◆◆FILE No.068 / 2007年12月配信◆◆
バイオってなんぞや？～その２
前回、バイオテクノロジーに関係する微生物
いわゆる『菌』について少しお勉強しました。
私達人間の目では捕らえる事のできない
ミクロの世界のお話でしたね。
逆に言うと目に見えない世界の事だけに
存在については十分に注意をする必要があります。
例えば化粧品をご家庭で手作りなさっている方々
決して油断は禁物。
焼酎やウォッカを配合すれば菌は死ぬだろう
はたまた
作る時には手をアルコールでササっと拭いて消毒する
どうでしょうか？
これらは全く効果がないとは言いませんが
気やすめ程度と思っておくのが良いですね。
お子さんを出産なさった女性はよくご存知ですが
全く免疫のない赤ちゃんが使う哺乳瓶の消毒は
病院からどのように教わったでしょうか？
『お鍋でグツグツと２０分以上煮立たせる。』
でしたよね。
これはアルコール消毒よりもかなり効果が高いですが
それでも実は完璧とは言えません。
つまり
世の中に無数に存在する菌の中には
アルコールに強い菌や温度に強い菌が
たくさんいるという事なんですね。
身の周りには
１２０℃の温度でも死なない菌
がいる事も覚えておいて下さい。
* * *
おっと・・・
なんだかお話がそれてヤな内容になっちゃいましたね（苦笑）
では、バイオケミカルのお話に戻りましょうか。
*
前回も書きましたが
バイオヒアルロン酸は怖い菌からできていると主張する人がいます。
本当にそのメカニズムを知っている人であれば
そんな事は絶対に言いませんね。
もしもそれが薬剤師さんや皮膚科医の先生であったら
その医院や薬局は・・・と思って下さって構いません。
ではどうやってバイオヒアルロン酸はできているのでしょうか？
簡単にわかりやすく説明しましょう。
前回説明したように
微生物というのは単細胞生物です。
ですから
動物のように卵を生んだり
高配して胎生で増えるのではありません。
つまり、細胞分裂で増えていくわけです。
こんな感じですね。
という事は
分裂して新たな細胞ができる過程で
上の図にあるように
細胞膜を構成している成分をどんどん作り出して増やします。
人間も動物も同じですが
細胞の膜というのはアミノ酸や糖類からできています。
ですから微生物は
細胞増殖の過程でアミノ酸や糖を作り出しているという事になります。
つまりその中に
ヒアルロン酸があるというわけです。
もちろんですが
個々の菌種によって細胞膜の成分は異なりますので
ヒアルロン酸を作り出す菌は限られていますね。
さらに大変おもしろい事に単細胞生物というのは
『単細胞』という言葉から分かるように
全く同じ作業しか繰り返しません。
これはようするに
寸分たがわず同じ成分ばかり作り続けるという事です。
無個性とでも言いましょうか（笑）
悪い意味で言うと
人間のように無数にたくさんの細胞でできていると
人それぞれに細胞の構成が異なりますから
個性があって成分の違う排泄物を作り出しますし
顔や体の形も全く違いますね。
だから全く同じモノを生産するという意味においては
微生物の方がはるかに優れているんですね。
この先の微生物の種類による作り出す成分の違いのお話は
ＤＮＡ因子の構成要素なんていう難しい話になりますので
ここではここまでにしておきましょう。
*
いずれにしても微生物が作り出す成分は
単細胞という特質から成分に狂いが全くなく
さらに無限大に細胞増殖するために
限りなく作り出してくれるという
大変大きなメリットがあるんですね。
ちなみに微生物が１個から２個の細胞に分裂するのに
数時間とかからないスピードも大切な要素の一つです。
つまりそれだけ生産にコストがかからないという事ですね。
いかがでしょうか。
バイオという技術が決して怖いケミカルではなく
ましてや病原菌からできているなどというのは
大きな間違いだという事がお分かりいただけたでしょうか。
* * *
最後にもうひとつマメ知識を。
皆さんがよく病原菌として耳にする事の多い
「ウィルス」ですが
これをよく「インフルエンザの菌」「コレラ菌」「エイズ菌」
などと口にします。
これは生物分類学上は
今回のお話に出てきた『菌』とは全く異なるもので
「ウィルスと菌は似て非なるモノ」と理解しておいて下さい。
ウィルスは菌と比べると
その大きさもさらに１／１，０００という小さい存在で
通常の顕微鏡では捕らえられない大きさです。
二つは同じ言葉で呼ぶべきものではない事も
豆知識として知っておいて下さいね。
ミクロの決死圏のお話はこれまで（笑）
