週3で異なる目線の美容記事をお届け
美里康人
それって本当なのでしょうか?
化粧品は、「〇〇に効果がある」といった医薬品のような効能を謳ってはならないことは、皆さんもよくご承知のことと思います。
そんな中、“医薬部外品”といった医薬品と化粧品の中間的な位置づけにあって、予防医学的な効果を限定して謳えるカテゴリーがあります。
「日焼け防止(美白効果)」や「ニキビの予防」、最近では「保湿によるシワ改善」といった効能も認められるようになっています。
これは医薬部外品の中でも化粧品のようにお肌に使用する目的の製品にあるカテゴリーで、薬用化粧品という名称で分けられています。
今回はこの医薬部外品とはどういったものなのかの解説ではなく、この制度が日本独自と言われていることについて、それが事実なのかを解説したいと思います。
日本の医薬部外品制度の解説は過去記事で解説していますので、こちらをご参照下さい。
■「医薬部外品」をきちんと知る
https://cosmetic-web.jp/column/iyakubugaihin001/
関連記事)アーカイブ
■よく分からない”医薬部外品”~その1(FILE No.072)
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■よく分からない”医薬部外品”~その2(FILE No.073)
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この記事の目次
海外の中間カテゴリー化粧品
この医薬部外品の中でも薬用化粧品に位置する製品は、ユーザーの皆さんにとって化粧品よりも少し効果が高いイメージを持って頂けることで、相応の付加価値を有する化粧品とされていますね。
ただ、もともと薬機法(当時の薬事法)でこの医薬部外品という制度が設置された目的はそういう意味合いではなく、実はヒトの体に影響を及ぼしたり、害がないように留意して使用する目的で特別に制定された制度なのです。
つまり、製品に配合されている薬品が人体に害を与えたり、使用を誤ると被害が及ぶ可能性がある薬剤が配合された製品を正しく流通させるために設けられたのですね。
分かりやすい例では殺虫剤。
ほぼ全ての殺虫剤が医薬部外品に指定されていますが、散布した薬剤が人体にかかったり、口や鼻から吸引したりすると影響を及ぼす可能性があるために、製品への薬剤の配合量や使用方法の注意事項の記載などが規定されています。
他にもヘアケアの分野では美容室で使用されるパーマ液やカラー剤(半永久タイプの染毛剤)も、お肌や髪への被害を防ぐために医薬部外品に指定されています。
ちなみに一時は家庭用パーマ液も市場に出回った時期がありましたが、これはこうした人的被害を避ける元来の目的から外れてしまうことを考えると、これを逃れて市場に出すことはモラルに反することと理解できますね。
もしも家庭で子供や赤ちゃんが触れたり目に入ったりすると、大変なことになります。
さて、それはさておいてこの制度、よく日本独自の制度だと言われますが、果たしてそうなのでしょうか。
実はこうした医薬品と化粧品カテゴリーの中間的な薬事の規定は、海外にも存在していることは意外と知られていません。
特に近隣のお国には同様の制度がありますので、そういった背景をみていきましょう。
中国
海外にもいくつか日本の医薬部外品と類似したような制度がありますが、ひとつずつ取り上げてみましょう。
まずは中国。
中国には「特殊化粧品」というカテゴリーがあります。 以前は「特殊用途化粧品」でしたが、昨年に名称が変更になっています。
どういった製品がカテゴライズされているかを、以下に整理します。
・育毛剤
・染毛剤
・パーマ剤
・脱毛剤
・美乳化粧品
・健美化粧品
・消臭化粧品
・美白(シミとり)剤
・日焼け止め剤
・脱毛防止剤
・その他
日本とかなり類似しているのが分かりますね。
美白はダイレクトに“シミとり”となっていたり、“美乳”というのは読んで字のごとしでそんなのがあったりで、ちょっとクスっとしてしまいます。
ちなみに“健美”というのは日本にはなく、痩身的な効果と言えば分かりやすいかと思います。
ただし、日本の場合は使用される薬剤(有効成分)は全て決められていて、配合量まで規定がありますが、中国の場合は指定がありません。
韓国
続いて韓国です。
韓国は「機能性化粧品」というのがありますが、ちょっとめんどくさい名称がつけられています。
・皮膚の美白に役立つ製品
・皮膚のシワ改善に役立つ製品
・皮膚をきれいに日焼けさせ、または紫外線から皮膚を保護するのに役立つ製品
・毛髪の色の変化・除去または栄養供給に役立つ製品
・皮膚・毛髪の機能の弱体化による乾燥、枝毛・抜け毛・角質化などの防止や改善に役立つ製品
非常に長ったらしく分かりにくい言葉になっていますが、ほとんど日本の医薬部外品と同じと考えて良いですね。
興味深いのはニキビに対する効能をもつ製品ですが、日本と異なって薬効でニキビを防ぐ製品は認められておらず、洗顔やクレンジングといった物理的に洗浄する製品しか認められていません。
そして中国と並んで面白いのは、“妊娠線ケア”も含まれている点でしょうか。
女性にとっては非常に悩ましい産後のお悩み。 これは日本でも導入して欲しいカテゴリーですね。
韓国の場合は日本と同じく、成分や製剤についても全て薬事で規定されています。
台湾
お次は台湾。
台湾には「特定用途化粧品」という制度があります。
2019年に改訂され、それまでは「含薬化粧品」という命名でしたが、こちらの名称の方が日本と類似して分かりやすかったかもしれませんね。
種類は以下です。
・染毛剤
・パーマ剤
・制汗剤
・日焼け止め剤
・美白剤
・その他の用途
こちらも日本の制度と類似していますね。 台湾の場合ももとの含薬化粧品という旧名称が示している通り、日本や韓国と同様に配合する薬剤が規定されています。
アメリカ
そして最後はアメリカです。
アメリカにはこうした中間医薬品的なカテゴリーは存在しませんが、医薬品(Drug)の中に日本に似たような製品群として「Cosmetic Drug」というカテゴリーが存在しています。
日本語に直訳していますので、正確ではないかもしれませんがそこはご容赦下さい。
・育毛剤
・外用ホルモン含有製品
・外用ニキビ製品
・皮膚保護製品
・制汗剤
・日焼け止め剤
・虫歯予防剤
・フケ防止剤
似たようなカテゴリーで“Cosme ceuticals”(コスメシューティカルズ)という言葉を耳にしたことがあるかと思いますが、これはドクターもしくは調剤薬局で薬剤師が調剤する製品に限定されていますので、これはまた異なります。
こちらも日本の医薬部外品と共通している製品群が多いですが、異なるポイントを少し解説しておきます。
育毛剤に関しては日本の製品のような効果の薄く安全性の高いものは該当せず、日本のような抜け毛防止的な有効性の薬剤が配合された製品は認められていません。
そこはドラッグ的な意味合いが非常に強くなっています。
そういう意味では、日本ではすでに配合が禁止されているホルモン配合製剤もカテゴライズされており、かなりドラッグに近い効果が期待される製品が指定されています。
それはニキビ効能についても同じで、日本のような予防的な効能ではなく治癒的な効果が認められるものがこのカテゴリーに入っています。
まとめ
ここまで諸外国の医薬部外品に相当するようなカテゴリー分けをみてきましたが、いずれも日本で規定されている医薬部外品と類似していることが分かります。
とはいえ日本の場合はさらに製品群は多く、例えば入浴剤や衛生綿・ベビーパウダー・薬用ハンドクリームなども規定されていて、さらにかなり綿密に設定されていると言えます。
最後になりましたが、こういった制度はEU(ヨーロッパ)やASEAN諸国には存在していません。
というわけで、また次週。
by.美里 康人