週3で異なる目線の美容記事をお届け
今回は、化粧品をお試しする時の参考になる話
スキンケアコスメの
テイストの手法について
意外とアバウトな方が多い・・・
今回の話題ですが、もっといえば実は私たちのようなプロとして美容業界で仕事をしている方々でも、これから解説するコスメのテイスティングにテキトーな人がたくさんおられ、知っておくとかなり鼻高々なためになる話題です。
普段の使い方とテイスティング
お題の通り今回は、化粧品をお試し、いわばテイスティングする時の大事なお話です。
-そんなの、今さら人に教えられたくもないですが…。
おっしゃる通りで、もちろん普段皆さんが製品をお使いになっているそれぞれの使い方や塗布方法について、ここで意見するつもりは毛頭ありません。
むしろ「化粧水の塗布はコットン派? それとも、手によるパッティング派?」など、巷でよく議論がなされる話題についても、ぶっちゃけ私に見解が求められた時は「皆さんのお好きなやり方で良いと思います。」とお答えしていますし。
「手の平に先に成分が浸透してしまってムダ…」だとか、「コットンに染み込んでいる分がムダ…」などなど、色々その理由や理屈が議論されたり。
挙げ句は、コットンの繊維が…なんて、なんだかメーカーのBAさんの受け売りのような知ったかな理論をこねくり回し、と…。
でも正直、どーでもいい…。
いえいえ、テキトーなお答えを書いているのではなく、どの理由も論理的には大した問題ではないというのが、私の経験則からの結論。
化粧品というのは、嗜好的要素が強いアイテムです。
皆さんが毎日やっているスキンケアがもっとも心地よく感じ、そのプロセスがトータルの癒し時間なわけですから、もっとも自分が心地よいと感じる方法、そして独自の演出で使用すれば良いんですよね。
子供ちゃんのおしめを変えながらの忙しい時は、手でパシパシーっ!パン、パン!な日もありますし、仕事でヘトヘトになってお風呂にゆっくり浸かった後は、コットンパックさながら目を瞑ってゆーっくりとお肌に染み込ませる時間で癒されたりと…実生活の中は、365日の喧騒を縫うようなライフワークですからね。
朝まで飲んだ帰りなんて、ファンデも落とさずベッドにバタンキュー…なんて日もあるんですよ(笑)
いわばそのどれもが間違いではないし、正解なんてありません。
結論としては、こういった介在してくる要素の方が使用方法による差異の影響よりも大きいため、さしたる問題にはなり得ないという意味です。
と、また話が横道に…。
というわけで今回の話題はそういうことではなく、新しい化粧品を使ってその性能を見極める時の、使い方のお話です。
つまりは、まさに「テイスティングの手法」という意味ですね。
言ってみれば、化粧品探しにコスメカウンターにいくと、そこではよくBAさんが腕をとって化粧水やクリームを丁寧に塗布して馴染ませてくれますよね?
そして「いかがですか? しっとりと潤いを感じますでしょ?」なんて。
とんでもない!
人につけさせてコスメのテイスティングなんて、冗談じゃないですね。
スキンケアコスメのテイスティングは、皮膚に乗っけて塗り広げていく瞬間から始まっているのですから。
ここを五感で感じずにその製品の良し悪し・テイスティングなんて、あり得ません。
業界人や、語っている人は正しい?
まー、でもね、実は先に書いたようにお恥ずかしい話、私たち業界人の世界でもひどい人は多いんです。
私は職業柄ということなんでしょうが、化粧品をテイスティングする人の所作を、じっくりと観察しています。
その上で、その人の美容業界人としてのスキルの判断材料としています。
だって、それはもっともなお話。
化粧品の企画に携わっている職種の方なら、その商品の使用感の特長や、方向性が分からずに企画などできるはずもありません。
営業の人だって同じ。
化粧品の場合、自分が売り込もうとしている商品の良いところや差別化点も自分が実感していなくて、言葉に説得力など産まれません。
当然、開発や研究に携わる人は言うまでもないスキルですね。
ところがこの人達も、かなりの方が「ヲィヲィ…」なのが現実。
まぁ、つまりはこの人達、実は化粧品のことを好きでもないし、自分が今手にしているコスメがどんな性能を持っているのか、真剣に知ろうとする気はさらさらないということの表れ、ということになりますね。
結局は、無意識のうちにその仕事に対する姿勢というのが、その所作に出ていることになっているんですね。
そういう意味では、研究者として新人のいろはねクンは前職が某大手メーカーのBAさんだけあって、スキンケアコスメをテイストする時の所作が、さすがプロでした。
手に塗布するにしても、じっくりとなじませていくところなど、しっかりと性能をみようという気持ちがよく分かります。
そうはいっても、まだまだ粗削りなところが多く、「それじゃダメダメ・・・」なんて最初は叱咤したものですが。
前置きが長過ぎですね…いい加減本題に入りましょう。
まずは準備と注意事項
さて、では新しいスキンケアコスメを手にとった時、どんな方法でその性能を見極めれば良いのでしょうか。
もちろん、そこに自分の好みが入っても構いません。
その性能に方針がある職務の私達と異なり、自分が欲しい使用感さえきちんと見いだせればそれで良いのですからね。
でも、方法は誤ってはいけません。
誤って評価してしまわないためにも、まずは始める前の原則があります。
1.テイストはファーストコンタクトのみで判断すること
2.同じ個所に重ね塗布しない
3.塗布箇所の匂いをかぐ事をしない
4.神経を集中させる
5.他の方と言葉を交わさない
この中のいくつか、身に覚えがありませんか?
なんでもないことのようですが、美容のお仕事をされている方でも、このいずれかに該当する行為をしてしまう方が多いのです。
あらためて、その意味を解説しておきましょう。
1:
人間の五感の全ては、感じたセンサーから脳に入ってから神経へと伝達されるプロセスをたどります。
そのため、一度感じた感覚は脳に記憶され、二度目以降は「慣れ」という要素が関与してきます。
自分のつけた香水の強さが鼻のセンサーで分からなくなったり、辛さに慣れてくる味の感覚も同様で、化粧品の使用感も二度目以降は慣れが生じて評価に狂いが生じてきます。
2:
これはもってのほか。
とはいえ、分かっているはずなのに、一度目のテイストで判断に迷うと、意外と無意識のうちに同じ個所に二度づけしてしまうことをよく見受けます。
この場合は、一度その箇所を洗浄してリセットし、テイストし直すことをお勧めします
比較する時に同じ個所に他の製品を塗布するのは、もう言語道断。
3:
この行為は、かなりの方がついやってしまう行動ですね。
実際の化粧品の使用では、その塗布箇所に鼻をくっつけてクンクン嗅ぐことなど致しません。
お顔に塗布して漂う香りと、塗布箇所に鼻を近づけてクンクンする匂いとは全く別ですので、香料のプロ(調香師)の方でもない限りそれで判断はできません。
仮に香りのない化粧品でも、「原料臭が気にならないかを・・・。」などとおっしゃる方もおられますが、自分のお顔に鼻がくっつくわけではありませんので、その箇所を懸命にクンクンしたところで、製品がもつ原料臭が使用の阻害になるかの判断にはなりません。
(深層心理的には、この行動が真剣にコスメを評価しているかのような無意識のアピールの表れだそう)
しかも、そんなことをしている間にも、テクスチュアはどんどん変化していきます。
その変化を見逃してはなりません。
4:
化粧品は皮膚上で秒単位で水分が蒸発し、そして皮膚になじんでいき、変化をしていきます。
とにかく行為中に他のことをして気を逸らせてはいけません。
5:
1.で書いたように、使用感は脳の神経とのやりとりが大きく関与していますので、言葉を交わすことで神経が集中しない意味もありますが、ほかにも他の人の言葉を耳にするとその人の評価が脳に影響を受け、偏りが生じてしまいます。
いわゆるプラセボ効果です。
そしていよいよテイスティングの手順ですが。
今回はもう少しページを割く必要がありそうですので、実際の手順は次回に持ち越しましょう。
申し訳ありません。
by.美里 康人