◆◆FILE No.029 / 2006年11月配信◆◆
気になるpH
『ペーハー』または『ピーエイチ』という言葉は皆さんよく耳にしますよね?
この言葉、実は「pH」と書いて、化学の専門用語なんですが
皆さんその意味をご存知でしょうか?
「低けりゃ酸性で、高けりゃアルカリ性なんでしょ?」
もちろんそれで正解なのですが
ではここで一つ質問です。
<pH10の石鹸を、水で10%に薄めたらpHはいくつ位になるでしょうか?>
これって、現実にお肌の上で経験している洗顔の際のパターンを
大雑把に疑問にしてみました。
さて、いかがでしょう。
少なくとも
「1/10の”1”になる・・・」
という方はおられませんよね。
pH1なんていうと、どえらい強い酸で
皮膚が焼けてしまいますね(笑)
かくして、その答えは???
Cosmeti-webの研究室の方で実験してみましょう。
結果をお楽しみに。
と・・・
ここでお話が終わってしまってはいけませんね。
そこで、pHというのが何を表しているのかを
ちょっとばかり勉強していって下さい。
まずペーハーというのは、『水素イオン濃度』の事を指していると説明しておきます。
ようするに”power H”の略で、「H」とは化学記号の水素の事ですね。
でももうひとつそれでは意味が不明です。
では、酸性とアルカリ性について少しお勉強しておきましょうか。
まず酸性とは、水素イオン「H」(+)が大変多い状態と覚えておいて下さい。
で、アルカリ性とは、水酸イオン「OH」(-)が大変多い状態と覚えておいて下さいね。
という事は
両方が同量存在して相殺されていると中性という事になります。
つまり、水というのはH2Oと書くのは皆さんご存知かと思います。
これは実は
H++OH-→H2O
という、電子的には水素イオンHと水酸イオンOHが
同量にくっついた形になっています。
プラスとマイナスが同量くっついていますから
水は中性ですね。
おや?
水の反応式って
2H2+O2→2H2O
で、酸素と水素の結合じゃなかったっけ?
はい、これも正しくて、上は電子の反応
そしてこれは「分子の反応式」です。
まぁ、さして重要じゃないので
そんなモンかってな程度で覚えておいて下さい(笑)
で、話を戻しますが
通常、水はH+とOH-とが当量で存在しますので中性なのですが
ここに他のなんらかの酸物質(+イオン)やアルカリ物質(-イオン)が入ってくると
それぞれの対となるイオンにくっつく事になります。
例えば、アルカリ物質の-イオンが入ってくると
H+イオンとくっつく事で
水中のHイオンが減ってしまいますね。
ですから、水中の水素イオンが少なくなって水酸イオンが多い状態となり
pHがアルカリ性になるという事になります。
ようするに
pHが7の状態はH+イオンとOH-イオンが同量で中性で
pH0は
HイオンばかりでOHイオンがない状態で強い酸性。
逆にpH14は
OHイオンばかりでHイオンが全くない強いアルカリ性という事ですね。
「んじゃこの数値の意味は???」
この数値の意味を書くのはヒジョーに長く難しくなりますので
pHが1変わるとそれぞれのイオン量が10倍増減する
とだけ覚えておいて下さい。
つまり
pH7は10の7乗個ずつH+イオンとOH-イオンが存在する
という意味です。
ここで重要なのは
「中性とは、それぞれに10の7乗個ずつもともと存在している」
という点です。
10倍ですから
イオン量に敏感な微生物や魚類などは
pHが1変化するだけで生きていけなくなる事は往々にしてあります。
あぁぁ・・・
ちなみに私・・・化学屋ですから
数学は大の苦手なんですぅ・・・(涙)
*
ここで最初の質問に戻りましょう。
<pH10の石鹸を、水で10%に薄めたらpHはいくつ位になるでしょうか?>
でしたね。
もうこれである程度推測ができましたね。
水はもともとpH7の中性で、H+イオンは10の7乗個存在しています。
この水で、H+イオンが10の10乗個の石鹸水を10倍に薄めるわけです。
という事は
少なくても、pHは7と10の間かな???
実験で起こる現象が、だいたい推測できましたでしょうか?
あとは、実験の結果をお楽しみに。
*
こうして、化粧品の中で起こる事を推測するのは大切な事です。
こうした一つ一つの知識や化学に基づく推論が
トータルで化粧品の品質の推測に繋がっていく訳ですね。
なぜ全成分からその商品がある程度評価できるか?
今回は、あくまでも感覚ではない
判定ノウハウの、とある断片のお話でした。
少なくても・・・
pHの説明をさも専門家を装って
「phとは」などと書いている方のお話を
決して信じてはなりません。
一番最初に書きましたが
「pH」
(p→小文字・H→大文字)
ですから。