちろん、価格も数倍はお高くプレミアな成分として有名でした。

というわけで、こうして以前は天然の動植物から作られていた成分が、今やこうしてバイオ技術によって大量に供給され、安価になって身近な化粧品にたくさん使われるようになっています。

で、こうなってくるとあらたなチャレンジとしては、こうした美容成分だけでなく基剤に使われている成分も、こういった技術を応用して作られないかという考え方です。
つまり、今までは石油を原料として作られていた化学合成原料が、こういったバイオの技術によって作ることができないか?という取り組みです。
そうすれば、化石燃料である原油を使わなくても済みますし、微生物も含め自然にある原料から生産が可能になります。

と、簡単に書きましたが、これはここまで解説してきた食品の発酵とはまたレベルが一段階も二段階も上の、高い技術が求められる試みです。
食品の場合は不純物や複数の種類の成分が生成されても、カラダに害さえなければ問題はありませんが、今まで原油から化学合成で作られていた成分は純度が99.9%以上もが求められる、純粋な化学物質とならなくてはなりません。 これはそう簡単にはいかない、高度な技術革命と言えるレベルの技術です。

とはいえ、例えばすでにBGといった石油から作られていた化学合成成分も、バイオ技術による大量生産が可能なところまで進んできています。(ただしコストが高く、まだまだ前面切り替えにまでは到達していません) 他にも、ユーザーの皆さんには「合成界面活性剤」といった言葉で避けられる傾向のあった原料も、すでにバイオで作られる技術が完成の域に近づいています。
そうなると、こういった原料だけで設計された化粧品が生まれるのも、ほん近い未来ということになりますね。

こういったコンセプトの化粧品設計を、今回のお題にした「バイオ化粧品」という言葉に置き換えてみたというわけでした。

SDGsが大きなトレンドとなっていますが、これもまさに化粧品業界にとっては大きなSDGsへの取り組み。 さらには「合成」「石油由来」といったPRに使われやすい言葉も、近い将来は死語になるかもしれません。
ユーザーの皆さんにとっては、非常に頼もしい未来ということでしょうか。

というわけで今回の記事はここまでですが、これはユーザーの皆さんにとっての大きな期待ということになります。
一方で、私達業界人が考えなくてはいけないのは、まさに「困難な差別化」の時代が待ち受けているということです。
今は「〇〇フリー」という言葉だけでユーザーさんにアピールできる付加価値の化粧品もあるかもしれませんが、これが一様に画一化されてしまえばそれでは製品の差別化にはなり得なくなる時代がやってきます。(またあらたな〇〇フリーという言葉が生まれるかもしれませんが・・・)

これは私達技術者が、しっかりと考えていかないといけない未来ということでしょうか。
また今年も、6月には化粧品技術者・企画者の方々を対照にした技術セミナーのオファーを頂いています。(後日、案内させて頂く予定です)
その時にでも、ぜひとも行き詰っている課題があれば議論しましょう。

ということで、また次週。

by.美里 康人

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