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アレルギー症例報告から

アレルギー症例04

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美里康人
化粧品によるアレルギーは

ほとんどが「アレルギー性接触皮膚炎」
症例から注意すべき成分を知りましょう

 

今回の話題は少し小難しいお話になりますが、大きなニュースにもなる化粧品アレルギートラブルがここ10年ほどで多発していることから、ユーザーの皆さんにも参考になるかと考えて記事にしてみました。

化粧品のアレルギー調査

さて、日本には「日本医療研究会開発機構」(AMED)という組織があります。
国立研究開発法人ですので国が定めた研究組織になり、利益を得るための法人(企業)組織ではありません。
STAP細胞で有名になった理化学研究所も、ここに所属しています。

で、この日本医療研究会開発機構では、皮膚のアレルギーに関する研究と原因究明の活動も行っており、医薬品規制調和・評価事業が組織として運営されています。
「医薬品」となっていますが、薬機法上のその中でも消費者の現場で日々起きている大きなカテゴリーとして化粧品・医薬部外品もあげられ、多数の症例が報告されています。
中でも、化粧品は多数の成分を組み合せて設計されていることから、要因が有効成分のみに絞られる医薬品と違って原因の解明は非常に困難で、研究も困難を極めています。

「日本医療研究会開発機構」(AMED)って?

このお国の元で行う安全性の調査・研究事業に協力しているのは、まず病院が現在60院。
小さな皮膚科クリニックから国立大学の付属病院・都道府県立の総合病院まで、たくさんの病院が研究に参加されています。
他に化粧品業界では、花王さんやコーセーさん・資生堂さんなど、大手ブランドさんもテストに協力されています。

で、こういう研究事業から数多くの症例報告や研究報告の論文も、逐一発表されています。

ちょっと話は頓挫しますが、この「論文」という言葉をみると、皆さんはどういったイメージを持たれるでしょうか?
きっと凄い信ぴょう性が高く、難しいことが書いてあってよく分からないけれど、結論や結果の記述をみると「おぉ、そういうことなんだ!」と信用してしまうでしょうか。

もちろん、こういった公的機関から発表される論文や報告書は一切の企業法人とは無関係ですので、色メガネ的に偏向なことは記載されていない、確かな信ぴょう性を持っていることは間違いありません。
しかしながら、世に存在する論文や報告書の類いが全て信ぴょう性を持つわけではなく、見る前にきちんと精査してから自分に取り込まなくてはなりません。

分かりやすく言えば、私も含め研究者ならば誰だっていつでも論説は書けますし、どこかの雑誌を利用して投稿すれば、それは「論文」と言うことができます。
しかしながら、そんなのに公的価値などありません。

もっといえば、「研究者」という立場すらも曖昧で、どこで何を研究しているから研究者と呼ぶかは、この美容業界では決め事も基準もありません。
当の私だったところで、ただ単に職業として化粧品の処方設計・開発・研究をしてきただけのことです。
ひょっとしたらそれすらも、たった一年だけ従事してすぐに辞めちゃった職歴だったかもしれませんし、その化粧品会社でさえも、全ての仕事をたったひとりでこなす小さな化粧品会社だった可能性もあるわけです。
事実、そういう方も周りに何人もいます。
もちろん、さすがに自分の知り合いの中でそんな職歴で研究者と名乗ってる人間は、いませんが。

また、論文といっても、研究対象のブツを売りたいがための、宣伝的要素を多く含んだ偏向した報告論文やデータなんかも、たくさん出回っています。
私達の世界でも、時に原料メーカーさんの資料や論文にそういった類いのものが散見されます。
一般的に皆さんも知るサイエンスの世界では、「ネイチャー」というグローバルな雑誌の投稿論文が掲載審査が厳しく、信ぴょう性と価値が高いと言われています。

というわけで、「論文」と名付けられた書き物を読まれる際には、その出どころ(ソース)や執筆者の背景をよく調べることが大切というお話でした。

ちなみに私の後輩の中に、処方設計者として3年従事しただけで会社を辞め、界面活性剤の新しいメカニズム論文を執筆して自主出版したおバカさんがいましたよ。
もちろん当の本人は知る由もありませんが、業界からは総スカンを食らっていました。
インターネット利用のスキームと同様に、なんでもきちんと背景を調べるということは大切ですね。

アレルギー報告のまとめ

前置きというか、脱線もはなはだしいと指摘を受けそうですね。
今回のアレルギー報告の実態は短く端的なので、ここまで引き延ばしてみました(笑)

で、やっと本題です。

ここまで書いたように、今回とりあげさせて頂くアレルギー症例の報告は、一切のバイアスや偏向はありません。
純粋なアレルギー要因の解析のために集められた、症例とデータです。
その中から、皆さんが普段お使いの化粧品に関わる症例報告をピックアップしてみました。

まずは、ジャパニーズスタンダードアレルゲンの、2015年~2016年のパッチテスト陽性率報告です。
※パッチテストによりアレルゲンとなる物質を特定するための、指定検体成分

は、ほとんどの染毛剤(カラーリング剤)に使われている薬剤で、製品にもパッチテストを実施してからお使い下さいといった注意書が表記されているくらいですので、いわば経験されている方もかなり多い薬剤ですね。 下のデータでも実例があがっていますので、留意されるべき成分としては代表格です。
私自身ももこれに発症します。

 

 

は日本ではほぼ使われない防腐剤ですので、輸入コスメにこの成分があれば留意されれば良いでしょう。

もアレルギー成分としてオーソドックスで、やはり反応される方は多いことが分かります。
最近はこの香料ミックスの中に含まれている合成香料が単品で配合され、「香料」ではなく単品成分名が全成分に表記されていることもあります
これはヨーロッパ製品の注意表記に見習ったものですが、香料表記がないのにあきらかに香りがついている製品は、ご注意下さい。

も、なんだかんだいってもやはり陽性反応が出る方は多いという実例です。
ただし、これはミックスです。
おそらく陽性者のほとんどは、プロピルパラベン・ブチルパラベンに反応していると推察されますので、一般的なメチルパラベンではほとんど陽性者は出ないのではないかと思います。

は今ではほとんど使われなくなっていますので、気にされる必要はないでしょう。

次に、「皮膚安全性症例情報ネット(SSCI-Net:Skin Safety Case Information Network)」の登録医院や企業からの症例報告(2016~2017年)のまとめです。

こちらのデータが今回特にとりあげる必要性を感じ、皆さんも注目される実例ではないかと思います。

アレルギー症例03

③④⑤に関しては、上のデータにもあるように特筆すべき事象ではないでしょう。
対して、その他の成分が驚かれる方も多いのではないでしょうか。

まだまだ美白アイテムに採用されることの多いアルブチンが、意外なことにアレルギー症例が多く発生しています。
やはりハイドロキノン配糖体ということで、反応が出る方が多いのかもしれませんね。

そして少し前にtwitterでつぶやきましたが、最近話題になっている美白の海外製コスメシューティカル製品に採用されているのが、システアミン
コスメシューティカルズとは、海外では医師が開発・監修する調剤医薬品に近いカテゴリーのコスメのことで、日本のドクターズコスメと異なり、医師監修のもとにクリニックでしか買えないコスメのことです。
それがこの数字ですから、なにをかいわんやと感じてしまいます。

そして次いで複数の事例があったのが、以前にブログで記事にしたビタミンC誘導体の、エチルアスコルビン酸
実はこれに関しては2016年・2017年の2年間の数字ですが、その後も次々と事例報告があるようで、最新の臨床報告が近々にあるそうです。
国内のコスメでも使用例が多い成分ですので、皆さんも留意するべき成分と言えそうです。

最後のイソパラフィンも、意外と言えそうです。
前回のブログ記事で取り上げましたが、こうして今でも変わらず市販の鉱物油の中にリスキーなものも存在しているという証明です。

以上、再度念を押しますが、この症例はアレルギー報告ですので、以前も書いたように「出ない人は出ない、出る人は出る」という類いの病状です。
そのため、時にはアナフィラキシーといった恐ろしい症状を招くことがある反面、アレルゲンを持たない人にはなんの影響もない成分と言えます。

過剰に反応せずに正しくご理解頂くことをお願いして、この記事を閉めさせて頂きます。
また、くれぐれも上記のデータを他所に転載しないよう、お願い致します。
情報はすぐに流れてきますので、指摘や報告を受けることのないようご留意下さい。

ではまた次週。

by.美里 康人

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