ビークラボ株式会社のサイトはこちら

日本の香りの文化(FILE No.081)

メルマガアーカイブ

美里康人

2006年にスタートしたメールマガジンのアーカイブページ。
『コスメの真実・裏側』は、このメルマガがきっかけで出版された書籍でした。

◆◆FILE No.081 / 2008年6月配信◆◆

日本の香りの文化

さて、以前にも香料のお話の時に少し書きましたが
今回は日本人の香りに対する嗜好や感覚のお話を
香水の発祥であるヨーロッパと日本の文化の違いを含めて
書き進めることにします。

*

だいたいにおいて日本人というのは
賢明で非常に研究熱心なお国柄だというのは
皆さんもよくご存知なところ。

例えば前回もとりあげたように
化粧品技術においてもそれは顕著で
日本の化粧品技術・皮膚科学技術というのは
世界的にみてもトップレベル。

そういう意味では
欧米のコスメと日本のコスメを比較すると
やはり日本の大手ブランドのコスメは
一歩も二歩も先んじていると思っていただいてよいでしょう。

ただ日本人は全てにおいて優れているかというと
意外なところに難点があったりするのです。
それは、ちょっと頭でっかちなところ。

その代表の一つが
同じ香粧品の仲間でも香水やオーデコロンなど
香りに関するカテゴリーです。
いつものように最初にズバっと斬り込みを入れるとすると

日本人の香りの感覚は、全くもってタコです(笑)

失礼しました。
感覚が敏感・鈍感」という意味ではありません。
いわゆる「感性」が劣ると言われています。
おそらく、純粋な意味においての臭覚の感覚という意味では
非常に清潔好きな日本の文化ですから
日本人も優れているとは思うのです。

なので、ここでいう「感性」というのは
例えば「よい香り」「好きな香り」を選び抜く
そんな感性といえば分りやすいかもしれませんね。

これはその原因をたどっていくと
国の文化にあるという事ができます。

その文化の違いとして大きく2点があげられます。

・元来、日本人は体臭が少ない。
・ヨーロッパでは、五感の教育を小さい頃から受ける。

この2点になりますが
まず第一の、体臭の問題。
この根底は、食文化にあります。

肉を主食としてきた欧米の方々は
動物性タンパクをたくさん摂取するために
体から代謝される分泌液の臭いが強く
日本人に比較すると体臭が強いとされています。
それゆえ、日常的にその体臭を隠すために
香水を身にまとうのがひとつの常識となっています。

ですから、ヨーロッパでは物心がつくと
エチケットとして香りを身に着けることを覚えますし
もちろん、それに対して親が
ナマイキだ等と叱ったりすることなどありません。

昨今は日本人も焼肉をよく食べますし
それに加えてニンニクを食材によく利用します。
そのため
むしろ欧米人よりも体臭の強い方が多くなりました。

香りのない無香料コスメを追求されるのも悪くないことですが
コスメはそういった役目も担っていることを
忘れてはなりません。

*

次に2番目の五感に対する教育です。

ヨーロッパでは
臭覚が生活にとって非常に重要な意味をしめていることを
きちんと学校で学びます。
つまり人に意志を伝達するための
大切なツールのひとつであるということを教わります。

一般的には

・口で表現する言葉
・耳で聞く音
・体で表現するボディランゲージ
この三つはカンタンに思い浮かびますが
これに付随して
臭覚で自己を表現することが大切だと学びます。

悪い臭いで相手に不快感を与えるのは絶対に×ですし
相手に好まれたいと思う時には香りでうったえる。
そして自分の個性を表現するのにも
香りを取り入れる。

つまり、香りは常にひとつの表現方法として
意識しているわけです。

こうした環境で育つわけですから
必然的に臭覚に対する感性が磨かれます。

このように
フランスをはじめとするヨーロッパの方々と日本人とでは
根本的に臭覚に対する熟成度が異なるわけです。

それに加え香粧品メーカーが
日本人の体臭の少なさに合わせた
微香性オーデコロンや無香料化粧品などを流行らせたものですから
香りの文化は衰える一方。
発展することがないままに
現在に至ってしまったのが現状なのです。

この傾向は
日本の香り商品をみることで理解することができます。

日本製の香水が売れた試しがないのは大きな事実ですし
日本の香り商品の文化はヨーロッパの方からみると
非常にレベルが低いと酷評されています。

その例をあげていきますと

・トイレや車・お部屋の香水は、安くてありきたりの香りが売れる。
・日本のコスメは生活に根付いた香りの商品が多く、売れやすい。

1番目の身の回りの香り商品は、皆さんもお気づきのことでしょう。
柑橘系・キンモクセイ・ラベンダー・ムスクといった
誰でも耳にしたことのある分かりやすい香りが
相変わらず売れ線商品です。

そして2番目のコスメですが
日本で売れるコスメの香りの傾向は
必ず、柑橘系・フルーツ・お線香
そして石鹸の香りと相場が決まっています。

「そんな事はないわよっ!失礼な!」

そんな声が聞こえてきそうですが

いえいえ、実は化粧品に使われている香料
もちろん、オレンジやフルーツの香り
そのまんまのコスメもたくさん市場に並んでいますし
これについてはもってのほかですが
いい香りのついた高級な日本のコスメの香料にも必ず
フルーツやお線香・石鹸といった香りをイメージする香りの素材が
隠し味として使われているんですね。

これら食や生活に密着する香り
そして単一な香り素材でできた商品は
ヨーロッパにおいてはとてもじゃないですが
『おシャレな香り』の部類には入らない香りとして扱われれます。

つまり
フルーツの香りのついたコスメやトイレタリー
そしてラベンダー・ローズなどといった単一な香りがつけられた商品を
「あぁ、いい香りだ。」なんて言ってるうちは
まだまだ発展途上人だという事になりますね。
こうした商品が売れるのは
日本独自の文化だということが言えます。

実はラベンダーも
男性向けの香り素材だって事
みなさんはご存知でしたか?(笑)

*

最後になりますが
現在アロマセラピーをはじめとして
日本では精油を使って香りを楽しむといった事が
ちょっとしたブームになっていますが
でも実際のところヨーロッパにおいては
あくまでもこれは医療の分野で利用されているのであって
「香りを楽しむ」ためのモノではありません。

香りで自己を表現する、そして楽しむために女性・男性が愛用するものは
あくまでも合成や天然の香料を何十種類も組み合わせ
複雑に調合・創作された香水なのです。

アロマで香りを楽しむことを悪いとは思ってもいませんが
それは香りへの興味を深めていく登竜門であり
あくまでも入り口に立ったというだけと
理解していただきたいと思うのです。

単一の植物から抽出された精油には
香りの創造性や複雑な奥行き・ストーリーといったものは
決して存在しないことを知っておいて下さい。

というか
こういったお話をこうして私が書いている時点で
日本はすでに立ち遅れた香り文化ということの
証しなのですが(苦笑)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です