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「果実水」と「生体水」

生体水001

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美里康人
フラワー水の代表はローズウォーター
他にも果実水がありますが
生体水なるものとの違いは?

 

果実水の現状

お題をご覧頂いて、なんのことかすぐに理解できた方は素晴らしいです。
今回の化粧品業界最大の展示会「CITE JAPAN」で、私のセンサーに引っ掛かったのはこれともうひとつだけでした。

で、お題に書いたように「果実水」「フラワー水」といえばすでに皆さんも目にしたことがある成分で、特に目新しさもありません。
代表的で一番よく目にするのは、「ローズウォーター」だったり「ダマスクバラ花水」ですね。
化粧水で、精製水を使わずにこのフラワー水だけを使ったコスメも市場でよく見掛けます。
成分の一番前にこの成分名が表示されるので、他社コスメと差別化できるというストーリーに使われることも多い成分です。

特に使用感が変わったわけでもなく、メリットとしてはバラの精油を配合してなくてもほんのりとバラの香りがするということを活かして、化粧品によく使われています。

他にもレモン果実水やリンゴ果実水など果物由来のものだったり、ハッカ水なんてのもあります。
でも、その果実のいい香りがするわけでもなく、あまり市場性はない感じの成分ですね。
あまり原料としてメーカーさんに採用されないため、すでに製造・販売を止めてしまった原料メーカーさんも多くなっているのが現状です。

それが「生体水」とどう違うのか、この後述べていきます。

果実水ってなんなの?

ここで復習になります。
以前にこちらのブログ記事でも説明したように、この果実水やフラワー水というのは、果実や花から香料に使用する精油を抽出するプロセスで、最初に水蒸気で花や葉っぱを洗浄する水を回収したものと考えれば分かりやすいです。
水蒸気は100℃以上の高温なことから微量の精油も含まれていますので、その中に含まれた精油もそこから取り出します。

とはいえ、あくまでたくさんの蒸気にさらしてその洗浄水をそのまま回収しているだけですので、ほぼほぼ水だけというのがこの果実水です。
つまりは、微量の残り香成分以外は、他に何も含まれていません
もともとは捨てられていた洗浄水を、わずかに香りがするために化粧品に活用したらどうか?というのが、この成分というわけです。

ですので、化粧水として塗布してもなんの使用感もありません。
ほんのりとなんらかの残り香がするだけで、成分的には精製水とほぼ同じです。

生体水???

生体水002

で、今回の展示会で目に留まったのが「生体水」なる素材です。
すでに化粧品原料としてINCI登録もあります。

原料をPRするコンセプトとしては果実水とさほど変わらず、植物の香りが含まれているので水代わりに配合すれば香りがするとか、抗菌成分を含んでいるために防腐剤が不要といったコンセプトの素材でした。
なので、足を止める技術者もほとんどおられませんでした。
確かに、パっとみてこれまでの果実水・フラワー水とどこが異なるのか、よく分かりませんから。

しかし、よくよくこの素材の由来をみると、上の蒸留水(洗浄水)とは全く異なるものであることが分かりました。

どこが違うか?

これは簡単なことです。
分かりやすく言えば、ようは「果汁」そのものと考えればよいんですね。

例えば「オレンジ生体水」だったとしたら、オレンジの果実を手でギューっと絞り、そこからカスや種といった固形物を除去した果汁ということになります。
実際には物理的に力を加えて絞り出すわけではなく、真空にすることで果実の中に含まれる水分がすべて排出されるのを回収しています。
そういった特殊な装置があるんですね。
もちろん、果実水のように加熱もしませんので、低温抽出ということになります。

さすがに固形物が残っているのはマズいですので、これをキレイに濾過してあげれば透明でキレイな果汁が得られるということですね。

おそらくオレンジであれば、オレンジの色も残っているものと推察できます。
さらには、この原料メーカーさんがPRしている通り、オレンジのいい香りもすることでしょう。

これ、身の周りで分かりやすいのは、濃縮還元ではない100%の生絞りジュース「ポンジュース」です。
アレを濾過して固形分をもっとキレイに除去すれば、いわば「みかん生体水」になるということ。
つまりは、植物の中に含んでいる水分をそのまま絞り出した、生の果汁ということです。
ここで面白いのは、このジュースのお値段は皆さんもご存じの通り、飲料として販売されているレベルですので、原料としてはめちゃくちゃお安いわけです。

一般的に化粧品に使われる植物エキスから考えると、もう1/100以下なんていう破格なレベルのコストです。
そりゃ、エキスと違って抽出するわけではなく絞っただけですから、当然のことなのですが。

見方のアプローチを変えてみる

ここまで書けば、もう皆さんもこれまでの果実水やフラワー水とは全く異なる素材ということはお分かり頂けたかと思います。
さて、コレを原料メーカーさんのアピールどおり、香り成分の代替として活用するだけでよいのでしょうか?と考えたのが、今回の私の開発センサー反応です。

この先はあまり書かないで、これ位にしておきましょう。

「この植物のジュースには何が含まれているだろうか?」

この観点で考えれば、ちょっと面白いことが見えてきます。
例えば果汁って、飲むと甘かったり、酸っぱかったり・・・あれれ???

そしてコレを、精製水代わりの水として使用すればどういうことになるか、興味は尽きません。

さらには、色んな植物をこうした真空抽出すると、様々な生体水が得られると想像できますね。
精製水を使わずにこうした生体水を使うことで、化粧水のあらたな道が切り開けそうな予感がしています。

ではまた次週。

by.美里 康人

2 COMMENTS

通りすがり

物理的に搾るわけではなく減圧して取り出す。ということは何気圧まで下げて何度にするのかわかりませんが、その条件下で気化する成分だけが出てくるわけですよね。
水の回収が主目的なら水より沸点が低い揮発性化合物は一緒に出てくるけど、水より沸点が高い化合物はほとんど出てこないのでは?そうだとすると果実水とあまり変わらない気がするけどどうなんだろう。

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美里

>通りすがり様

コメント、ありがとうございます。
まさに自分も全く同じ事に気付き、実はしばらく思慮していて記事を保留していたんです。
「だから、香り成分としての利用」なんだろうな。。。と。

ところがその後、減圧圧力が低い条件であるならば生体組織内の水分を「絞り出す」、いわゆる脱水という事になりますので、もしもそうなら考え方が全く変わってきて面白いのではないかと考え出して記事にしてみました。

まだこの部分は装置の検証ができていませんし確実な事は言えませんが、食品の世界ではジュースでそういった技術があるそうですので、まだ期待は捨てていないといったところでしょうか。
もしも情報をお持ちでしたら、アドバイス頂ければ幸いです。

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