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保湿剤の有名人~その3:セラミド(後編)(FILE No.014)

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◆◆FILE No.014 / 2006年7月配信◆◆

保湿剤の有名人~その3:セラミド(後編)

セラミドは、お肌にとってすごい重要な役目を果たし
当然、化粧品に配合すると大変良い効果をもたらす事は前回「保湿剤の有名人~その3:セラミド(前編)」
で分かりました。

特にセラミドは生体構成成分である事から
皮膚とのなじみ性が大変よく、吸着して落ちにくいというメリットを持っているために
グリセリンやベタインといった水性の保湿成分とは違い
洗い流したりといった行為で簡単に落ちる事なく
皮膚に吸着して残存するという、最大の利点があります。

セラミド配合化粧品の現状

さて、ではここで業界のある傾向に目を向けてみましょう。

そんな効果のある成分なのに
なぜ、メーカー各社がこれをヒアルロン酸などのようにどんどん化粧品に配合し
オーソドックスな成分とならないのでしょうか???

実は
それには皆さんの目に付かないところで
いくつかの隠れた問題があったのです。

今回は、そうした部分を知る事で皆さんの商品選びのお役に立てるよう
「じゃぁ、セラミド配合のコスメがそんなに効果があるならすぐに買っちゃおう♪」
と、手放しで喜べない現実をお話します。

~~~***~~~

まず一点目の現実。
『大変高価な成分で、安易に多量に配合できない』

セラミドは、動物などの生体から取り出すのがオーソドックスなのですが
効率的に取り出すのが大変難しく
合成のものでも作るのに非常にコストがかかり
大量に配合するのは無理だぁ。。。
という現実があったのです。

また
動物愛護の問題もあり
ユーザーにとってあまり良いイメージとならないという事もあったでしょう。
かといって
合成の素材というとさらにイメージが良くない事が
前向きに使用されなかった要因となっていたようです。

*

次に二点目の現実。
『セラミドは、水はもちろんの事、あらゆる溶媒に溶けにくい』

スフィンゴ脂質という物質は
もともと大変化粧品に配合が難しい成分で
特に生体の中に存在するカタチのままで動物の組織から取り出すと
化粧品に配合されている成分とは溶け合わないという
やっかいな性質を持っています。
「脂質」というくらいですから
何か工夫をしない事には、もちろん水にもほとんど溶けません。

もちろん
いわゆる溶剤と言われるシンナーのようなものであれば
これを溶かす事は可能なのですが
そのような溶剤を化粧品に配合するわけにもいかず
ここは化粧品メーカーにとって非常に悩ましいところだったのです。

現状においても
化粧品にセラミドを配合するには
あらゆる手段を使っても0.3%前後が限界と言われています。

そして、ここで花王の登場~。
その困難な道を切り開いたのが花王さんだったという訳です。

花王は、動物からセラミドを抽出する事を諦め
自社でセラミドと似たような構造と機能を持つ成分を開発
合成する事に成功しました。

またそれは、水に溶けにくいという問題を化学的に解決し
少し工夫をする事で、化粧水にまで配合する事ができたのです。
花王のセラミド配合商品に、「セラミド」の成分名の表示がないのは
こうして化学的に類似物質として合成されたものだからだったのです。
最初に開発されてソフィーナに使われたのが
「セチルPGヒドロキシエチルパルタミド」
という成分名称でしたね。
今では、数種類の素材が開発されているようです。

他にも
現在は原料メーカーの力によって
類似した構造を持った成分が開発されてきていますが
これらは全てセラミドの表示名にはならず
ユーザーにとっては非常に分かり難い状況になっています。

また、溶解性の問題は必ずしも完全に解決にはならず
「糖をくっつけて溶解性をあげる」
「油の性質の部分を違う物質に置き換える」
「端っこに水に溶解するような成分を結合させる」
といった研究がなされていますが
その構造上の違いから、果たしてセラミドと同様の機能を果たすのか
疑問を持つ技術者も多いのが現実です

*

最後に三点目の現実です。
『配合しても、あまり化粧品として良い使用感にならない』

この成分は、上でも書いたように大変高価な素材であるにも関わらず
実は化粧品中に配合しても
あまり使用感的として体感できないという問題点を抱えています。
つまり、五感的に訴える要素が少ないのです。
という事は
メーカーとしてはユーザーにすぐに分かるメリットがない、という事。

例えば、ヒアルロン酸であれば少量でも配合すれば「ツルツル」とした使用感が得られ
それなりに五感で分かる効果を与える事ができるのですが
セラミドは体感できる効果が薄いために
あまりコストをかけてもメリットが得られないという
企業側の都合だったのです。

セラミド配合化粧品のコンセプト毎の特徴

以上でセラミドについて色々と書いてきましたが
確かにこの成分の効果が
スキンケアにとって非常に有効な成分である事は、間違いありません。
保湿にとっても重要な役目を果たします。
しかし、上で書いたような問題を残している事を十分理解し
市販の化粧品を目のあたりにした時には、次のような事に注意を払わなければなりません。
市販商品の謳い文句や
広告に書かれているセラミドコンセプト成分毎に分類してみました。

1.ウマ由来など天然由来セラミド配合コスメ

本来の姿のままのセラミドとして期待はできるが
もともと水にほとんど溶解しない成分であるため
現状では、効果が期待できるほどに配合されている商品はマレである。
特にウマセラミドは
原料としてメーカーに提供されている時点で既に水溶液となっており
原液でもない限り、セラミドとしての含有量に期待はできない。。
また、非常に高価な素材である事を考えると、商品への配合量の疑問はさらに深まる。

2.ダイズやユズなど植物由来セラミド配合コスメ

エキス中に含まれるセラミド類似物質は極微量である。
これも、原液で使用しない限りは
効果は期待薄。

3.「セラミド○」配合コスメ
*○内は数字

こうした成分表示がなれているものは
合成ではあるが、セラミドの本来の構造を忠実に再現された
100%の原料と言って良い。
しかしながら、溶解性の問題はそのまま残されており
技術的に化粧品へ配合できる量は微量であり
果たして全ての商品が謳い文句通り効果が得られるかは、疑問がある。

4.「○○スフィンゴシン」や他の表記の擬似セラミド配合コスメ

化粧品への配合はしやすい成分として作られており
効果的な配合量にも期待は持てる。
ただし、セラミドと同じかという点には疑問が残る。

*

という事で
ユーザーはセラミド配合化粧品に対して
こうした注意をしなければならないといったお話でした。

結論として
もしも現時点で選択肢のアドバイスをするとすれば

例え類似物質と言われ、全くセラミドと同じ構造でなくても
皮膚の保湿という観点から見た場合
期待される効果は、十分に発揮していると考えられます。
であれば
現時点では十分な配合量が可能な擬似セラミドが
もっともお肌に効果的な選択肢と言えそうです。

少なくとも
謳い文句だけの”にわかセラミド商品”よりは
期待感は大きいと考えて良いでしょう。

*

最後に
生体構成成分のセラミドは
その構造から、皮膚なじみが良く吸着しやすいのは事実ですが
結果的に皮膚と同化し
皮膚の構成成分となる訳ではない事を
忘れないで下さい。

もしもこの手の謳い文句を掲げている商品をみかけたら
要注意ですよ。

この記事を美里所長さんが書かれてから、10年以上経った2021年現在、まだまだ数は少ないですが、「セラミド高配合」を謳った製品が登場していますね。
そして、美里所長さんもセラミドの可能性を追求した、新しいエマルジョンを開発中です!

そうそう、2006年当時は、セラミド配合の化粧品の使用感はイマイチだったようですが、個人的には、美里所長さん開発のセラミド高配合コスメの使用感は、花丸印ですよ。
(処方採用してくれるお客様が増えると嬉しいな!)

ゆっきー

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