天然のミツロウは
アレルギー物質を含んでいます。
ただ、まだ要因は完全に解明されていません。
精製(白色)ミツロウならば大丈夫なのでしょうか?
ミツロウによるアレルギー
ハチミツと同様に、蜂の巣から得られるミツロウにはアレルギー性があることは、皆さんもご承知のことかと思います。
で、ハチミツで発症するアレルギーの原因は、長く花粉によるものと言われてきました。
それは、ミツバチが色んな花の花粉を運んでくるため、その花の中に含まれた花粉が原因とされてきた時期がありました。
ならばと、今でもレンゲなど花の種類を限定した環境で作られたハチミツは、安全だと主張する方もおられます。
とはいえ、ミツロウは水性成分のハチミツとは異なって油性ロウ類ですので、これが全ての原因と考えるのは早計といえます。
もちろん、だからとこれが間違いとはいえません。
こうして産地や製法の異なるハチミツに変えることで、症状が改善された患者さんの例も多数報告されていますし。
ただし、これはあくまでハチミツ・ミツロウによるアレルギーの一部を解決したに過ぎず、これで全ての方が安全に使えるというわけではないことが、様々な臨床試験で分かってきています。
そんな中で、一部でハチミツによるアレルギーはいわゆる不純物として含まれる、花に散布されていた農薬だと主張する人が現れたり、ミツロウに関しては商品に混合されている石油由来のパラフィンワックスが原因だと発信される方もおられます。
さすがに、こちらのブログを愛用頂いているユーザーさんの中にはこんな都市伝説を信じる方はおられないと思いますが、何かといえば化学物質を非難する自然派論者さんに科学的な根拠はないので、にわかに信じてはいけませんね。
精製することで解決か?
このような背景の中で、ハチミツ・ミツロウいずれのケースにしても、論点としては不純物が要因であるとされてきたことは一貫していましたので、精製することでこの問題は解決すると言われてきました。
特にミツロウに関しては、化粧品業界でも数十年前から未精製の黄色いミツロウは使われなくなっており、酸により脱色した白色精製ミツロウに変わってきています。
つまり、これで解決したものと考えられてきました。
私個人的には、ミツロウは融点が62℃から65℃と非常に高いロウですので、処方設計に使う機会はありませんが、大手の原料メーカーさんも取り扱われているだけに、私もこれを信じて疑いませんでした。
ところが、最近になってまだそれでもアレルギー症状を訴える方が存在していることが明らかになり、精製だけでは解決していないのではないかといった提言がなされています。
今回、その症例報告の論文を拝見しましたので、ご紹介していきます。
その論文を要約すると、95名の接触アレルギー患者さんに対して17名にミツロウによる接触アレルギー反応が得られ、そのおよそ半数は精製されたミツロウでも陽性反応を示したと報告されています。
<ソース:Contact Dermatitis 81巻3号 2019>
要因はプロポリス
では、ミツロウ中のどの成分にアレルギー性があるのでしょうか?
この試験では陽性の患者さんに対し、同様にミツバチが巣の中で生成するプロポリスでパッチテストを行っていますが、全ての方に陽性反応が出たということです。
プロポリスとは、このミツバチの巣を補強している部分にあります。
プロポリスも多くの成分を含む物質ですが、確かにプロポリスはミツバチの巣に塗布されている物質で、水には非常に溶けにくい樹脂様成分を多く含みます。
となると、これが油性のミツロウに不純物として混在していることは十分に推定できますので、現実味のある根拠ですね。
まぁ、n数がさほど多くない臨床ですので、さらに検証を重ねて事実関係を明確にする必要性は感じますが、ひとつの断片を表しているのは間違いありません。
確かにすいぶんと以前にプロポリスを化粧品の美容成分として配合したことがありますが、モニタリングを行った一部の方に皮膚トラブルが出て、配合量を微量にまで落としたことがありました。
ミツバチ由来成分についてのまとめ
これまでの歴史的背景、そして今回の論文を踏まえると、ハチミツやミツロウのアレルギー物質はプロポリスに含まれる樹脂様の油溶性成分に由来する可能性が高いと推定されそうです。
また、ハチミツは水溶性成分ですが、巣の中に濃縮されているプロポリスの一部が微量レベルで溶け込んでいるのは当然ですので、これが影響を及ぼしていると考えるのは理に叶っています。
そして現時点では、このプロポリス中に含まれるどの成分がアレルゲンであるのか、まだ推定の域を脱していないのが現状です。
とりあえず、脱色や精製といった方法では完全に除去されていないこと、皆さんも念頭に置いておかれて下さい。
とはいえ、いずれにしてもこれらはミツバチが作り出したのではなく、ミツバチが様々な樹木や花から採取してきた植物が由来になっているのは間違いありません。
アレルギーは、ほんの微量しか含まれていない成分でも反応してしまうと発症するのが恐ろしいところ。
つまり、刺激物による接触皮膚炎やカブレなどと違って量の多少に関わらず発令し、場合によってはアナフィラキシーショックにより生命を脅かす危険性を秘めていますので、留意されるのがよいでしょう。
特に免疫機能が脆弱な方は、アレルギー物質を含む天然素材に対しては細心の注意を払われることをお勧めします。
まだまだ欧米では、ナチュラル系商品の中にミツロウが使われた製品が多いため、とりあげてみました。
では、また来週。
by.美里 康人