美里康人
まだそんな質問がありますので、わかりやすく解説。
先日twitterでつぶやきましたが、通販系のスキンケアコスメにはまだまだ「◯◯種の成分を配合!」といったPRを前面に出されているコスメや健康補助食品がよく見られます。
最近でもこういったコスメはどうなのか、化粧品企画の方などにも質問を受けることもありますので、以前にも解説しましたが化粧品の場合はどういう設計になっているのか、もう少し理解しやすく説明しておこうと思います。
もちろん、こうしたコスメの良し悪しについては、どういう仕組なのかメカニズムを理解した上で、ユーザーさんご自身で判断下さい。
この記事の目次
発祥は?
こういった、製品に含まれている成分の数を競うかのような化粧品PRは、どこから始まったのでしょうか?
私自身も、そのキッカケなどは明確に記憶していません。
ただ、私が子供の頃からの昔に記憶しているテレビCMに、こんなのがあったのを覚えています。
■リンク先)
https://www.yomeishu.co.jp/
皆さんもよくご存知のこの養命酒、14種類の生薬が含まれているというCMは当時からテレビでもよく目にしたものです。
商品の宣伝ではありませんので、昔からあるこの製品の効果は私には分かりません。
ただ、親戚の家に訪問した際にご自宅に置いてあり、興味本位で少し舐めさせて頂いて生薬のにおいと味が凄くて、子供心にうひゃぁ・・・となったことを鮮明に覚えています。
今ではこの「14種」という数字に驚かれることはないと思いますが、このCMでたくさんの生薬成分が含まれているという認知を得て、今も長く愛されて続けているのは間違いありません。
これが化粧品業界の販売戦略に繋がったかどうかは分かりませんが、なんらかの影響を及ぼしたと言えるのではないでしょうか。
で、今回のお題の説明にあたって、この「14種類の生薬」とはどういうことなのか解説していきます。
抽出されたエキス
さて、この養命酒のような製品の場合、生薬成分はどんな感じで配合されているのでしょうか。
おっと、ここでこの疑問の文章がすでに間違っていることに気付かれた方は素晴らしい!
実はこの養命酒の場合、生薬エキスを「配合」という言葉は不適切。
なぜなら、生薬である薬草(乾燥葉など)を漬け込んだ原液をそのままを製品にしてあるため、厳密には“配合した”という言葉は合っていません。
以下に工程を絵にしてみました。
製品のHPにもこのように説明されています。
専門用語で、こうして抽出したものを「チンキ」と呼んでいます。
成分の抽出が良いように、漬け込んだ液にエタノールが含まれていたのか、それとも後からエタノールを配合して「酒」とされたのかは分かりませんが、いずれにしても生薬を漬け込んでエキスを製造し、そこから薬草を除去(濾過)して味を調整するための成分を配合して作られてもの、ということですね。
後で化粧品の成分配合の解説で説明しますが、ここで以下の数字を覚えておいて欲しいのです。
“薬用”と指定されている通り医薬品ですので、生薬から抽出された有効成分の含有量の記載がありますね。
この成分を全て足し算するとトータルの成分含有量は1,452mgになり、およそ1.5gの成分を含んでいることになります。
表記の通り“60mL中”となっていますので、%で言えば「約2.5%」の有効成分成分が溶け込んでいるわけですね。
この数字をまずは覚えておいて下さい。
化粧品の美容成分(植物エキスなど)配合
養命酒の生薬配合のケースをここまでお話してきましたが、ユーザーの皆さんの中では化粧品の「◯◯種の成分配合!」という製品はこのようなイメージを描かれているのではないかと思います。
中には50種類とか、一時は100種類を超える成分をアピールしている製品もありましたね。
まぁでも、さすがにこうなるとどこかで本当だろうか・・・と疑いの目でみる部分もあったかもしれません。
なんとなく感じておられたことは、間違いではなかったと言えます。 それは以下の工程説明をみれば理解頂けるでしょう。 先程の上の工程と見比べて頂ければ理解しやすいでしょう。
つまり、植物を漬け込んで作られた生薬のエキスが原料として供給され、それを化粧品にひとつひとつ配合しているというメカニズムです。
全く違うということが、お分かり頂けたでしょうか。
50種類の場合、そのエキス原料を50種類配合して化粧品を作っているということになります。
ということは、それぞれを仮に1%ずつ配合したとすれば、50種類で50%になります。
100種類だと、あれ???となりますね。
エキスだけで100%の化粧品などあり得ませんので、それぞれは1%も配合されていないことが明確になってしまいます。
さらに言えば、この植物から抽出するエキス原料は、養命酒のように水を基剤にして抽出するのではなく、成分がよく抽出されるようにBGが50%程度含まれています。
ということは、1%配合だと50種類でもBGが半分の25%も含まれていることになりますので、これはあり得るようで実は明らかにおかしくなります。
なぜなら、25%もBGが入っている化粧水など、使用感が気持ち悪くて化粧水としてあり得ないからです。
もっと言えば化粧水なら使用感が気持ち悪いだけで済みますが、これが美容液や乳液といった乳化製品ならもう設計としてあり得ません。
なので結論を言えば、それぞれは1%も配合されていないということを自らPRしていることになるわけです。
厚労省からの指導
今回のお話も締めになりますが、ここまでの解説で立てた仮説では“エキス原料を1%配合”としても、あり得ないと謎解きをしてきました。
でも、ここで上で覚えておいて頂いた数字が出てきます。
抽出されたエキスは、養命酒の場合でも2.5%程度の有効成分となっていましたね。
これはかなりしっかりとした製造方法で、有効成分濃度としても十分濃厚になっています。
ユーザーの皆さんには知らされていませんが、一般的に私達が手元にくる原料のデータで目にする数字は、エキス原料でおよそ有効成分量は平均して「1%」程度です。
ということは???
数字が苦手な方でも、もうお分かりでしょう。
化粧品にこれを1%配合したとしても、製品中の有効成分の濃度は0.01%ということになります。
--えー! たったのそれだけ?
まぁ、この数字は必ずしも少ないとは言えません。
十分な効果!とも言えませんが、有効成分の質によってはこの程度含まれていればある程度の美容効果の期待値はゼロとは言えません。
例えば、twitterでも少し話題になっている「グリチルリチン酸2K」。
これは甘草(カンゾウ)という植物から採取される有効成分のひとつですが、0.01%配合してあげればある程度の肌荒れを防止する効果に期待できます。
また、この含有量であれば、化粧品を分析すればその有効成分は化学分析機器で検知できる範囲です。
ですので、厚労省からは美容成分が配合されていることを商品に明記するのであれば、1%(有効成分として0.01%)以上配合することを指導しています。
実際には分析してみないとバレないため、市場ではほとんど守られていませんが・・・。
とはいえ、せめて種類をいくつかに絞ってこの%で配合してあるのならまだ言い訳もできますが、上の計算通りたくさんの成分がズラズラ並んでいるとそれすらも守られていないのですから、これは疑いの目でみられても仕方ありません。
まぁ、仮に10種の生薬成分配合が謳われているコスメだとした場合、この規定に従って正しく作られていれば、トータルで10%配合されていることになりますが。
実は10%も配合すればかなりエキスの茶色い色が製品につきますので、そのコスメの色をみればほとんど判断はつくと思います。
もう結論は文字にするまでもなく、50%や100%になればエキスの真っ茶色のコスメになりますので、いわずもがなと分かってしまいますよね。
最初にご紹介した養命酒が、かなり凄い色をしていますよね。
あれがエキスの色ですから、あれを10倍に薄めて10%にしたとして、かなりの色になることは想像できますよね。
その程度の色がついているコスメなら、養命酒なみとは言わないまでも効果への期待度も高まると判断して良いでしょう。
一度、お手持ちのコスメを何かに出してみるのも勉強になるかもしれませんね。
ただし、それを見越して“カラメル”といった色素でらしい色がつけられていないことも、念のため成分をみて確認して下さい。
これもひとつの製剤テクニックのひとつですので。
価値ある市販コスメを探し出す一助になればと思います。
ではまた次週。
by.美里 康人