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アロマセラピーが抱える大問題(FILE No.079)

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◆◆FILE No.079 / 2008年5月配信◆◆

アロマセラピーが抱える大問題

今回は掲題のお話ですが
私は過去に化粧品の調香開発の仕事にたずさわっていた事もあって
人一倍「香り」が好きですし
生活の随所で香りの充実感を意識して
日々を送っているという感じです。

ただ、もともと日本人は体臭が非常に少ないこともあり
欧米に比べると
香りの文化は非常に遅れています。
まだまだ香水を常用している方は非常にまれですし
お土産やプレゼントで人から贈られることはあっても
なかなか自分で好みの香りの香水を選んでいる方は
少ないのが現状です。

こんな日本人の香りの文化にまつわるお話は別の項に譲るとして
昨今、掲題のアロマセラピストの資格を取る方が
非常に多くなりました。
私のアカデミーの生徒さんの中にも受講経験者が多く
かなりの方がこの資格というか
認定を受けておられる方がおられます。

ただ残念ながら
うちのアカデミーを修了する頃には
「アレはなんだったんだろう・・・」
口々にこうおっしゃられてご卒業されますが(苦笑)

* * *

さて、お話を戻して
ヨーロッパで育まれたこのアロマセラピー療法
日本でもかなりの勢いで普及してきたのですが
ここでも日本人の商魂たくましさが露呈し
業界としてはひどい状況になっています。

*

まずは大きな問題としては
技術者のセラピストに対して
国家資格としての検定制度がない事です。

それに便乗してかあらゆる民間団体が存在します。
ざっとあげるだけでもこんな感じ。

・日本アロマコーディネーター協会
・日本芳香療法協会
・(社)日本アロマ環境協会
・日本ホリスティックアロマセラピー協会
・日本アロマアーチスト協会
・日本ハーバルアロマセラピスト協会
・日本メディカルアロマテラピー協会
・・・etc
他にも発祥であるヨーロッパの団体と連携をとり

・ナード・アロマテラピー協会
・インターナショナルアロマレメディーコーディネーター協会
・日仏フィト・アロマテラピー協会
と、仰々しい名前の団体が名を連ねています。
こうなるとどれが本命なのか
さっぱり意味不明といった感じです。

いずれの団体も共通の傾向としては
ユーザーにさも政府管轄の公的機関であるかのような
そんなイメージを植えつけるために
必ずといっていいほど「社団法人」「NPO法人」などといった
『非営利性』を強調しているのが特長です。

とにかくこのアロマセラピストというのは国家資格ではありませんから
様々な団体が勝手にマニュアルやカリキュラムを作成し
それにのっとって「○級」といった等級を設けて
それらしい認定証を発行しているというのが現状です。

実際問題、ほとんどの団体の認定試験においては
まず90%以上の方が認定を受けているのが実際のところ。
逆にいうと認定を受けられなかった方はほとんどいないわけで・・・。

こんな状況では
『アロマセラピスト』を名乗る方がそこらじゅうに
うじゃうじゃ存在するのも当然の事ですね。

ちなみにうちのアカデミー受講者の皆さんも
口を揃えておっしゃるのは

「セラピスト認定を受けたのはいいけど、職能としては価値も需要もなかった。」

でした。
アロマサロンや精油を販売するショップが乱立するのも
当然の事なんですね(苦笑)

*

それはさておき、もうひとつの問題点が今日の本題となります。

もともとアロマセラピーというのは
植物などから採取されたエッセンシャルオイルを
加温したり水に分散させて噴霧したり
またはお湯に浮かべてその香りを嗅いだり
つまりは芳香成分を揮散させてその香りを嗅ぎ
体内に取り入れる事でなんらかの効能を期待する
そういった臭覚からの療法のひとつです。

また、そこには精神的・心理的な癒し効果も
かなりの部分で関与しています。

ところが皆さんのご自宅の周りにもある
アロマを取り入れたサロンをご覧になって下さい。
そこで行われている事が今回の問題点。

そう、フェイシャルやボディトリートメントといった
精油を使用した皮膚へのマッサージ
もしくは塗布療法です。
現在これは、かなりのサロンさんで行われています。

しかし、アロマサロンで扱っている
もしくはショップで販売されているエッセンシャルオイルは
実は「芳香用」の精油で
雑貨品扱いのいわゆる天然香料です。
これはお肌に塗布する事は法的に認められていません。

皮膚に塗布する目的の商品に使用される「香気素材」
つまり天然のエッセンシャルオイルや合成香料は
消費者の安全性を確保するための公的自主規制機関
『国際香粧品香料協会』(IFRA)によって規制を受けています。

たとえエッセンシャルオイルでも
その成分中に含まれるアレルギー成分などは
配合が禁止・制限されています。

例えば皆さんもよくご存知なのが
柑橘類(レモンやベルガモット)のエッセンシャルオイルに含まれ
光感作アレルギーの恐れの高いベルガプテンなどです。

もちろんですが、日本の化粧品に配合されている香料
そしてエッセンシャルオイルにいたるまで
全てこの規制をクリアしたモノが使われています。

ですから、化粧品などに使われるオレンジやレモン
ベルガモットなどのエッセンシャルオイルは
きちんと香料メーカーによって
そういったリスクの高い成分は除去されているというわけです。

つまり、同じエッセンシャルオイル・合成香料でも
芳香剤やアロマなどの雑貨用・食品用・香粧品用と
それぞれに使用用途によって精製分けされているんですね。

もうお分かりですね。
香粧品業界にとってこんなに大切な事が
アロマサロンで使われるエッセンシャルオイルでは
見過ごされてしまっているのです。

これは非常に危険なことと言わざるを得ません。

確かに皮膚に塗布する事で
火傷の治癒促進や肌荒れなど
効用が得られるエッセンシャルオイルも存在しますし
薬効成分が含まれる植物も少なくないので
そこに期待を寄せる気持ちは十分に理解できます。

しかしながら、そこはあくまでも医学の分野であって
医学・薬学の知識がない人間が安易に立ち入るところではありません。
いわゆる『素人療法』になります。

それもこれも問題の核心は
アロマセラピストの認定資格が
いまだ国家資格として確立されていない点にあります。
早期にこの問題を是正していかなくては
大きな問題を招くことになるでしょう。

しかしながら、現在この問題点について
仮に誰かが疑問を呈したとしても
アロマの業界の方々は既に自分達の確固たる地位
そして築き上げられたプライドもあるでしょうから
簡単には受け入れ難いのではないでしょうか。

でも、実際にこれで被害をこうむるのは
消費者である皆さんです。
これを決して忘れてはいけません。

ちなみに当プロジェクトではこの問題を重要視し
関わるアロマサロンさんについては
「アロマセラピー用エッセンシャルオイル」
「塗布ケア・マッサージケア用エッセンシャルオイル」
を、別々に使用するよう推進しています。

<2021年8月追記>
「雑貨扱いの精油を肌に塗布する」現状は、10年以上経っても改善されている様子は見受けられないように思います。
正しく使えば生活を豊かにしてくれるアロマテラピーですが、間違った使い方で、悲しい出来事に発展しないようお気を付けください!

アロマと化粧品の精油・香料は違う 

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