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ニードルタイプの美顔器の是非!?(FILE No.093)

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◆◆FILE No.093 / 2009年1月配信◆◆

皮膚に穴を開ける

美顔器

今回は、「皮膚に穴を開ける」といったちょっと怖いお題ですが
そういうコンセプトによる美容ツールの話題です。

さすがに具体的な商品名を書くのはためらいましたので
あくまでもお話だけになりますが
何卒ごカンベンを。

さてこのアイテムですが
まずはどういったモノなのか
カンタンに説明しておきましょう。

形はいわゆる「コロコロ」とよく呼ばれる
粘着テープの着いた面をコロコロと転がして掃除する道具を
イメージしてもらえると分りやすいかもしれませんね。
お顔の上をコロコロと転がす、小さいモノを想像して下さい。
そしてそのローラーの部分が粘着剤ではなく
小さく細い針が無数に着いているものです。

そう。 つまり、その針(ニードルといいます)で
お肌の表面に小さな穴を無数に開けようという試みです。
それにより、手っ取り早く化粧品の浸透を果たそうというわけです。

実はこういったアイテムは
医療用具として皮膚科医に使われている「ダーマローラー」が有名です。
もちろん目的は全く同じですが
こちらは医療用器具で皮膚科で医師が使用するものです。
つまり今回のこの商品は
その家庭用バージョンということになります。

なんとなく商品のイメージができたところで
では、この商品に効果は期待できるのでしょうか?
また、問題はないのでしょうか?

まず効果のほどですが
これはさすがに皮膚科でも利用されているだけあって
有効成分の浸透補助・真皮を傷つけることによるコラーゲン造生効果など
さまざまなメリットがあるようです。
物理的に穴を開けることになるため
特に浸透性の向上には多大な期待が持てそうですね。

普通に考えると
人間の皮膚というのは強い皮膚圧がありますので
仮に目に見えない小さな穴を開けたところで
その瞬間に同時に成分を接触させないことには
皮膚圧によって穴がピッチリとふさがれてしまうと想像できるのですが
小さな穴というのは毛細管現象が働きますので
その後に塗布された成分が
開けられた穴の奥まで到達する可能性は
容易に想像することができます。

※毛細管現象とは?
https://site.ngk.co.jp/lab/no45/

では、その反面のデメリットは?ということになりますが
これは、ダーマローラーが医療用器具とされていることから
推測が可能かと思います。
つまり、医療の知識を持つ医師でないと
問題があるということです。

まずもっとも問題なのは
菌汚染の問題です。
仮にこのローラーに菌が付着していたらどうなるか?

このニードルの長さがどの程度かは明確ではありませんが
この商品の詳細説明と図解を見る限り
ばい菌などの侵入を防ぐための皮膚の大切なバリア層
つまり表皮層を通過するのは間違いないところでしょう。
私が実物を目にした限りでも
表皮層の厚みである0.3mm以上あったのは間違いありません。

ということは
そのばい菌が皮膚内に浸透し
そしてなんらかの悪さをする可能性は十分に予測できます。

さらにそれが病原菌であったならどうでしょうか?
皮膚に疾病をお持ちの方が使ったものを
誰かがその後に使ったとしたら???

そう、感染症の問題です。
なんとおそろしいこと・・・。

私達プロジェクトメンバーもついうっかり
みんなでコロコロとやっちゃいましたよ・・・。
コレって、なんの臆することもなく
興味本位でついうっかりやってしまいますね(苦笑)

当然一般の消費者が
きちんと全ての菌を殺す殺菌方法など知るはずもありませんね。

この商品の注意書きには
熱湯をかけて消毒して下さいなどと書かれてありますが
そんな程度のことで殺菌消毒などできるはずもありません。

そんな一瞬の90度程度のお湯やアルコールで
ビクともしない菌は世に無数にあります。
この販売責任者の方は皮膚科の先生なのですが
まさか、そんなことも知らないのでしょうか・・・。
あり得ないお話です(苦笑)

ギリギリ許せる範囲の最低レベルの殺菌方法でも
「70%アルコール水溶液による数分以上の浸漬」
ないしは
「煮沸滅菌30分以上」
でしょう。

*

そしてもう一つの問題点は
浸透させるために塗布する化粧品を限定していない点です。

つまり、有効成分以外の成分も全て浸透させてしまうということ。

推奨コスメをともに販売されていますが
それはあくまでも推奨であって
ユーザーがどんなコスメを使おうが自由なわけです。
ここは当然、きちんと薬剤に対する知識がある医師が選択し
塗布アイテムを選ぶべきです。

神経までもむき出しになっている表皮層以下の部分に
防腐剤やアレルギー成分など
不特定な成分が導入されるなんて
考えるだけでも恐ろしいことです。

現在化粧品業界においてめまぐるしく進化している浸透性技術は
きちんと特定の薬剤のみが浸透しやすいように
日々研究・処方開発されているのです。
あまりにもコスメ業界をバカにしてはいないでしょうか?

ということで
バッサリと斬ってしまいましたが
とにかくこういうアイテムで結果的に被害に合うのは消費者。
”ドクターなんちゃら”だからと安易に信用してはならないという
典型的な一例とあいなった一件でした。

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