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アトピーと自己防衛(FILE No.083)

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◆◆FILE No.083 / 2008年7月配信◆◆

アトピーと自己防衛

先週(2008年7月後半頃)は、ちょっとした業界の事件がありました。

一部の新聞やTVなどメディアでも報道がありましたが
輸入化粧品から配合してはいけないステロイド成分が検出され
摘発を受けました。

食品の業界と同様
また輸入商品かといった感がありますが
この商品を輸入販売していた業者に対し
市場の商品を回収するよう通達があったようです。

販売名称が「NOATO」ということからも分るとおり
アトピーの方を対象とした化粧品を意識しており
使用した方からあまりに効果があるとの通報が多いため
国民生活センターの方で調査した結果
ステロイド成分の検出に至ったとのこと。

日本ではこうしたステロイド成分を化粧品に配合したり
また、例え微量であっても
原料などに含まれていても違反となります。

諸外国ではまだまだ規制の甘いお国があり
そうしたところから
輸入された商品が日本に入ってくるのですが
行政の方でも全ての輸入商品に対して
成分検査を行うわけにもいかず
こうした悪徳商品が日本に入ってくるのは
後を絶ちません。

*

さて、実は今回のこの一件。
偶然私も騒ぎの渦の少し近いところに触れることとなり
こうした怪しいアトピー商品の摘発や
アトピーに悩む消費者に対して
アトピービジネスにおける現状の情報提供を行っている
皮膚科医の先生と接触する機会がありました。

その先生の活動の場であるブログがこちら

『燃える皮膚科医のスキンケア・カフェ』
http://skinnext.cocolog-nifty.com/blog/
※2021年8月現在、リンク切れとなっています。

昨今の皮膚科診療の現状というと
ステロイド・反ステロイドといったことに偏り
互いの治療方針を批判する皮膚科医師が多いなかそういったことに拘らずに
患者さんの立場になって心のケアも非常に大切にされ
今の医療業界を改革しようと
大変意欲的な皮膚科の先生です。

大きな大学病院の専門医でもなければ
権威ある教授の先生でもありませんが
こうして本気で患者さんの立場になって考えてくれる
こんな皮膚科医の先生がおられることは
大変心強いですね。

業界は違えど
こうして化粧品の業界で啓蒙活動を行っている自分としては
非常に共感を覚える面が多く
意見の交換をさせていただくきっかけとなりました。

* * *

ところで、今回のこの事件に触れるにあたって
自分は皮膚科医師でもなんでもありませんが
化粧品業界の技術者の立場で
皆さんにアドバイスすることがあるとすれば

「アトピー症状の出ている箇所に一切のコスメを使わない。」

ということです。

ちまたにはアトピーの方を対象にした
怪しい化粧品が氾濫していますが
アトピーに有効性のある化粧品などありません。
というか
化粧品には薬効があってはならないのです。

アトピーを改善するのは
皮膚科の専門の先生にお任せ下さい。
素人判断でコスメで治そうなどとは決して考えないで下さい。

もちろん
いまだ原因も適切な治療法もわかっていないアトピーですから
皮膚科にかかってもなかなか改善されない
そんなことがあるのも分かっています。
ステロイド治療がうまくいかず
反動でひどいことになるケースがあるのも知っています。
結果的に良い皮膚科を探してさすらい
病院ジプシーに陥って悩むこともよく分っています。

でも、アトピーの治療は皮膚科の先生を信頼するしかありません。
それがステロイド治療であろうと
漢方薬による治療であろうとも
先生を信頼することが改善の第一歩です。

自分も小さい頃からひどいアトピーに悩まされてきた患者のひとりで
顔全体がケロイド様にまで発展した経験者ですが
このような状態の時には
一切のコスメどころか
石鹸はおろか、水による洗浄すらままならないのが事実です。

発症している箇所にコスメを使うことは
悪い方向にこそむかえど
改善の方向に向かうことは決してありません。

もちろん、症状が治まっている時であれば構いません。
むしろ日常的なスキンケアや保湿ケアは
アトピーを改善するのに大切な心構えですから。

最後に今一度念を押しておきましょう。

今やアトピービジネスで暴利を貪ろうとする化粧品が
ちまたにあふれ返っています。
でも、自分の身は自分で守るしかありません。
商品に違法性があるなしに関わらず。

アトピーが発症しているときに
決して化粧品を使わないで下さい。

泥棒から身を守るために、家にしっかりと鍵をかける。
ひったくり犯罪から身を守るために、手にカバンを持たない。

全く同じことなのです。

<2021年8月追記>
上記記事を執筆から10年余り。。。
皮膚科学の世界も化粧品技術の世界も日々進歩し、例えば「セラミド」とアトピー性皮膚炎との因果関係は、当時と比べると少しずつ解明されてきています。
アトピー性皮膚炎に苦しむ方にとって、光明となる研究が進み、まやかし商品が市場から淘汰されることを願います。

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