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コラーゲンとペプチド、そして幹細胞~前編

美里康人

細胞因子に着目したコスメが多い近年。
その中でもペプチドの進化はめざましいものがありますが
効果の理屈を知っておきましょうというお話。

 

■なぜコラーゲン?

前回、コラーゲンの話題をとりあげましたが
まだ皆さんの記憶が新鮮なうちに
繋がりのあるお話へと引き継いでいきましょう。

コラーゲンといえば
ユーザーさんが期待する美容効果は
なんといってもアンチエイジング

ただ、皆さんの成分のメカニズムに対する理解は
なんとなく
「コラーゲンは真皮の構成成分だからだよね。」
まぁ、こういうことだと思います。

ただ、しかし
皮膚を構成している繊維状の成分を
皮膚表面に塗布したからといって
それが皮膚の組織として同化することなどあり得ないのは
きっとなんとなく理解されているはず。

分かりやすくちょっと大胆な述べ方をしますと
シルクの糸を皮膚の上に貼り付けておけば
時間とともに皮膚の組織と一体化してしまう…。
実際にはそんなSFマンガのような
ことなわけですよね。

え? めちゃくちゃな屁理屈ですか?

いえいえ
シルクはコラーゲンタンパクの繊維で構成されいて
化粧品成分の「シルクコラーゲン」
皆さんもよくご存じのはずですね。

まぁ、もちろん目に見える絹糸は
分子の大きさが圧倒的に大きい繊維で
化粧品成分のシルクコラーゲンは
加水分解といって化学的に分子を小さく分解した
素材ではありますが
それでもアミノ酸が数百万個から
せいぜい数十万個レベルの大きさですから
皮膚内に取り込まれないことに
全く変わりはありません。

おおげさに表現したように感じるかもしれませんが
言うなれば
水もゆっくりとしか通さない細かい網目の布の上に
大きな岩を乗せたか
それとも砂を乗せたかという
五十歩百歩なレベルの大きさの話であって
もっと目に見えないレベルにまで小さくしないと
根本的な解決にはなってない問題と
考えれば良いわけです。

いえいえ、だからといって
コラーゲンは化粧品成分として無意味という
今日のお話ではないんです。

ではなぜ数十年にもおよぶコスメの歴史で
ずっとコラーゲンが使い続けられているのでしょう?

ここが今回の話題の焦点。

■コラーゲンに期待する本質は?

さてでは、コラーゲンに何を期待して
化粧品会社は使ってきているのでしょう?

それは、人間の皮膚のコラーゲン組織と
同じ成分というだけではありません。
それはつまり
コラーゲンを組織しているタンパク質には
細胞の活性に通じる細胞因子が末端にくっついている
可能性があるからですね。

この因子とは、いわばスイッチと考えれば分かりやすいです。
このスイッチは
皮膚細胞のひとつひとつにアンテナのように刺さっている
受容体にくっついた時に
様々な細胞活性に繋がる指令が発動するんですね。

で、これらはすべてタンパク質で構成されています。

話は戻りますが
こうしてあらゆる動植物から取り出した細胞のタンパク質には
細胞が生きていくための因子が
くっついている可能性があるというわけです。

つまり、このくっついている因子が
なんらかのヒトの皮膚の細胞を活性化する可能性に
期待して使われているんですね。

■DNA因子を選ぶことはできる?

ここまでお読み頂いたユーザーさんは
「そか! なら、もっと凄い効果があるんだよね!!」
と、お花畑になったかもしれません。

ぶった斬るようでまことに申し訳ないのですが…
細胞にくっついている因子には
細胞が生活する上での
凄いたくさんの種類の機能を担う因子があります。

例えば
加齢を制御する因子や
様々な種類の酵素を活性化したり
はたまた活性を制御したり
ヒアルロン酸を作るコントロールをする因子や
脂肪細胞を作り出す因子などなどなどなど…。
それはもう色んな機能に関わる因子がくっついています。

その中でも皆さんがもっとも大好きな因子は
「上皮細胞増殖因子」と呼ばれる
表皮の細胞をどんどん新たに作り出す
指令を出している因子ですね。

EGFといえばすぐにお分かりでしょう。

とまぁ、たくさん存在する中のこのひとつに
うまくアタってくれれば良いですが
これって、宝くじにアタるみたいなもの…。

また、他の因子もたくさんあるわけですから
化粧品の目的とは後ろ向きな因子もたくさんあるわけで。

例えば、脂肪細胞を作り出す酵素活性を高める因子にアタったとしたら…。

■ブタや魚、そして植物でもいいの?

ちょっとおどしみたいになってしまいましたが
いわばお肌がキレイになる要素とは
無意味な因子がほとんどと考えればよいというお話でした。

しかし、話はそれだけで終わりません。

まだここまでのお話は
「ヒトのコラーゲンだったとしたら」
という大前提がありますね。

「あっ………!」

そう、実際の化粧品成分のコラーゲンは
ヒトから採取したものではなかったですよね(苦笑)

う~~ん…ここはもう
私が述べるよりも皆さんに想像して頂くとして
割愛しましょうかね。

少なくてもシルクといった
虫由来の繊維から採取されたコラーゲンタンパクに
何らかの効果が期待ができるかといえば
それはさすがにムリがありそうです。

ヒトの細胞が持つ因子と
虫の細胞の因子が同じわけはないですよね(苦笑)

この辺りが
前回のお話の最後の方で出てきた
医療分野の結果論と繋がっているという
お話でした。
(やはり哺乳動物のコラーゲンでないと、ヒトの細胞受容体は同類と認識してくれない)

■だからペプチド

ここまでのお話は
ユーザーの皆さん的には
ガックリ肩を落とすようななりゆきとなってますが
ここからは前を向いて歩きましょう。

こういった背景をご理解頂いた上で
これに一躍有名になったiPS細胞の技術と合いまみえてくる技術が
化粧品業界に進出してくるわけです。

このiPS細胞の難しいお話は飛ばしますが
いわば、ここまで書いてきた様々な細胞因子を
機能を限定して選んで取り出し
なおかつそれを増殖させて
あらたに細胞組織を作り出すという技術です。

例えば、ガン細胞の成長を抑制する細胞因子があるとすれば
その因子をどこかから取り出し
増殖させて患部に定着させられれば
ガンが治る可能性があるというイメージです。

とはいえ、非常にたくさんの因子があるなかで
その機能を持つ因子だけを作り出すことは
非常に困難を極めるのは分かりますよね。

そこで、一つの細胞からあらゆる機能を持つ因子を
作り出す役目をしているのがiPS細胞です。

というわけで
先進的なアンチエイジング成分として一世を風靡したのが
「ペプチド」
ペプチドとはタンパク質の小さな構造のものですが
分子を小さくしただけのコラーゲンと違って
細胞の活性化をコントロールしている因子と
そっくりなものを作り出したと
理解すれば分かりやすいです。

しかも、今時の技術はこの因子を
きちんと機能ごとに分けて作られていると謳われていますので
これは期待するしかないですね。

因子のことを英語で「グロスファクター」といいますので
原料説明では◯GFとつけられています。
EGF・FGF・HGF…と
色んなペプチドがありますね。

 

 

出典:wikipedia

いやまぁしかし、本当ならば…というお話ですが。

ということで、後編は幹細胞へと続き
そしてその期待への評価はいかに?
という話題へと進展していきます。

では、また。

by.美里 康人

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