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情報通と専門家(FILE No.080)

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◆◆FILE No.080 / 2008年6月配信◆◆

情報通と専門家

今回は少し漢字が多いですが
ガマンしてお読み下さいね(笑)

*

先日、化粧品業界技術者の研究成果
学術論文の発表講演会に行ってきました。

主催はこの業界の技術者で構成された
自主学術団体「日本香粧品学会」です。

スポンサーがあるわけではないので
純粋に化粧品技術や皮膚科学・素材開発など
最新技術の研究を促す目的で作られた学術的団体です。

こうした化粧品に関する技術団体は
他に「化粧品技術者会」というのがありますが
いずれも世界各国にある中立な技術団体組織と
連携を取って運営されています。

特に日本の香粧品技術は世界的に評価が非常に高く
常に各国の大手トップブランドや
皮膚科学学会においても注目を集めています。

今回も日本全国の化粧品技術者が一同に会して
盛大に開催されましたが
そこはさすがに世界的にもトップレベルの技術交流の場
聴講者には皮膚病理学の権威である医科大や薬科大の教授
大学病院や皮膚科医の先生方の顔もたくさん見えます。

もちろんこういった先生方の新しい学会発表もあり
ただそれだけでなく
発表・研究内容に対して疑念点や論理に不条理があると
遠慮なく質疑が行われる鬼気迫る場でもあるわけです。

中にはまだ未熟なメーカーさんの研究成果論文の報告もあり
忌憚のないツッコミにスゴスゴ・・・
といったシーンも随所に見受けられました。

当然のことながら
こうしたアカデミックな場においては
名だたる大手化粧品メーカーの発表者同士
遠慮なくツッコミを入れたりするわけですから
一般の方々から見ると
「あのメーカーさん同士、仲悪いの???」
といった印象すら受けるかもしれません。

また、皮膚科の先生方から厳しい質問があったりすると
「医学の業界と化粧品業界は犬猿の仲???」
とさえ感じてしまうほどです。

いえいえ
この後の懇親会ではお互いに酒を酌み交わし
さらに喧々諤々やっているという
実にシュールな場であるわけです。

この学会、そしてこの場においては一切の利害関係
そして会社のPRにすらなりませんから
まぁ、学者肌質の連中というのは実に変な人間で
こんなもんです(笑)

と・・・未熟ながら私もその中の研究者の一人でしたね(苦笑)

* * *

それはさておき
こうしたいわゆる「専門家」といわれる人たちですが
なかなか皆さんがこういった人達から
直接、業界話を聞く機会はありません。
というか、当然学術的な難しいお話ですから
一般の方々に話せることでもありませんね。

またこういった方々は
話を噛み砕いて誰にでも分りやすく説明をする
といったことが苦手な傾向にあり
また、面倒くさいのです。
だから理解レベルが同程度の人間としか
こうした専門分野の話はしたがりません。

そんなことで
なかなか一般の皆さんのお耳には
こうした専門的なお話は伝わってこないのが
世の常というヤツです。

*

そこで今回の本題なのですが
昨今はいわゆる「エセ科学」と呼ばれる
エセ専門家の横行が目につきます。

皆さんは、こういった方々のお話に耳を傾けていませんか?

いや、耳を傾けるだけならまだいいですが
それを鵜呑みにすることで
ご自身の大切なお肌に
間違ったスキンケア理論を施していませんか?

特にこの業界は目に見えない化粧品の中身のことだけに
ことさら皆さんの目に止まるように
情報を垂れ流している人たちをよく見かけますね。

『合成界面活性剤の危険性!』
なんていう文面あたりが最たるところでしょうか。

顔写真入りでサイトに掲載されているプロフを見ると

化粧品メーカーにおいて20年の経験を活かして

などといったそれらしい経歴が書かれています。
よくよく名前を拝見すると
「おいおい・・・あんた、○○化粧品の製造現場で化粧水を仕込んでた作業者じゃん・・・」

もう言葉を飲み込むしかありません(笑)

他にも

美容部員として、10年間お肌のアドバイスを行ってきました。

「あちゃ・・・個人化粧品店の販売店員さん、パート・アルバイトのカウンターBAさんも
みんな美容部員って呼ぶんですよね・・・」

なんてケースをよく見かけますね。
一般の皆さんがよく分らないのをいいことに
こうした方々はどこかでそれらしい情報を仕入れてきて
適当な「エセ科学」を論じていたりします。

これは『専門家のお話』とは言いません。
『情報通の横流し情報』と言います。

皆さんにはこれを混同しないチカラを
しっかりと身に着けていただきたいと思うのです。
ホンモノの専門家は
専門知識を垂れ流したりはしませんし
「私は○○だ。」
などと安易に吹聴したりしないものです。

* * *

最後になりますが
今回この講演を拝聴していて非常に驚く経験をします。
それは一日目のことでした。

そうそうたる面々による
数ある講演・論文発表が続々と進められ
私も懸命に手元のテキストを追っかけたり
デジカメで画面の写真を撮ったりと
朝から脳みそはフル回転
年老いた私の頭は軽い頭痛すらおぼえはじめます。

そんな中、演題はひときわ高度な研究成果の発表
毛髪再生医療の最先端技術研究室と言われる
ペンシルバニア大学 医学部皮膚科の先生のご発表で
『毛髪再生にかかる毛皮細胞の最新の話題』
といった内容の演題でした。

だいたいこの手の高度な研究課題の発表は
私と同年代かそれ以降の
小難しい顔をしたおじさんおばさん(失礼・・・)が
登場されるのがオーソドックスなパターン

ところがなんと演台にあがられたのは
一見20代後半から30代前半の
街のどこにでも見掛けるような普通の女性でした。

「ん?」とは思いましたが
内容を聞くにつけ、全く私もついていけない
最先端の皮膚細胞についての学術的な研究発表。

履歴を聞くと
もともとはカネボウのヘアケア開発部門で研究職に従事していて
毛髪再生について研究をするにつけ
もっと頭皮細胞のことについて本気で学びたいと
最先端医療の存在するこの大学に留学してしまったとのこと。
今ではこの世界では著名な方だと
後々に耳にして驚くことになります。

そこでふと思い出したのが
私達が@cosmeで活動してきた頃からの
一ユーザーの一人の女の子のことでした。

東大で宇宙工学科の研究を行っているという彼女は
あのスペースシャトルを開発しているNASA(アメリカ航空宇宙局)の人間と
メールでやりとりしているほどのキレ者。
日本の宇宙工学最先端技術の研究者です。

最初のオフ会でしつこく職業を聞き出そうとする私達に
ボソボソとした口調で答えてくれましたが
みんなのあいた口が塞がらなかったのは
言うまでもありません。

ちなみに日本は
宇宙工学の実戦にかける費用が捻出できないので
実際に飛ばしているロケットはショボいですが
NASAに日本の宇宙工学がかなり関わっているとの事。
当然ですが
彼女は世界的な学会への参加・論文の発表などで
一年中世界各国を飛び回る人間。

でも、私達のオフ会に参加した時には普通の女の子
化粧品の裏話に
「へー!やだー!そうなんだー!!!」
と私の話にいちいち関心・感嘆する一人の女の子です。
そう、街へ出ればまぎれてしまう
なんの変哲もない普通の女性。

ホンモノの専門家というのは
そういうものなのではないでしょうか。
それらしく見せるでもなく
知識をひけらかすわけでもない。
「見せないのがホンモノ」
ということなのでしょうね。

『実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな』
であります。

私もそうありたいと思うのでした。

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