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保湿剤の有名人~その1:尿素(FILE No.011)

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◆◆FILE No.011 / 2006年7月配信◆◆

保湿剤の有名人~その1:尿素

今回から数回に渡って、ここ数年で保湿剤として一躍有名になった成分を取り上げて色々と検証してみましょう。

ウワサがウワサを呼んでクチコミで一般消費者に広がり
確かに噂通りお肌に大変良い保湿感を与えてくれるものから
ちょっとダメ出ししたいものまで
少し違った観点から考察してみます。

保湿剤の有名人シリーズの第1回目は、Cosmeti-webの実験室でも取り上げました尿素という成分です。

尿素製剤化粧水における問題点の検証

どちらかというとチープなコスメに興味をお持ちの方はよく耳にされていると思いますが
日常大手ブランドのコスメ愛用者の方は知らない方も多いかもしれません。
ただ、大手ブランドしか購入されない方でも
薬用ハンドクリームの「尿素○○%クリーム」というネーミングだとピンとくる方も多いでしょうか。

ブームの先駆けは、某皮膚科医のセンセーがお勧めになっている事で有名になった
「天使の○○水」という製品でしょうか。
この化粧水の保湿剤としてメインでグリセリンと一緒に配合されていたのが、この噂の尿素。

この尿素という成分
実は皮膚の角質軟化作用を持つ成分として、皮膚科の処方箋薬で軟膏としてもよく用いられます

ではなぜ尿素が皮膚に保湿をもたらすのでしょうか。
そのメカニズムについて少しだけ触れる事にしましょう。

尿素の保湿メカニズム

尿素は下記の化学式で表されます。

CH₄N₂O

この化学構造で保湿に重要な関係を持っているのが
水素結合と呼ばれる-Hの結合部位です。

水素というと
大変危険な可燃性の気体で「水素爆弾」という言葉を耳にされた事があるかもしれませんね。
その可燃性の強さから、未来の燃料とも言われています。
でもここでは気体になっている訳ではありませんので
全く関係はありません(んじゃ、書くなっちゅうの!)

この構造中の複数の水素結合が
水と深い関係を持つ事になります。
つまり、水(HO)も同様に水素結合を持つ構造だからです。

また、実は皮膚を構成しているケラチン(タンパク)もアミノ酸同士の結合の間に水素結合を持っており
尿素の水素結合がこの皮膚の水素結合にも作用して繋がりをゆるめ
柔軟になるという効果をもたらしています。

実は、皮膚や髪を水で濡らすとフニャっとなる現象がこれだというのは
意外と知られていないようです。
水の水素結合が、ケラチンの水素結合に作用しているという訳です。


さてこうしてみると
やっぱり尿素ってすごいじゃん!
って事になるのですが
よくよく考えてみると
これだけ効果があるにも関わらず
市販の化粧品で尿素が配合された商品は見た事もないですよね。

「他のメーカーさんは知らなかったんじゃない?」

いえいえ・・・とんでもない
尿素なんていう成分はもう20年以上も前から化粧品に使われていますし
その効果は十分に知り尽くされていました。
というか、知り尽くされていたからこそ使われなかったのです。

実は、尿素を化粧品に配合するには、二点の大きな問題があるのです。

尿素の問題点 その1

一点目が、Cosmeti-webの実験室で行った実験の結果です。

実は、尿素という成分は加水分解されやすいのです。

加水分解とは

水との接触によって構造中の化学結合の一部が切れること

つまり、水素結合があるために水の方にNHが丸ごと引っ張られる訳です。
NHが引っ張られて水とくっつくと何になるでしょうか?
そうです。
アンモニアです。

尿素というネーミングの由来は、ここにあったんですね。
実験で化粧水のpHがアルカリ性にスライドしていくのは
こうした要因だったのです。
一応、この分解の反応を化学式で示しておきます。

尿素の加水分解反応:(NH2)2CO + H2O → 2NH3 + CO2↑
*アンモニアと炭酸ガスに分解される

少なくとも化粧品の技術者は
常識的にこの尿素の性質を知っていますので
水が大量に配合された剤型に尿素を配合したりはしませんし
そうした商品が市販されているとしたら
明らかに技術レベルが到達していないという事になります。
尿素製剤が油分の大量に配合された市販のハンドクリームにしか存在しないのは
こうした理由によるものだったのです。

ちなみに、尿素を安定化させるための特許が様々なメーカーから出されているのが、これを表しています。
おおまかには、水素結合の部分に作用する一部のアミノ酸が
分解を防ぐ効果があると言われています。

尿素の問題点 その2

天使の○○水や、尿素を配合して手作りされた化粧水を使っていて
以下のような症状が出た事はないでしょうか。

「使い続けていると、ある時逆にカサカサになってカブれたように皮がめくれてきた。」

実は、皮膚上である条件が揃うとこの現象が起きます。
その条件は何かというと
皮膚の周りの環境に水分がなくなり、尿素が水を集められなくなった時です。
つまり、皮膚上に油分などのフタがなくなってどんどん水分が蒸発し
尿素の保水力が負けてしまうケースです。
特に、冬場の湿度の低い時期にこの現象はよくみられます。
この時尿素は
皮膚の内面にある水分までを集めはじめ
それでは飽き足らず、今度は皮膚の水素結合を切ってしまう結果を招きます。
これが過乾燥を招き
挙句はカサカサになって皮膚にヒビワレやめくれを生じさせるという訳です。
これも、尿素の性質をよく知る技術者は
製剤中に油分を大量に配合する事で皮膚の水分の蒸散を防ぎ
尿素の効果を引き出すという手法を用います。

以上が尿素という保湿剤の性質と、問題点でした。

*

ご家庭で尿素入り化粧水をお作りの皆さん
くれぐれもご注意されますように。
決して、化粧品の駄作とも言える天使の○○水のマネをなさいませんよう。

ちなみにこの化粧水
もともとレシピそのものが単純な上に
尿素の素材そのものは園芸用の肥料として簡単に入手できる事から
今では家庭で簡単に作ってしまう方が多くなって売り上げがガタ落ちだとか。
まぁ、ズル賢く簡単に儲けてしまった人は
簡単に落ちていく(自業自得じゃ)という典型的な例ですな。

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