週3で異なる目線の美容記事をお届け
美里康人
乾燥だけでなく、静電気も?というお話
今回は珍しくアトピー性皮膚炎についての話題ですが、これは疾病についての繊細な問題ですので、専門ではないこちらのブログであることを踏まえて、最初にこの記事のスタンスを記しておきたいと思います。
以前からこちらも記事でも書いているように、私自身が「アトピー」という言葉が一般的に認知されていない頃から患って苦労させられてきましたので、医療についてシロウトの私がこういった病いについての記事を安易に公の場で語ってはならないことや、化粧品技術者の立場で何かをオススメしたりといったことをしてはならないことと心得ています。
ですので、この皮膚病についてこのブログではほとんど触れずに運用してきています。
長年の経験上のお話や、自分が今はほとんど解決していることの経緯や対策法といった伝えたいこともありますし、なにより仕事柄皮膚の生業については専門の範囲なので、苦しんでおられるユーザーさんのために書きたいことも山ほどあるのですが、ここは自粛を心掛けています。
ということで今回の記事も、決して何かの商品や治癒方針、特によく議論されるステロイド問題についても一切触れておりませんので、お悩みの患者さんの解決になるような記事ではないこと、ご了承下さい。
とはいえ、できるだけお薬を使わずに毎年の季節を乗り切るためのちょっとした工夫のお話をとりあげますので、踏まえてお読み頂くと何かの助力になるかもしれません。
この記事の目次
できるだけお薬に頼らない
こんなお題をご覧頂くと、“食生活において・・・”などといったお話がよくあって想像されるかもしれませんが、さすがに普段の食生活とアトピー性皮膚炎との因果関係など、お医者様でも名言できる方はおられないと思いますので、そんなオカルトはお話は致しません。 一応、皮膚の生業を専門とする技術屋でもありますし。
というのも、これは既に検証されている通り、この疾病を患っておられる患者さんは、私も含め生まれた時にすでにこの皮膚炎を持っていることが特定されているからです。
私の子供もそうでしたし、他の方の子供さんが産時にお医者様に伝えられている言葉も、聞いていますし。
全てがそうとは言えませんが、大きく遺伝子要素と関係していることは間違いありません。
ですので、今の食生活の習慣を何か変えたからといって、解決になるとは思えません。
ただ、だからといってこの疾病を患ってしまったら、常にお薬を塗布する生活から脱却できないかと問われれば、自分はそうは思いません。
あれだけ苦しんだ30代から40代の頃を考えれば、今はほとんどステロイドといったお薬は常用していませんし。
ちなみに当時はこのような感じでした。(私の画像ではないです)
転載画像ですので、きちんとソースとリンクを示しておきます。
■FNN プライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/384125
最近お付き合いしている周りの方々には、「信じられない。 その頃の画像とかないの?」とかよく言われますが、そんなのがある訳がありません。
まさにリアルゾンビやエイリアン状態で、どこの世界にこんな状況で写真を撮るバカがいるのか・・・というお話ですよね。
社員旅行といった記念写真を撮る場面もありましたが、絶対に中には入りませんでしたから(苦笑)
こういった状態が5年以上も続きましたので、今の顔は別人と言っても過言ではないと言えます。
ちなみに、どうやって今の状態にまで改善されたのかよく聞かれるのですが、これについては医療分野のお話ですので取り上げません。
また、ほとんど人にお話ししたこともありませんし。
それは、専門外とはいえ皮膚の生業を仕事としている技術者としては、この疾病は人によって要因や症状が全く異なるのをよく知っているためです。
私の治療方法が他の患者さんに通用するとは思っていませんし、十人十色の治療方針があると思います。
ましてこのブログの題目の通り、オカルトな話は大嫌いですので(笑)
それはさておき、今はこういった状況が改善されたからと根治してわけではなく、アトピー性皮膚炎という病いは常に爆弾を抱えている状態と言えば分かりやすく、何かのキッカケで1ヶ月もあれば簡単にこの状況に戻されてしまうと考える必要があるんですね。
そのためにはキッカケを作らないことは非常に重要で、セラミドによるバリア層のケアといった花王さんの治験や提案は、かなり現実的かつ効果的なケアのひとつと言えます。
特にもっともこの「キッカケ」になる最大の敵は、「かゆみ」です。
掻きむしることで角質層が破壊され、一気に神経が露出してかゆみ症状は爆発し、奈落の底に落とされていきます。
当然ことながらこれは相乗されて痒みはどんどんとひどくなり、いよいよ手がつけられなくなるアトピー症状へと悪化させる、大きな要因になってしまうんですね。
しかもタチの悪いことに、この「掻きむしる」という行為は意識のある日常に行うのではなく、睡眠の間に無意識に起こってしまうのがポイントで、本人としては朝起きてみたら患部がひどいことになっていた・・・というのが、一般的な最悪ストーリーというわけです。
というわけで、この「痒みをセーブする」という改善策は非常に大きな要素で、平穏無事にアトピーと付き合っていく対策の、大きな柱と思っています。
で、いつ起こるか分からないこの「痒み」。
これをどうセーブすれば良いのか・・・というのが、今回のお題の核心になります。
長年、この皮膚病と付き合っていると、どういうタイミングでこの痒みが起きるのか、傾向が見えてきます。
つまり、この傾向を掴んでこれを先に取り除いてあげる対策が取れれば、防げるということになりますよね。
具体的な経験のお話を、ここから書いていきたいと思います。
汗
さて、ではこの痒みに繋がりやすいキッカケを作る要因について、ひとつひとつ説明していきたいと思います。
要点は3つです。
・汗
・静電気
・髪の毛
まず、汗です。
夏場はよく汗をかきますが、この時期にもよくアトピーが悪化する経験をします。
そして、汗の溜まりやすい関節や首といったところに症状が出やすいのは、やはり汗との関係性が深いことがよく分かります。
汗の成分に何か関係する物質が含まれているのか、それとも単に蒸れることで痒みに繋がるのか、専門ではないのでよく分かりませんが、いずれにしても汗がこういった場所に溜まらないようにすることは、意外と効果的な対策と思います。
そしてこの汗の対策で意外な盲点は、背中やお尻(下品ですいません!)といった箇所。
背中はさすがに簡単に手が届かないので掻きむしってしまうことはなく、自然に収まってしまうのですが、お尻に関しては容易に手が届くので、意外なことにここに症状が出てしまうことが多くあります。
着衣の中を簡単に拭き取れないので、ここに衣服に汗が溜まって蒸れることが多いと想像できます。
また、寝ている間も汗をかいてここは蒸れていますので、結構な危険ゾーンと言えるかもしれませんね。
ベビーパウダーといった汗がジュクジュクにならない方法で対策していると、痒みに繋がらない対策になると思います。
ただ、ここでこの業界の人間ならではのご注意をさせて頂くと、こうしたパウダーアイテムの中にも香りが付与されている商品があり、ここに香料が使われているケースがあります。
人によってはこれがさらに引き金になってしまうことも有り得ますので、十分に留意されて下さい。
静電気
以前にも寒くなってくると少し触れ、twitterでも時につぶやいていますが、冬場も症状を悪化させることが多いデンジャラスな季節ですね。
もっとも影響の大きな要因は、皆さんもよくご存知の「乾燥」ですが、これはもう周知のことですね。
これについてはまた最後に少し述べますが、あまり取り上げられないのが「静電気」。
カブレやムズムズといった要因ということで、よく合成繊維の衣服を避ける解説などを見ますが、アトピーにとっても大敵と推察できます。
カブレることはなくても、また大きくパチパチとしなくても、微弱な静電気が起きるだけでも患部の弱っている箇所はムズムズとします。
この“ムズムズ”がアトピーにとっては大敵。
ムズムズすると手がいって掻いてしまい、これが発火点になります。
昨今はヒートテックなどといった温かさに特化したアンダーウェアなどがありますが、これらの新技術の大半は合成繊維で設計されており、なおかつ空気を含んで熱が逃げないように設計されていますので、この空間のところに小さな静電気が常に起きて小さなムズ感から大きなムズ感へと発展していくことを経験します。
美容オイルや保湿クリーム・ボディミルクなどを塗布して油膜を作っておくと、静電気も起きにくく(伝わりにくく)なりますので対策になりますよ。
髪の毛
髪の毛が触れるおでこや頬に症状が出やすいトラブルも、よく経験すると思います。
私なんかは、一本の髪の毛(切れ毛)がお肌に乗っかっているだけでも、そこがムズムズしてきます。
カラダがムズ痒くて何かと思えば、肌着の下に切れ毛が紛れ込んでいたことをよく経験します。
無意識にその部位を掻きむしってしまうと、これまたキッカケとなって悪循環の元凶となってしまいます。
髪の毛に含まれる汗などの成分???などと想像したりしますが、単に物理的にムズムズさせるだけのことかもしれませんし、起因する要因はよく分かりません。
時にはその部分が蚊に刺された時のように、小さく膨れて痒くなることもあります。
本当に敏感が皮膚だなと実感させられますが、いずれにしても皮膚の神経に対して影響するのは間違いありません。
セラミドによるケア
というわけで、今回はアトピーを治す方法というのではなく、経験も踏まえて悪化させずにうまく付き合っていく対策についてまとめてみました。
これらは痒みを誘発させないための工夫なのですが、業界人としてもう少し踏み込んだ対策としては、やはりスキンケアは重要な要素ですね。
そういう意味で花王さんがもう何十年も取り組んできておられる「セラミドによるバリア層ケア」は非常に大事なポイントと言えますし、一般ユーザーさんが目にされることはほとんどないと思いますが、医療機関とも連携してかなりのアトピー性皮膚炎を改善するエビデンスを積み上げておられます。
とはいえ、皮膚の角質層に存在するセラミド質はかなりの量ですし、これを補うにはちょっと配合された化粧品を塗布したからといって、効果が期待できるものではありません。
いい成分なのは間違いありませんが、配合量が大きな鬼門。
セラミド(疑似構造の合成セラミドを含め)がバリア層をしっかりケアしてくれるほどの配合量になっているコスメをみつけるのは大変難しく、大半の製品は・・・(以下省略)。
まぁ、ここは名言を避けますが、もともとヒト型のセラミドはヒアルロン酸の2倍以上もする大変高価な成分ですので、せいぜい0.1%以下程度しか配合されないヒアルロン酸と並べて考えていけば参考になると思います。
100%の正確さとは言えませんが、配合量が明記されている化粧品メーカーさんであれば、少なくとも選択の参考にされるといいコスメにたどり着けるのではないでしょうか。
この辺りは、以前の記事もご参考に。
■【特集】セラミドクリームはオールOK?~前編
https://cosmetic-web.jp/column/seramide103/
■【特集】セラミドクリームはオールOK?~後編
https://cosmetic-web.jp/column/seramide104/
まだまだセラミドに関しては、バイオで生産する技術開発などが進んでおり、いずれコストもお安く供給されるようになって普通に高配合が可能になる時代が来ることでしょう。
私も、その技術進歩に大きな期待を寄せています。
そして最後に、実はもうひとつ私自身の対策として大きな方法があるのですが、これについてはステロイドフリーでのケアを心掛けておられる方など、個々人でそれぞれの考え方や症状の違いもありますので、あくまで私個人の対策法として読んで頂ければと思います。
基本的には私自身も今回の記事でも記してきたように、できるだけお薬に頼らないケアを目指しています。
とはいえ、そうはいっても年に幾度かは寝ている間に無意識のうちに患部を掻きむしってしまったりと、地雷を踏みそうになることがあります。
この「地雷を踏みそう」というのが大事で、長い付き合いになるとキッカケになりそうなタイミングが分かってくるのですね。 これはマズいな・・・と。
その時こそ、芽になる痒みの元凶を止めてあげることがもっとも重要なストッパーになると分かっていますので、そんな時はかゆみ止めとなるステロイドに頼ります。
もちろん常用はしませんし、このタイミングであれば1~2日あれば収まりますので、塗布回数も2・3回で済みます。
年間で押しなべても10回も使うかどうかレベルですので、かかりつけのお医者様から1本出して頂いても、数年はもつ程度の使用頻度です。
この段階で芽を潰してあげれば、難を逃れられています。
ちなみにtwitterでもつぶやきましたが、高濃度セラミドケアでの対策を昨年からチャレンジしてみていますが、このワンシーズンはとうとう一度もステロイドを必要としませんでした。
自分のカラダで臨床実験です(笑)
ボディケアに高濃度セラミドは非常に贅沢な使い方ですが、ここは申し訳ありません・・・仕事柄の役得と、ご容赦頂ければと思います。
いずれこういう時代がくると良いですね。
今回はここまでで、また次週。
by.美里 康人