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製造元?発売元? 製造販売元?

化粧品製造販売元


美里康人

化粧品の裏側表記にある「製造販売元」の意味は?
実はそこで製造していないケースも

今週の記事は、掲題にあるように化粧品の裏面に表記されているメーカーさん企業の名称記述について、厳密なことを解説していきたいと思います。
ずいぶんと以前にもこれについては説明をしていますが、今回はユーザーの皆さんも理解頂けるように、より綿密に解説しておこうと思います。

すでに業界人の読者の方はご承知のことかと思いますが、とはいえここ数年で薬機法の責任関係の取り組みが少し変化してきていますので、ユーザーの皆さんも美容業界の内情を知って頂ける良い機会かと思います。

では早速本編へ。

大手ブランドの表記

さて、ユーザーの皆さんが化粧品を手にして目に入る裏面の表記は、必ず以下のように企業さんの名前が入っています。
今回はDHCさんの、とある製品の裏面表示の一部をお借りしてきました。

製造販売元

このように、市場でよく見る大手ブランドさんの企業名表示は、どこで製造されたものか詮索の余地もなくただ単に企業名だけが記載されています。

これは製品を作っている工場も販売している販社も同一で、DHCさん一社で全てを責任持って行っているということになるわけですね。

一方で、同じ大手ブランドさんでもこのような製品の表記もあります。

製造販売元2

コーセーさんですが、「発売元」「製造販売元」と書かれてあり、ふたつの企業名に分かれていますね。
このふたつの表記名の言葉、よく覚えておいて下さいね。

でもなぜコーセーさんも大手ブランドさんなのに、2つに分かれているのでしょうか?
この製品の場合は、同じコーセーさんでもトイレタリー製品やドラッグストア系といった量販店販売の製品は、“コーセーコスメポート”という別ブランドを作って個別に販売会社を作っているからなのですね。
なので製造をしているのは「製造販売元」のコーセーさんで、制度品と呼ばれるカウンターコスメと同じ会社・工場になります。
なので、制度品ブランドの化粧品は全て上のDHCさんと同様、“コーセー”一社さんの名称しか記載されていません。

でも、こうした大手さんブランドじゃない中小の化粧品メーカーさんの製品には、全く関係性のなさそうな社名が2つ書かれていたりしますね。

ここから、大手ブランドさんにはない少々複雑な内情に入っていきます。

「製造販売元」の別の意味

上で「製造販売元」という言葉を覚えて頂きました。
この表記は、中小の化粧品ブランドさんの場合、上のコーセーさんのケースとは少し事情が異なるケースが出てきます
ここはユーザーの皆さんがもっとも気になる、実際に作っているのはどこ?という疑問と繋がりが出てきます。

例えば、このような表記の製品があります。

製造販売元03

私の立場は商品の宣伝になってはいけませんし、勝手に出して支障のない製品もなかなか難しく、既にメーカーとして販売を止めてしまわれたお客様の過去の製品画像をアップしました。

「製造販売元」「発売元」の企業さん名が連記されています。
この場合、発売元の企業さんの名称は、この化粧品ブランドさんの企業名になっていると思います。
一方で、製造販売元の企業名は先の大手ブランドさんとは異なり、この化粧品ブランドの企業さんとは全く繋がりのない、ユーザーの皆さんなら目にしたことのない企業の名前が記されていると思います。 つまりは工場さん

これは、製品を企画・販売されていたメーカーさんの企業名が発売元で、中身も含めこの化粧品を製造されている工場は製造販売元の企業さんということになります。
つまり、発売元の企業さんがOEM工場に、化粧品の処方開発から生産まで全て委託して作られたコスメということですね。

これは分かりやすい表示の製品ですし、よほどのことがない限り製造販売元の企業さんに、ユーザーさんが問い合わせをすることもまずないケースです。

それでもまた違う「製造元」

さて、これでユーザーさんの頭の中では「製造販売元」と書いてあると、この企業さんが中身も全て一から製造されていると思いがちですが、ところが必ずしもそうとは言いきれません。

というのも、この薬機法で決められた責任表記の「製造販売元」という言葉の中には、「製造元」「販売元」の二つの言葉の意味が含まれており、製品を作る製造工場としての役目と、それを市場に出す役目の販売会社の両方の意味を含んでいます。

ところが薬機法上の許可制度としては、ユーザーの皆さんには知らされていない、工場さんが薬機法で許可を取っている「製造業」の許可と、販売会社さんが取っている「製造販売業」という二つの許可があります。
そのため、「製造販売業」の許可を取られているメーカーさんはこの表記だけでよく、「化粧品製造業」の許可を持つ工場さんの表記は必要がないことになります。
つまり、両方をひっくるめて「製造販売元」という表示になっているわけですので、実質的に製品を生産されている工場さんは表記に出てこないケースがあるのですね。
しかも、製造販売元も発売元も同じということになると、何も表記せずに上で述べた大手ブランドさんのように、企業名だけを記載しておけば良いことになります。

こうなると、製造だけをOEM工場さんにお任せしているケースはユーザーさんには分からず、どこで作られているのか見えなくなります。

このケース、ここまでの解説では小さな規模のブランドさんだけと思いがちですが、実はかなりの大きなブランドさんもたくさん存在しています。
小さな化粧品ブランドから一気に市場を拡大した有名なブランド企業さんになると、逆にいきなり大掛かりな大規模工場が必要となりますので、自社で工場を保有するよりはOEM工場さんに任せた方が、ローコストで化粧品を作ることができるという一面もありますね。
化粧品工場は薬機法に基づいて大変な設備が必要となりますので、その資金もかなりのものになりますし。

さすがにこの部分に関しては内情をこちらで暴露するわけにはまいりませんが、意外なブランドさんが自社製造ではないのが現実とだけ、お伝えしておきましょう。

まぁ、ユーザーの皆さんにとってはどこの工場で生産されていようが関係はありませんので、どうでも良いことではあるのですが。
製造販売元のメーカーさんが、責任持って品質と安全性を確保してくれれば良いわけですので。

ただ業界人からすると、工場さんがどこなのか探したい時に手立てがないことになりますので、悩ましさが残るという現状でした。

話のついでで業界の方に向けてのお話になりますが、そういう意味では以前と異なって今は製造販売元の許可を持つメーカーさんの責任が非常に重くなっています。
特に皮膚被害によるトラブルが幾度かメディアでも取り上げられてから、こうした製造販売元さんの責務は大きくなっています。

化粧品を製造するための工場の許可「化粧品製造業」よりも、工場を持たなくても取得できる「化粧品製造販売業」の許可はうんと簡単ですが、消費者に対する責任は大変重くなっていますので、しっかりと薬機法を熟知した企業組織作りをしなくてはなりません。
自社工場生産を装うためだけに安易に取得してしまうと、その責務は大変なことを招くことになり兼ねません
薬剤師さんなど、薬機法で必要とされる資格をお持ちの人材だけ設置して安易に許可を取ったりすると、後々で痛い目をみることになりますので、くれぐれも中小のメーカーさんはご注意下さい。
市場で皮膚トラブルを起こしたり、品質トラブルが勃発すると、その責任は製造販売元企業さんに全てのしかかったくることになることを、お忘れなきようお願いします。

今回の話題はここまでにしておきましょう。
これから化粧品ブランドを起業されたい方など、質問やご相談などありましたら、遠慮なくメールを頂ければお答え致します。

ではまた次週。

by.美里 康人

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