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新ビオレと泡勝負してみた件

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美里康人

あなたは、まだ自分で泡立てて洗顔していますか?
完全にポンプフォームの時代は来るのか?

少し前に、洗顔製品が変わりつつあるといった話題の記事を掲載しました。
読み逃された方は、コチラ。

石けんフリー洗顔 ソープレスソープとは
https://cosmetic-web.jp/column/soapless/

で、この時は世の中の洗顔製品はほぼ石けん系の処方がほとんどで、この歴史が変わろうとしているといった内容でした。
変化をしようとしているのは石けんに残された難点である刺激の問題で、さらに低刺激な洗顔製品に変わっていこうとしているというお話でしたね。
とはいえ、石けんにとって代われるいい洗浄成分となるとなかなか少ないため、そう一気に入れ替わっていくことはままならないといった解説をしてきました。

で、実はこの時には触れなかったのですが、もうこれからは手や泡立てネットを使って自分で泡を立てて顔を洗う時代も終わるかもしれないという、そんなお話をしようと思います。

つまり、この改革とともに洗顔製品は大きく勢力図が変わっていくのではないか?というお話。

ポンプフォーム洗顔が少なかった理由

さて、皆さんはまだ手や泡立てネットを使って洗顔製品を泡立て、お顔を洗っていますか?
アンケートをとったわけではありませんので厳密なことは言えませんが、おそらくかなりの方が「泡立てる」という行為をしなくなっているように思います。
これは手洗いの洗浄剤がまさにそうで、もうほとんど手洗い時に液体やペースト状の手洗い製品を使うことはなくなりましたね。

ただ、そうは言ってもまだまだ大手ブランドさんを含め、泡で出てくるポンプフォーム容器の洗顔製品は市場にさほど多くはありません。
実は、これには理由があります。

そのひとつが、ポンプフォーム容器で泡立てて吐出するには、石けん系の処方では泡立ち・泡質・使用感が満たしにくいからです。

ひとつひとつ解説していきますと、まず泡立ち泡質
これはまずポンプ容器に入れる必要がある液状の石けんは、泡の質に濃密さがあまりなく、ワシャワシャと泡立ちは良いのですが、お顔を洗うには泡質が荒すぎてしまうことに要因があります。
これは手洗いの液体石けんをみれば分かりやすいのですが、皆さんも手洗い液体石けんは泡が荒らく、ワシャワシャとしているのをみる経験をされていると思います。

分かりやすい表現で説明をすれば、これは洗顔クリームのように濃密な処方では液状にできないためです。
成分面からもう少し詳しく説明すると、洗顔クリームのようにステアリン酸ミリスチン酸といった脂肪酸の石けんを作ればこの濃密さは出てくるのですが、それだと液状にできないためポンプフォーム容器に適さないというわけです。

液体石けんの全成分には出てきませんが、液体石けんの「カリ石けん素地液」の脂肪酸はほとんどがラウリン酸・ヤシ油脂肪酸からできていますので、泡立ちは良いですが濃密な泡にならないんですね。

これは石けんが持つもともとの性質ですので、これを解決する方法はいまだないのが現状ということです。
もしも仮にステアリン酸やミリスチン酸の石けんで液状にするとすれば、洗顔クリームよりもうんと石けんの濃度を薄くしなければなりませんので、結果的にこれでお顔をしっかり洗える製品は作れないことになります。

そしてこの問題はお顔を洗った時の使用感にも大きく影響し、洗顔クリームのようにしっとりした洗い上がりの製品にすることはできず、お顔がパキパキと突っ張ってしまう製品しかできないという難点にも繋がっています。

他にも冬場の低温の状態では濁ったり固まってしまうという品質の問題もあり、これらは超えられない壁となっていたわけです。

新たな洗浄剤の進化

さて、ここまでのお話を踏まえ、以前の記事でも解説したように、こうした石けんを超える洗浄剤の開発はどんどん進んできて、記事の中で整理した新たな洗浄剤が液体のポンプフォーム洗顔を切り開いてくれたということになります。

とはいえ、まだまだ洗顔クリームに完全にとって変わられるまでには至らず、いまだ洗顔クリームを泡だてネットを使って濃密な泡を作り、洗顔をされている方も多いかと思います。
それは、もうひとつの課題があったからです。
ポンプフォームで出てくる泡は、まだ洗顔クリームに比べると“濃密泡とは言えない”いう現状があったためです。

上では石けん系洗顔の課題のお話をしてきましたが、実はまだまだ新たな低刺激洗浄剤にも課題が残されています。
それは上で書いたように泡質が洗顔クリームに及ばないという課題ですが、これは処方設計に大きな課題があり、石けんのように高濃度にできない点がこの壁を作っています。

例えば具体的に説明するとすれば、低刺激と言われるアミノ酸系の洗浄剤は、平均して10%以上の高濃度で液状にすることはできません。
この濃度以上にすると低温で固まってしまったり、はたまたポンプフォーム容器からキレイな泡になって出てこなくなるという問題を持っています。

これは他の洗浄成分にしても同じで、石けんに比べるとこの濃度を満たすことが非常に困難なのですね。
特にクレンジングオイルをお使いの方などは、お顔にオイルが残っていますので、ダブルクレンジングの際に泡がすぐに消えてしまい、二度洗いしないといけない事態を招きます。

こうした課題を乗り越えて、新たな洗顔製品の未来は切り開かれるのでしょうか?
その光明を、次の項で説明していきます。

容器による解決の糸口

ようやく掲題の本題に入っていきますが、ここ数年でこれらの課題を解決する方策がみつかりつつあります。
その取り組みが、以前にも旧Twitterでつぶやいた花王さんのビオレ新シリーズのポンプフォーム洗顔です。

これはここまで解説してきた新たな洗浄剤の処方設計に加え、泡の濃密さを解決するポンプフォーム容器の進化です。
TVCMでも精力的に宣伝されていますね。

私も早々に購入して使ってみましたが、まず目に入っても痛くないほど低刺激な設計になっていますし、泡の質もかなりよく、下手に洗顔クリームを手で泡立てるよりもはるかに濃密な泡で出てきます。
そのため、お顔に乗せた時のクッション性も絶妙になっています。
石けん系の洗顔クリームに比べるとまだ洗い流す際のヌルつきが残りがちですが、それも洗い流す時間を少し延ばしてあげればサッパリとした洗い上がりになりますね。

これらの改善は、上で述べたポンプフォーム容器のポンプ設計の進化に大きな功績があると言っても過言ではありません。
今のところこれは日本の技術でしか達成できていないそうで、非常に大きな進化と言えそうです。

さぁ、こうなると私達OEMの化粧品業界も、指をくわえてみているわけにはいきませんね。

そしてテスト!

新しいビオレの洗顔フォームを見ますと、おそらく自社独自のポンプを使用しているのはすぐに見てとれます。
泡が花びらのカタチのように出てくる特殊な設計になっていますので、独自開発とみられます。
もちろん、このポンプと相性の良い中身の処方設計も、緻密にされていることでしょう。
ここは、さすがと言うしかありません。

実は私達も、少し前からこの取り組みにはチャレンジしてきていました。
ひとつの方法として、ガスを封入したエアゾールの濃密な泡立ち・・・という方法もありますが、これだとコストが掛かり過ぎて、ドラッグストア系のコスメでは太刀打ちできません。
もちろん、私達のようなOEM企業では自社独自で容器の開発など不可能ですが、そこは容器メーカーさんにしつこいほどお願いし、いよいよ泡の質は洗顔クリームに手が届くところにまで達してきました。

今回は、そのテストの様子を少し明かしましょう。

泡の質をテストする方法にも色々とありますが、大手ブランドさんと異なって私達レベルでは、前回のクレンジングの試験のように、できるだけ安価な方法に頼ってテストを行います。

泡立ちテスト01

その結果のひとつ目がこちら。

泡立ちテスト

試験方法の詳細は割愛しますが、密度があまりない泡はどんどんと泡同士がくっつきあって早く大きくなっていくことを利用し、時間経過による泡粒子の増大を観察しています。
もちろん、実際に使用してみての濃密感と連携して、テストを実施します。

どれがどういう容器かはノウハウですので明かせませんが、最近の洗浄剤としては低刺激と洗い落ち、そしてヌルつき感がもっともないと言われている処方設計で統一し、テストを行います。
一番左が数年前から国産容器企業さんの中でもっとも泡が濃密とされてきた泡です。
微妙な違いですが、画像を拡大するとその差が見てとれ、真ん中と右は泡の密度がさらに改善されています。

ちょっとこれでは分かりづらく、今度は泡を吐出してすぐの状態を、スコープを使用して泡の状態を観察します。
泡は白いままだと認識が難しいため、あえて色を着けて見やすくします。

泡立ちテスト02

そのテスト結果がこちら。

泡立ち03

この画像では分かりづらいですが、スマホ画像でも拡大して見て頂ければ明らかに新しいポンプ容器は泡の大きさが異なり、濃密さに違いが出ています。
使ってみるとテスト以上にその差が分かり、あきらかにお顔に乗せてなじませる際のクッション性と濃密感が違います。

ここまでくると、もう自分で泡立てる洗顔クリームは必要ないと言っても過言ではありません。
洗顔フォームが変わる時代が、目の前に見えてきたと感じました。

もちろん、それにはこの泡がすぐに消えてしまわないよう、洗浄剤の濃度を限界まで高める必要がありますし、ここは私達研究者の腕のみせどころと言えます。
品質に影響せずにこの新しいポンプ容器を活かせる処方設計に、どんどん研究者の方たちが取り組んでいくことで未来が見えてくるのではないでしょうか。

そしてビオレの容器と対決

今回の話題はここまでですが、せっかくお題でも発令したように、大手ブランドさんの最新の容器に届くのか?というところは、もっとも気になるところでしょう。
ここをクリアできなければ、私達OEM業界の研究者が手掛ける中小のコアな市販メーカーさんの洗顔フォームに、期待が持てなくなりますからね!

泡立ちテスト05

さぁ、ポンプの性能のテストですので、上でテストを行った同じ中身に入れ替えて、いざテストです。

泡立ちテスト06

実は使用感では既にしっかりと差を感じていましたが、結構ドキドキしました。
うん、超えることができました!
いえいえ、中身はビオレと全く異なりますので、ビオレが悪かったという意味ではありませんよ。
くれぐれも誤解なく。

つまりOEM業界でも手に入る新しい容器で、新しい処方設計を組んであげれば、あのビオレと肩を並べる製品、はたまた超えられる濃密泡の製品を開発できることが示唆されたという結果ですね。
良い容器が入手できなければ、超える事は不可能ですからね(苦笑)

結果はこういうことで嬉しい結果となりましたが、だからといって実は花王さんの容器が劣っているということではないフォローをしておきましょう。

ビオレは詰替え用が設定されており、コスパよく、なおかつSDGsな製品を目指しています。
なので、泡の細かさに関しては、容器を何度も継続して使えることを目指して設計されていると思われます。

上記のテストで私達が入手して使用した新しいポンプは、おそらくずっと詰め替えて永続的に使用することは不可と思われます。
なぜなら、泡を作る部分のメッシュが異例に細かいため、長く使用しているとその部分に洗浄剤が付着して目詰まりを起こしてくるためです。
完全に出てこなくなることはないにせよ、5回も6回も中身を継ぎ足すと泡の粒が大きくなったり、ポンピングができなくなるといった課題に直面すると推察されています。

何度までなら詰め替えが可能なのか、はたまた処方設計の改良によってこれが解決されるのか、まだまだ道のりは長いかもしれませんが、世の中の洗顔フォームが改革を迎えるには切磋琢磨のチャレンジが必要ということですね。
ご覧になっている技術者さんがおられれば、新たなチャレンジを試みられて下さい。

固形石けんで体を洗っていた時代が、ポンプタイプのボディソープにとって変わった時代の経緯を思い起こし、洗顔を泡立てる時代は終わるのかもしれませんね。
もしもメーカーさんがこちらをご覧になれていてご興味を持たれましたら、遠慮なくサンプルをご依頼下さいませ。

ちょこっと営業を入れつつ、今回はここまででまた次回。

by.美里 康人

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