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バイオってなんぞや?~その1(FILE No.067)

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◆◆FILE No.067 / 2007年11月配信◆◆

バイオってなんぞや?~その1

なんだか聞きづてならない言葉ですよね?
あ、いきなりで申し訳ありません(汗)

このバイオテクノロジーを略した『バイオ』という言葉ですが
消費者の皆さんにとっては
あまり耳聞こえのよくない言葉だろうと思い
いきなりツッコんでみました(笑)

おそらく、なんとなく耳から脳に入って理解されるまでの間に
遺伝子組み換え・・・
などといった生物の尊厳に関わるような印象を持ってしまうために
きっと妙なひっかかりを感じるかもしれませんね。

確かにバイオ技術というと
こうしたDNA因子を人間の手で操作する
遺伝子の研究もこの範疇に入りますし
こうも食品業界のバイオ技術がメディアで取り上げられる事が多いと
あまりいい印象は持ちません。

でも今回ここで取り上げるバイオ技術は
そうしたDNA因子を人工的に操作するのとは異なるお話です。

今、化粧品業界でも
数多くの素材がこのバイオ技術によって開発されています。
今日はそんな話題を取り上げます。

* * *

さて、皆さんがもっともよく目にするバイオという文句は
「バイオヒアルロン酸」でしょうか。
もちろん、バイオ技術によって作られているヒアルロン酸の事ですが
いったいコレってどういう意味なのでしょう?

一部の医薬品や化粧品を扱うブランドでは
このヒアルロン酸は病原菌から人工的に作られていて
大変おそろしいといったPR文も目にします。
だから、鶏のトサカから採取した天然のモノが安全だと・・・。

う~ん・・・
これでは見る人に大変な誤解を与えてしまいますね。
カルト宣伝の最たるものと言えそうです(苦笑)

確かに病原菌にも似た一種の菌と関係した技術だというのは間違いないですが
まさかその菌がそのままヒアルロン酸になっているわけではありません。

このバイオテクノロジーの説明をする前に
まずこの目に見えない『』という存在について
少し触れておかないといけません。

*

どうしても菌に対するイメージとしては
バイ菌という「汚い」「病気になる」
こうしたイメージに直結しますね。

実は菌というのは微生物という分類に入る生物の一種の事で
私達のように無数の細胞で構築されている生物と違い
こうした微生物は一つの細胞のみで構成されている
単細胞生物に分類されます。

さて菌といえば
身近なところではヨーグルトなどに繁殖している
乳酸菌」を思い浮かべる方も多いでしょうか。
あのすっぱい味を生み出している「乳酸」を産出することから
こう呼ばれています。

ところが実はこの菌の呼び名ですが
全く学術的な名称ではありません。
生物学や微生物学を専攻されている方を前にして
「乳酸菌って体にいいよね?」
なんて知ったかブリっ子しちゃうと
大恥かきますよ(笑)

つまり乳酸菌という言葉は
「乳酸を産出する菌」というくくりになり
分類学上ではバラバラな分類に入る菌が多数存在します。

人間で分かりやすい例えでいうと
「背の高い人」
って感じでしょうか。
背の高い人の中には女性も男性もいますし
高年齢の方もおられれば、若い方もいるといった具合です。
つまり、全く生物学的な分類にならないという事です。

*

乳酸菌のお話しに戻しますが
乳酸菌と呼ばれる乳酸を産出する菌種は
おおまかにいうとこれらの属に存在する微生物になります。

1. ラクトバシラス属 (Lactobacillus)
2. ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium)
3. ラクトコッカス属 (Lactococcus)
4. ペディオコッカス属(Pediococcus)
5. リューコノストック属 (Leuconostoc)
まぁ、この名称などどうでもいい事なのですが
一般的に1.にはヨーグルトに使われる菌が含まれています。
2.にはビフィズス菌と呼ばれる菌が属しており
3.には牛乳や乳製品に含まれる菌が属しています。
おもしろいのは、4.はピクルスやキムチ
5.はザワークラウトなどの発酵食品に存在する菌が含まれています。
いずれもすっぱい味が特徴的なことはもうお分かりですね。

ただし
じゃこれらの菌は良い事ばかりなのかといえば
実はそうではありません。

例えば日本酒を造る工程の中で
この中の1.に属するある菌種が混入することで
異臭がしたり、酸味が強いお酒ができてしまい
商品としての価値なくなるという問題があります。

これはワインを造る過程においてもよく問題となり
いずれもこれは菌によって変質してしまったのですから
「腐敗した(腐った)」という事になります。
皆さんもご家庭で食品が腐った時には
「酸っぱい味がする・・・」
というのを基準に判断する事がありますよね。
これがまさにこういった理由によるものです。
つまり
ある種の菌によってなんらかの酸が産出されて
酸っぱい味になってしまったというわけです。

今回上に掲載した乳酸菌と呼ばれる菌属の中には
人間にとって害となる病原性の菌などは
”今のところ”ないとされています。

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あくまでも”今のところ”と書いたのは
いまのところ現状では悪影響はみられていない
みつかっていないというだけの事であって
この先ではみつかる可能性はゼロではないと
覚えておいて下さい。
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今度は逆にいうと
皆さんがよく耳にする「大腸菌」という言葉は
このネーミングから大変怖い病原菌のような印象を受けますが
学術的にいうところの「大腸菌群」に該当する菌で
ヒトにとって病原菌となる菌はそんなに多くありません。
例えば皆さんの頭皮や手・爪の中に
この大腸菌群に属する菌は
うじゃうじゃ存在しているんですね。
でも手指を舐めて病気になったというお話は
聞いた事がありませんね。

* * *

今回はこのお話の1回目という事で
ちょとばかり菌のことについて少しお勉強しましたが
このほかにも食品に活用されている菌はたくさんあります。
例えば、納豆・醤油・パン・チーズ・干物などなど
ようは
私たちは常にこの「菌」という微生物と共存して生活しているわけです。

人間にとって『害となる病原性があるのか、ないのか
単にそれだけが理由で、善玉と悪玉に分けているだけに過ぎないのです。
そこに生物分類学上の共通点は一切ありません。

上で出てきた乳製品にも含まれるラクトコッカス属の中に
魚のブリにとって致命的なラクトコッカス症と言われる
病原菌となる菌が存在する事を付け加えておきます。

もちろんこうしたどんな菌であろうとも
化粧品などに混入し、腐敗してしまったらそれは品質不良
いわゆる「腐った」という事になります。
それがヨーグルトに使われる乳酸菌の種類であっても
それは腐ったことに変わりはありません。

次回はいよいよバイオテクノロジーのお話に入っていきます。

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