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大学病院皮膚科症例報告より

化粧品アレルギー

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美里康人

総合病院の皮膚科研究室から
年間のトラブル症例のまとめが報告されています

まず最初に、以下の記事は東邦大学医学部皮膚科学講座によってまとめられて論文化されたものの内容について、分かりやすく解説しています。
論文は著作権が設定されていますので、病状など詳細は以下の報告論文を入手の上で参照されて下さい。

・2019年度化粧品のパッチテスト結果~直近20 年間の集計との比較~
http://www.jcss.jp/journal/pdf/4504/45-4_317.pdf

日本香粧品学会
http://www.jcss.jp/

皮膚が弱い体質

twitterのつぶやきをご覧になられた方は周知ですが、今回の話題はこのお仕事をしている自分が実はいつも接触皮膚炎に悩まされているという、周りからすれば想像し得ない事実があるというお話です。

まぁ、このユーザーさん向けの啓もう活動を20年もお付き合い頂いている読者の方はよくご存じのことと思いますが、実は私自身が子供の頃からのひどいアトピー体質で、それ以外にも接触皮膚炎や花粉症・植物アレルギーを何度も体験してきて、とにかく典型的な皮膚の虚弱体質ということなのです。

例えば、まだ金属アレルギーが一般的に知られていなかった中学生の頃から、腕時計のステンレスバンドで手首に真っ赤な輪ができていたり、業界に入ってからも酸化チタンを使った日焼け止めを製造していて全身に発疹が出たりと、それはひどい目にあってきています。(チタンは金属アレルギーがないというのは間違いですよ)

そんなどうにもならない虚弱体質皮膚との長いお付き合いですので、皮膚の疾病に対してはある意味慣れっこになっていて、業界技術者でもあることから症状に対しての対応方法も至って沈着冷静です。
そういう意味でtwitterでもつぶやいた通り、白髪が膨大になった頃から使用している白髪染め製品で塗布部位周辺が毎度にわたってひどくカブれるのも、いわば日常的なこととして家族以外の人間に話すこともありませんでした。

ところが、たまたま今まで使ったことがなかった製品を使用したところ、定番になっていたカブレが出なかったことで今回の記事となった次第です。
業界人ゆえに、どの成分が違うのだろうかと少し気になりましたが、まぁそこは調べたところでどうなることでもなし。 使用に支障がなければ次回から製品を乗り換えていけば良いだけと解釈しています。

とはいえ、ヘアカラーで起きやすい接触皮膚炎要因としては、もっとも定番とされている「パラフェニレンジアミン」があります。 これはこれまでの製品と同じく使われていましたので、この成分に対して抵抗を示したのではないことだけは確かめました。
おそらく、成分の浸透を促す製剤面に違いがあるのだろうな、とは思っています。

皮膚被害症例の実例はいかに?

化粧品アレルギー

というわけで今回の記事を書くことにした発端はこういうことでしたが、せっかくなので以前にも記事にした皮膚の健康被害の現状について報告も出ていますので、ユーザーの皆さん、そして私達技術者も念頭に置いておくべき実情について解説していきたいと思います。

前回の記事をご覧になれていない方は、こちらを先にご参照下さい。

過去記事
『アレルギー症例報告から』
https://cosmetic-web.jp/column/allergies01/

そして今回の記事執筆にあたっては、冒頭にあげた東邦大学医学部の報告論文を参考にさせて頂きました。
この20年間の症例報告も盛り込んで所見を述べられていますので、非常に興味深い考察もみられます。

最初に、東邦大学医療センター大森病院にて実施された2019年~2020年一年間のパッチテスト症例がまとめられましたので、その話題の特筆すべき点について説明していきましょう。

とはいえ、ユーザーの皆さんは業界で何か恐ろしい事態が起きているのかと、疑心暗鬼で読み進めておられるかもしれませんが、実際は化粧品の使用で起きている事故はごく少数ですので、冷静かつ誤解のないように読まれて下さい。

院内での検証パッチテスト(以下、PT)に応じて下さった症例は54件とのこと。
つまり、カブレや発疹といった皮膚被害が起きて病院に通院された方の中から、PTを実施した方の数という意味です。
この中で化粧品による接触皮膚炎が要因と特定された症例数は、6症例(11%)とのことです。

特定が報告された成分をみていきましょう。

 ・(VP/エイコセン)コポリマー

これは前回までの報告ではなかった、あらたな症例ですね。
業界の前例としても初めてではないかと思います。(抜け落ちがありましたら、申し訳ありません)

メイク関係の顔料の分散剤として配合されている、ポリマー素材です。
皮膜形成をしてくれるため、マスカラや口紅などによく使われています。
特殊な製造機械を使わずに最終製品を生産することを可能にするための、単色のプレミックスベースが工場さん各社に供給されていることから、各社製品に採用が広がっています。
アレルゲンとして特定されていますので、アレルギー性接触皮膚炎ということになります。

 ・エチルアスコルビン酸

こちらは前回も記事で取り上げたビタミンC誘導体の美白成分で、こちらの病院でも症例が出ています。 これだけ症例が出揃ってくると、もう完全にアレルギー成分としてほぼ確定されて良いでしょう。
効果が高い分、VC誘導体でトラブルが起きた経験のある方は注意されて下さい。

 ・アルブチン

こちらも有名な美白有効成分ですが、少数ながら毎年のように症例として報告される成分。 ハイドロキノンの配糖体(ブドウ糖を結合させた成分)ですので、症例報告の多いハイドロキノンとともによく発症が確認されていますね。

 ・香料アレルギー

こちらもアレルギー感作報告は定石で、特に光感作による症例(塗布部位が日光に晒されることで発症)は毎年数例は報告されています。
ただ、また後ほど下で解説致しますが、病院やお医者様はご存じでない化粧品業界のある背景があり、ここは特筆すべき点があります。
ユーザーの皆さんはご承知かと思いますが、市場では香料や精油などで香りのつけられた製品は数十分の1にまで減少していますので、過去の症例とは比較にならないほど減少していなければならないはずです。
ここはまた以下で解説します。

 ・ヘアカラー(パラフェニレンジアミン)~2例

こちらも毎年のように症例報告があがってくる定番のヘアカラー。 製品にも必ずパッチテストを実施されてから使用するよう、注意書きがなされていますね。
成分は冒頭で触れたパラフェニレンジアミン(PPD)がよく特定されており、かなりの該当例がみられています。
私自身の痒みを伴う症状はこの成分かどうかは分かりませんが、掻きむしったりしないよう注意して2~3日もすれば症状は治まりますので、いつものこととして納得して使っています。
ただ、そのうちにアナフィラキシーといった恐ろしい反動が来る可能性もないわけではなく、内心はドキドキして使っているという次第です。

というわけで、実際に成分が特定された症例はこの数ですので、さほど多くないといえばそうとも言えます。
とはいえ、毎年のように相変わらず数字にあがってくる成分は常連と化していますので、ユーザーの皆さんは意識されて、成分に該当する製品を使用する場合は、面倒でも使用前のパッチテストを実行されることをオススメします。
スキンケアやメイク製品は私のように見えない部位ではないだけに、慎重にお願いしたいところです。

まぁ、食品の業界では早くから自主的にアレルギー成分は公に公開されていますし、該当される方々は購入の際には含まれている成分について気を使う習慣も一般的になっています。
いずれ化粧品の業界もそうなる必要性を感じますし、もともと全成分の表記はそういったところに活用されるべきものだと思います。

香料被害が相変わらずの背景

さて、上で触れた香り成分での化粧品被害の症例数が昔とさほど変わらずに起きてる点について、私なりの見方を取り上げてみます。

私達のように現場に従事する人間はよく知ることですが、市場の化粧品で香りがつけられた製品は、昔から比べると数%レベルにまで激減しています。
それだけでなく、今も香りがついている大手ブランドさんの製品は、すでにアレルギーや光感作が特定された香料成分はしっかりと除去されていますので、そのリスクはうんと低減しているのが当然です。

にも拘わらず、相変わらず発症事例が多いのはなぜでしょうか?

その現場にいる経験談からコメントさせて頂ければ、実はおそろしいことが業界で起きている可能性を取り上げます。
まず現実を言えば、実は化粧品業界(いわば工場)に香料を提供頂いていた香料会社は、大手工場を除いてかなりの数で取り扱いを辞めています。 この業界の現状においてすでに商売にならないからです。
それだけ、この20年ほどで香料を採用する化粧品メーカーさんが激減してしまったためです。

この香料業界にとって衰退してしまった現状がある中で、この数年で氾濫してきた「無香料コスメ」とは差別化したいからとの思惑で、再び香りをつけた製品が市場に増えてきています。 いわば逆の現象です。
しかしながら、そうは言ってもやはりユーザーさんが警戒する「香料」の表記は、できるだけしたくないわけです。 つまりは、植物由来の「精油(エッセンシャルオイル)」で香りをつける製品が、市場に拡大しているという状況になっています。
ひとつには、精油には何百種類にもおよぶ成分が含まれていますので、香料表記の合成香料に比較するとリスクはうんと高い現実がある点です。

もちろん、この「精油」もきちんとした化粧品向けの香料を扱っていた香料メーカーさんから供給されたモノを採用している範疇であれば、「IFRA」という香料業界の自主基準に則ってリスク成分はしっかりと除去されていますので、トラブルとなる可能性はうんと少ないはずなのです。

ところが、です。
植物から採取された香料としての精油は、化粧品用香料メーカー以外のあらゆるところに存在しています。 極端な話では、ソニプラといったバラエティショップで売られている、雑貨のアロマ精油もあります。 他にも、例えば柑橘系ではレモンやオレンジといった飴に使われている、食品メーカー向けの精油もあります。

実際、どこから入手されたのか化粧品企画会社からジャスミンの香料が持ち込まれたこともありますし、キンモクセイの精油を配合して欲しいと要望されたこともあります。
あ・・・ユーザーの皆さんはご存じないかもしれませんが、ジャスミンの精油は化粧品には使えませんし、キンモクセイの精油はそれ自体が存在しません。

そんな中、このニーズに便乗してか香料業界の知識がないのにこうした原料を取り扱う業者がどんどんと増えています
なぜなら上で書いたように、皮膚に適用される香料へのリスク回避の規制は、あくまで香料業界の「自主規制」であって法律で縛られているのではないためです。

上で記した、シロウトが聞いてもひどい話ほどではなくても、例えば皆さんもよくご存じの「ダマスクバラ花油」

これは本来の「ホンモノ」の精油は、【ブルガリアローズオイル】や【ダマスクローズオイル】といった品名で、正式に香料業界に流通している輸入香料です。
ところが化粧品の表示名称では、数百万円の値がついているこのブルガリア産の天然ローズ油でなくても、ダマスク種のバラの花から採取したローズ油であれば亜種であっても使用できるのです。
化粧品用の原料の基準として、特に品質に指定があるわけでもありませんので。
実際、日本で栽培されているダマスク種のローズ油がすでに出回っています。

こうなると、ユーザーさんのアレルギー被害を避けるためのIFRAといった規制など、どこ吹く風状態というわけです。
実際に、IFRA規制どころか、ヨーロッパでは成分の注意表記が必要なこういったアレルギーリスク成分のことすらもご存じない新参の香料業者さんと、何度かお目に掛かっています。
化粧品に使えるかどうか以前の問題で、驚くより他にありません。

今は日本でも香料に配合されている場合は表示すべき成分としてリストアップされていますので、皆さんもお手元の製品に含まれていないか調べてみて下さい。
化学名ですので化粧品の表示名称とは異なるものもあり、不明な場合はメーカーさんに問い合わせされるとよいでしょう。

アレルギーテスト標準香料)Fragrance mix 1
ケイ皮アルコール:cinnamic alcohol
 ケイ皮アルデヒド:cinnamic aldehyde
 ヒドロキシシトロネラール:hydroxycitronellal
 アミルシンナミルアルデヒド:amylcinnamaldehyde
 ゲラニオール:geraniol
 オイゲノール:euginol
 イソオイゲノール:isoeuginol
 オークモス:oakmosse absolute

アレルギーテスト標準香料)Fragrance mix 2
シトロネロール:Citronellol
 シトラール:Citral
 クマリン:Coumarin
 リーラル:Lyral
 α-ヘキシルシンナミックアルデヒド:Alpha-hexylcinnamicaldehyde
 ファルネソール:Farnesol

これらは、業界でアレルギー前例が複数に渡って出たことで、パッチテストの確認用としてリスト化されたものです。

そして時代とともに変わってきたこと

最後にこちらの論文でも述べられていますが、この20年のパッチテスト結果の集計を並べてみていくと、興味深い所見がみられています。
それは「皮膚刺激」による受診の患者さんは増えている傾向です。

誤解なきようにして頂きたいのですが、上までの解説で書いてきたのは「アレルギー」「接触皮膚炎」の症状が確認されたケースのデータであって、刺激によってお肌が荒れたり紅斑などの症状が局所に出て受診された皮膚被害とは、また別になります。
理解が難しいかもしれませんが、分かりやすい事例を言えばこういうケースです。

ケースA)
エタノールを少し含んだ化粧水を使ったら顔全体が真っ赤になって、発疹も出てしまった
ケースB)
エタノールの含有量が多い育毛剤が目に入ってしまい、眼球が真っ赤になって視界が遮られてしまった

ケースAはアレルギーによる接触皮膚炎で、症状は数日続くことがありますし、塗布したところだけでなくカラダ中に発症するケースもよくみられます。
一方のケースBは、エタノールといった強い溶剤が弱い粘膜に付着したことで刺激となり、その症状がひどく出てしまった一次刺激被害のケースです。
洗顔を使ったら肌荒れを起こしたといったケースも、これに該当します。

つまり成分によるアレルギーといった症状ではなかった診断結果にせよ、Bのケースのような症例がここ数年で非常に増えているのだそうです。
特に洗顔やボディソープといった洗浄剤によって刺激を受けているケースが多く、受診数の半数は洗浄剤による刺激の症状との判定で、「洗う」という行為が刺激に繋がりやすいことが読み取れます。
これは洗顔時にこすり過ぎたり、またキレイにし過ぎることで刺激を受けて肌荒れを起こしているといったことが多いのではないかと推測されています。
また、全体の傾向として皮膚のバリア機能が低下しているのではないかといった指摘もあります。

正確なことは分かりませんが、スキンケア行動だけでなく、エアコンといった日常環境による皮膚の乾燥化、空気汚染・食文化といったことが影響を及ぼして皮膚が弱体化している可能性なども考えたりします。

今回の記事は以上ですが、なかなかユーザーの皆さんが目にすることのない業界向けの症例報告ですので、今後もこういったデータが研究機関から発表されれば、逐次報告していきたいと思います。
くれぐれも、上で記したように冷静かつ理路整然と受け止めて頂くようお願いして、今回の記事を終わりましょう。

ではまた次週。

by.美里 康人

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