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ナチュラリズムに対する指針(FILE No.075)

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◆◆FILE No.075 / 2008年3月配信◆◆

ナチュラリズムに対する指針

皆さんは、自然志向・天然志向に対して
どういった思いをお持ちでしょうか?

私自身は、化学系の学校からコスメ業界の研究職に入り
現状の自然に対するスタンスが構築されてきています。

こう書くと
「自然と化学とは相反するモノ。」
「ナチュラリズムにたいしてアイデンティティはない。」
こんなツッコミが入りそう。

いえいえ。
私はアウトドア派ということもあり
釣りが趣味だったりするものですから
海や山が大好きでよく足を運びますし
自然に対する思い入れはかなり強い方です。

意外と化学関連の業界にたずさわる周りの方も
こうした志向の人たちが多いようです。

さて今回は、天然の素材と化学との関係
そして人は自然とどう向き合えばいいのか
そんなお話をしてみようと思います。

* * *

最近話題になっている時事ネタで
こんな現状があります。

皆さんが手元におもちの化粧品の全成分をみてみると
『エタノール』といった文字が目に入ります。
ご存知の方も多いかと思いますが
この化粧品に使われているエタノール。
ほとんどが政府所定のアルコールが使われており
サトウキビなど糖蜜からの醗酵アルコールです。

「自然の植物から作られているのね。よかった!」
こんな声が耳に入ってきました。

と、安易に安心されても困るんですね。
『バイオエタノール』
こんな言葉を耳にしたことはありませんか?

バイオエタノールとは
「バイオマス燃料用エタノール」
とでも訳せばいいでしょうか。
そうですね。
ガソリンにエタノールを少し混ぜることで
環境への二酸化炭素排出量が激減するといわれる新世代燃料。

こちらのエタノールにも
化粧品向けと同じく醗酵アルコールが使われています。

さて、環境に優しいとの触れ込みで始まった
この全世界的な燃料プロジェクト
これが今新たな問題点にさらされています。

この醗酵アルコールを得るためには
当然の事ながら大量のサトウキビが必要。

もともとこのアルコールを作るためのサトウキビは
アメリカがかなりの比重をしめていましたが
それではとても供給が間に合わず
今ではアマゾンの未開拓地にまで
その広大な畑が進出しています。

そこで表面化してきたのが
アマゾンのおおがかりな森林伐採問題
もうお分かりですね。
緑がどんどん失われているという現状に直面しています。

言ってみれば
地球環境のために始めたプロジェクトが
逆に地球上の森林を壊す懸念が出てきたわけです。

限りある自然資源である石油の危機
緑が失われていく地球
そして二酸化炭素排出による温暖化現象

このどれをも守るためには
むしろガソリンを使わずに水素ガスだと
新燃料の開発に余念がない自動車メーカーも台頭してきました。

また
ガソリンをできるだけ使わないように
電気自動車との融合のハイブリッドカー
こうした動力の普及に力を入れるメーカーもあります。

こうなると
何が正しくて間違っているのやら
私達にはわからなくなってきました。

「水素ガスは何からできるの??」
「電気はやっぱり原子力??」

もちろん今の私にも
結論は推測すらできません。

いずれにしても環境保護のために各企業は
こうしてそれぞれがなんらかの対策を考え
時には大勢の力を手に入れるため
他者を非難します。

*

さて、コスメを基点にした天然・合成への話題に
話しを戻しましょう。

コスメに関係のある話としては
さきほどのエタノールのお話のほかに
今、『ヤシ』が大きな問題となっています。

石鹸をはじめシャンプーなどに使われる界面活性剤も
このヤシ油の脂肪酸が原料として大量に使われています。
もちろん、そのままのヤシ油も同様。
こうしてどんどんとヤシの栽培畑が拡大し
こちらもアマゾンの広大な森林が伐採されて
大きな問題と化しています。
人工衛星からも判別できるほどだそうです。

さて、どうします?

自分達人間様に優しいだろうと身勝手な誤解釈をし
自然・天然の素材を欲しがれば欲しがるほど
悲しくも自然は破壊されていきます。

何が正しいのでしょうか?

合成の原料といっても
天然の石油から作られます。
こうなると、もちろん今の私に結論は見えません。

でも少なくても安易に
『天然素材が人に優しい。』
こう言及してしまうのは安直である
それだけは理解しておく必要がある気がするのです。

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