◆◆FILE No.023 / 2006年9月配信◆◆
スクワランってホントに天然??
この成分名、皆さんもよく耳にされている事でしょう。
そう
深海鮫から採取される油としてあまりにも有名な成分です。
純天然商品として、このスクワランを生詰めした商品を販売して
名を馳せたメーカーも存在しますね。
普通に考えれば、いくら私でもツッコみどころの全くなさそうな無垢な成分。
・・・と言いたいところなのですが、カルトなネタはまだまだ尽きません。
その昔
肝油と言われてソフトカプセルに包まれ
薬として販売されていたアレがそうなのですが
深海鮫の肝臓から得られる油脂分の80%を占めている油は
実は「スクワレン」です。
「スクワレン」と「スクワラン」って、同じじゃないの??
いえいえ。
実は全くと言っていいほどの、別物です。
スクワレンは
分子内に持つ炭素の手(通常は、4本持っています)の一部が
余った状態のままで存在している素材なのです。
これを化学の世界では、「不飽和炭化水素」と言います。
で、スクワランは
この余った手の部分に
化学的に水素(H)を全てくっつけてしまったものなんですね。
この化学処理を「水素添加」と言います。
そしてこれは全部の手が飽和状態になっている事から
「飽和炭化水素」と言います。
つまり、純粋な天然の素材そのままではなく
化学的に手を加えられているものという事。
念のために化学式でそれを表すと
スクワレン→C30H50
スクワラン→C30H62
という事で、水素(H)の数が12個も多いというわけ。
ではなぜわざわざ手を加えたかというと
手が余った状態の素材は
その余った部分が何かとくっつこう(反応しよう)とした状態のままでいるために
その部分に空気中の酸素などがくっつこうとします。
こうして酸素がくっつく反応を酸化といい
品質が低下する事になります。
そうならないように手を封鎖してあるのが
化粧品に使われるスクワランという事なのです。
ちなみにスクワレンが肝油として飲用すると体に良いのは
この余った手の部分に酸素がくっついて
体内の各部に酸素を供給してくれるからとされています。
他にも
体内に存在する酸化してしまった油である
過酸化脂質を還元する事で解消してくれる役目も果たします。
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一方化粧品に使われるスクワランですが
一般的に健康なお肌の状態であれば
皮脂中にはこのスクワランが3%程度含まれていると言われています。
つまり、その保湿性能を活かして使われています。
でも、スクワランの効能を謳うのに
スクワレンの酸化脂質改善機能などを引用し
誇大解釈しているメーカーも少なくありません。
あくまでもスクワランとしての機能しか持たない事を
ユーザーは誤解しないようにしなくてはなりませんね。
話を本題に戻します。
こうして皆さんが純然たる天然の素材だと思い込んでいた素材も
実は化学的に手が加えてある
合成の素材であるケースが大変多いのです。
例えばヒアルロン酸においても同様
人体に存在するヒアルロン酸という成分は
化粧品原料としては存在せず
あくまでも「ヒアルロン酸ナトリウム」という化学的に手を加えられた素材である事は
認識しておかねばなりません。
こうなると、「天然素材」の概念はどこまでなのか
ボーダーラインが大変難しくなってきます。
純然たる化学合成素材
そして天然の素材を化学的に手を加える事で問題点を解決した素材。
メーカーが謳い文句にする「天然素材」という言葉に対して
ユーザーは単純に反応するのではなく
それぞれの合成原料がどういったいきさつで
そしてどういう経緯で手を加えられたのか
きちんと知った上でこだわるべきなのかもしれませんね。
これらは、単にラベルに表記されている成分名称からだけでは
判断できませんから。
そしてスクワランも
天然のスクワレンは皮膚に塗布すると
老化の促進に影響を与える過酸化脂質となり
活性酸素の発生原因となるために
あえて化学処理をしてある事を知っておいて下さい。