化粧品開発のご相談はビークラボへ >>

腐る化粧品?

腐る化粧品

まもなく大型連休がやってくる憂鬱な4月下旬…な、美里です。
こんにちは。

明日は、またまた慣れない仕事のセミナーです。
元来の本職が本職だけに
いまだ人前でしゃべる仕事は苦手…。

根が関西人ですから
プライベートの場でギャグを飛ばすのは得意なんですけどねぇ。

特に技術者の方々をお相手の講義。
堅苦しいセミナーの中で
まさかダジャレを折り込むわけにもいきませんしね(苦笑)

で、そんな今日は、明日の講義の内容の中で
コスメユーザーの皆様方にも参考になる話題を抜き出してみます。

今回の講義内容は、化粧品の防腐剤設計について

考えてみれば本来は
なぜそんな化粧品技術者として処方設計の基礎的な事を今さら…
という印象かもしれませんね、皆さんにとっては。

なんと、実は
ここ数年、化粧品の業界では
微生物汚染が要因となった回収事例が増えているんですね。

言い方を変えると
化粧品が「腐っていた」という事。

厚労省管轄のPMDA(医薬品医療機器総合機構)
こちらのサイトには市場からの回収報告が網羅されています。
ユーザーの皆さんでも普通に閲覧が可能です。

で、この事例を見れば分かるように
この近代において化粧品が腐るなんて事態は異常とも言え

「何かが起きている」

そう考えなければなりません。

ましてこの報告内容は
メーカーさんにおいて市場に出荷された後に社内で発覚し
自ら自主的に回収したケースも含まれてはいますが
大半は消費者からのクレームや市場トラブルが発端で判明した
市場における事故がほとんどです。

つまり、ユーザーの皆さんが購入されて手にしたら、品質異常だった・・・と。

今や化粧品の業界は、皮膚の細胞レベルに留まらずDNA因子にまで研究が及び
アンチエイジングやシワ改善に取り組む時代です。
メイクアイテムにおいても
立体構造を取る複合パウダーによって、視覚的に光をコントロールするといった
そんな技術進化の時代に突入しているわけです。

特に日本の香粧品技術は世界でもトップレベル。
自負を持って良いこの業界です。

にも拘わらず、商品品質のもっとも基本的な事である「腐らない」事すら守られていないとは・・・。
同じ技術者として、落胆せずにはおれません。

あ、いや・・・決して、この業界の技術全体を卑下しようというのではありません。
まだまだ中堅企業や工場の中には
業界全体の技術進歩とはかけ離れたチグハグな部分が残されていて
その現実が、そこかしこに露呈し始めているというのが今という事でしょう。

こうした現実は、決して化粧品業界に限った事ではありません。
先般も建築業界の技術者の方と歓談の場があり
色んな業界裏話をしていたのですが
この世界でも同様の事態が起きているそうで。

大手ゼネコンの開発部門においては
世界でも類を見ない革新技術や新素材がどんどんと開発されており
日々、素晴らしい進化で邁進しています。

一方で、相応の専門職としての技能がなくても
そこそこの建物ができあがってしまう建材がどんどんと開発され
アっという間に誰でも建築物を立てられてしまうというわけです。

そのため、専門職としての技能を学ぼうとしない職人さんが
非常に多いという事です。
つまり、面倒な基礎学問を避けて年齢を重ねている職人が
非常に増えているのだそうです。

話が逸れましたが
化粧品の処方開発の世界でも、同様の事が起きているのが現実。

とはいえ、これは技術者の方々のせいとは言い切れないのも事実です。
それは、偏った消費者ニーズの影響と言えるかもしれません。

今回の、化粧品における防腐設計も然りです。
悲しい事に中堅以下の化粧品メーカーでは
パラベンを防腐剤として採用していてはお商売にならない時代なんですね。

いわば、それでは商品が売れないというわけです。

例え、実はパラベンがもっとも安全性が高かろうとも
逆に、他の代替防腐剤成分の皮膚リスクが高かろうとも
それは無関係。

最近ではフェノキシエタノールですら
使わずに処方設計しなくてはならないのが現実です。

ここにどれだけの意味があるのか?
難しいところです。

確かに現実は、化粧品ユーザーさんの中には過敏肌の方も多く
現代人はアレルギーも多様化しています。
そのため、とにかく肌リスクを避けた新しい処方設計に取り組むのが至上命題です。
これは紛れもない事実で、処方設計技術者としての腕のみせどころでもあります。

しかしながら、それがパラベンやフェノキシエタノールを安易に排除し
菌を殺すための他の成分で設計すれば良いのか?と問えば
それは違うと言わねばなりませんね。

全成分表示でユーザーさんの目を欺くだけの安直な処方設計
結果的に大きな皮膚被害を及ぼすか
もしくは、結果的に「腐る」事故に繋がるのはやむを得ません。

こうした現状が、結果として化粧品が腐ってしまうという
あり得ない時代錯誤を引き起こしているのかもしれませんね。

明日は、これを打開するための具体的な技術や情報交換を行う場になります。
皆さんの目にできないお話しで、申し訳ありませんでした。

この美容業界が、ユーザーの皆様に信頼を置いて頂ける業界になりますよう
まだまだ老いた体にムチ打って頑張ります。

ではでは。

by.美里 康人

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です