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「混合植物エキス」ってなに?

混合植物エキス


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美里康人

あまりに耳にしたことのない「混合植物エキス」という言葉
有効性に期待できる高配合が可能になる原料とは

前回の話題では、化粧品業界の「◯◯種の成分配合!」といった特徴をアピールされている製品について、課題を提供致しました。
でも今回は、こういった製品の中にもまだきっとユーザーの皆さんが成分の効果に期待を寄せて良いコスメもあるというお話をしたいと思います。
ただし条件がありますので、きちんとご理解頂ければ参考になると思います。

それぞれにエキス原料を配合

前回の話題で、生薬を漬け込んで作られた養命酒のような濃厚な製品と化粧品とは、植物エキス成分の含有量の意味が全く異なるといったお話をしてきました。
ですので、植物エキス成分の種類を少なく絞り込み、その成分の効果に特化してしっかりと配合してあるコスメにこそ期待の可能性があるという説明でしたね。

例えばこちらのサイトでは、化粧品企画のパイロット製品として2アイテムだけ化粧水と洗顔フォームを販売していましたが、化粧水の方には肌荒れ改善に効能を絞り込んで、アロエエキスとシソエキスの2種類を10%ずつ配合していました。
合計で20%になりますので、前回もお伝えした通り植物の有効成分としては0.2%ほどとなり、それなりに有効性は期待できたかと思います。
もちろん製品の色もそれなりに濃く、淡い褐色がかった色が特徴の化粧水でした。

この配合量だとBGが半分の10%となりますので、使用感もちょうど良い保湿感となることで、化粧水の設計としてはこの辺りの配合量が限界と言えると思います。(だいたい、市販コスメのBG量はこの辺りです)

と、売るための製品として開発したわけではなく、すでに在庫はなくなりましたので、ユーザーの皆さんには申し訳ありません・・・。

複合効果に期待したい!

さて、この現実を踏まえて、美容成分はやはり何種類か配合して複合的にスキンケア効果に期待したいと思うのは、ユーザーの皆さんの心理として当然のことですよね。

でも、何種類もエキス成分を配合すると、前回の解説の通り当然のことながらそれぞれの配合量は少なくするしかなく、本末転倒・・・と。

ここで前回からお読み頂いている方に、ひとつ面白い提案をしましょう。

養命酒を生薬エキス原料と見立てて、あれを化粧水に10%配合したら?

そう、養命酒はまさに私達が原料メーカーさんから手に入れる植物エキス原料よりも濃厚なくらいの生薬エキスそのものですから、あれを化粧水なりに10%配合したら凄いんじゃないでしょうか?

・・・という提案。

いや、早合点は困ります。
ここは手作りコスメをオススメするサイトではありませんし、お手持ちのコスメへの“一足し”もオススメしていません。
あくまでこれは推定のお話であって、決して実際にやらないで下さいね。
エタノールも14%含まれていますので、その辺りも気になる方もおられるでしょうし。

でもここで着目頂きたいのは、あれはすでに14種の生薬が含まれていることです。
そう、14種類の生薬成分がすべて10%配合されたことになるという事実です。
つまり、普通に化粧品の設計ならば1/10の配合量にしかならない1%ずつを配合しても合計14%にもなってしまうのですが、あれを10%配合するだけで一気に10倍の濃厚エキスコスメができるというわけです。

数学が苦手な方にもう一度分かりやすく書きますと、我々がこの手作りコスメのようなものを再現して化粧品を開発しようとすると、それぞれのエキス原料を10%ずつ配合して合計140%になってしまう計算になるということですね。
それが養命酒を水で10%に薄めてあげるだけで、世には絶対存在し得ない凄い化粧水ができてしまうというわけです。

いえ、もう一度念を押しておきますね。
養命酒はお肌への効果を期待して作られた製品ではありませんので、決して実際にやらないで下さい。
こんなのが流行ろうものなら、困ってしまいますので(苦笑)

「混合植物エキス」という原料

さて、何度も申し上げますが、今回の話題は化粧品に養命酒を利用しようぜ!というお話ではありません。

ここまで解説してきてお伝えしたいのは、私達の化粧品原料の業界には、実はこの養命酒と同じような考え方の「混合植物エキス」というものがあります。
ユーザーさんには、こういった例の原料が分かりやすいでしょうか。

植物エキス

引用元)
Cosmetic-Info
https://www.cosmetic-info.jp/index.php

原料のネーミングから想像できますね。
チロシナーゼ活性阻害効果を有する生薬を選びぬき、美白の有効性に混合抽出されたエキス成分です。

これだったら、それぞれの成分を高配合しなくても、この素材を高配合するだけでそれぞれの植物のエキスを高配合含有することができるというわけです。
こうした混合植物エキスはこういった海外原料をはじめ、いくつかの原料メーカーさんによって開発されて、化粧品原料として使用されています。

何種類もの生薬を一度に漬け込んだからといって濃度には限界があるでしょうし、それぞれが単体と同じ濃度レベルの有効成分が抽出されるとは言えませんが、それでもひとつひとつを高配合するよりかは効率よく有効性に期待できることになっています。

こうしたコンセプトの原料、ユーザーの皆さんでも全成分を活用すればみつけることは不可能ではありませんが、原料メーカーさんによって様々なノウハウの組み合わせで設計されていますので、ちょっとそれは困難かもしれませんね。

まぁ、とはいえこういった素材が活用されたコスメに期待を寄せたいところですが、せっかくの良い素材をまやかしに使用されることもありますので、注意が必要な解説も最後に少し。

種類をかさ増し

今回は前回の植物エキス美容成分に対する期待の擁護をしてまいりましたが、前回の記事と繋がってしまう使い方をされるというお話にも、触れておきたいと思います。

ここまでの解説は、たとえ一種類の原料であっても、うまく使いこなせば多種類の成分の有効性をいかした高配合の美容成分を達成しやすくなるというお話でしたね。
ところが、既にお気付きの方もおられるかもしれませんが、これを逆に利用することも考えることができます。

つまり、ひとつの原料を配合するだけで、たくさんの美容成分名が並べられるとことになりますね。
例えば「50種の美容成分配合!」と種類の数をアピールしたければ、5種類のエキスが含まれた原料を10個配合してあげるだけで、50個の成分名を表記することが可能になります。
原料を10個ですから当然それぞれも少量ずつしか配合できないわけで、となると本当に本末転倒なコスメになってしまいます。
と・・・こちらをご覧になられている化粧品企画の方々、決してこんなところをご参考になれないで下さいね。
よろしくお願い致します。

というわけで、たくさんの数字をPRされてあるコスメがそうした手段を講じているかどうかは解かりかねますが、ストーリーとして十分にあり得ると思っておくだけでも参考になるかと思います。

今回はここまで。
ではまた次週。

by.美里 康人

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