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乳液の意義 ~番外編~

乳液10

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美里康人

今回は乳液の理屈を理解した上で
選ぶポイントの解説

先週は短め記事で、失礼致しました。
じゃ、今週はガッツリ?

ご期待頂いた方には、申し訳ありません。
毛が生えた程度になるかもしれませんが、ご容赦下さいませ。

もう最初の記事から数えると分厚い本が何冊もできあがる量になっておりますし、物足りなさを感じておられるユーザーさんは、ご印刷頂いて過去記事でお学び頂けると、結構なスキンケアのヒントが発掘できるかと思います。

期待に反する乳液

前回の記事で、本当に乳液に求めるスキンケア理論のメカニズムのお話を致しました。

ならば、乳液だったらどんな製品でもOK???

そんな課題に、今回は踏み込んでいきましょう。
で、まずは“できれば避けたい製品の理屈”を説明していこうと思います。

前回の解説で、乳液は水分の浸透性を高めるためのアイテムだという意味の説明を致しましたね。
ということは、逆に作用する要因がある“成分”は避けたいということになります。
つまりは、浸透を阻害する要素ということ。

ここでこのブログの愛読者さんならば、スパっとひとつのお答えが出てきたかと思います。

はい、ポリマーですね。

もちろん既に何度も記してきている通り、ポリマーを悪者成分として吊し上げているのではありません。
お肌に悪さをするわけではありませんので。
でも、こちらの過去記事でも述べてきた通り、ザルを水の中にエイヤーと沈めてみた時の抵抗を思い起こして頂ければ理解頂けます。

く、苦しいのか?ポリマー(FILE No.030)
https://cosmetic-web.jp/column/mail-magazine-30/

ザルを水の中に沈めると網目の抵抗でゆっくりと沈みますし、もっと身近な例では虫取り網で水の中をガーっとやると抵抗が大きくて網の根本がひん曲がってしまいますよね。
そう、いくら被膜になっているわけではないスケスケの隙間だらけとはいえ、やっぱりある程度の抵抗になるということです。
これつまり、お肌の中に浸透する時には、全然入っていかないわけではないけれど、いくらかの阻害になってしまうということになります。

--どれ位の抵抗になるの?

あるあるな素朴な疑問かと思いますが、目に見えない世界の分子の問題なので、さすがにそれは私にも分かりません。
申し訳ありません。

いずれにしても、このポリマーが合成だろうが天然だろうが、阻害のひとつの要素になるのは否めないと理解すれば良いですね。
乳液らしくトロミをつけないといけないという原則がありますので、なかなかコレが配合されていない市場の乳液は見当たらないかもしれませんが、みつかればお宝モノと思って頂ければ良いかと思います。

油分、少な過ぎっ!

ポリマー

次に障害となる要素は、先日の解説のメカニズムに満たない条件です。

きちんと見た目も乳液になっているのにそんなことがあるのか?と言われれば、実はあるのです。
それは、「細胞間脂質に湿潤(ヌレる)するだけの油分が配合されていない場合」です。
皮膚への水分補給は細胞間脂質の部分に拡散していかないといけませんので、同質になる油分(オイル)成分がうんと少ないと達成できません。
これはひとつのヒントとして、直近でクリームのお話を書いた時に出てきたことが見極めの参考になります。

そう、油分が圧倒的に少ないと“白さが薄く半透明”という入浴剤の解説のところです。
明らかに見た目に白さが足りず半透明だったりすると、疑いの目で見てみれば良いということになります。

疑ってみるという事で明らかにNG!と書かなかったのには理由があり、実は例外も存在しているためです。
それは、超がつくほどナノレベルに油分の粒子が小さい製品です。
これにはリポソームがそれに該当し、コーセーさんなどの製品にもみられています。
こういった例外もまれにありますので、気になったら“ナノ”だとかといったキーワードでさらに製品のPRや情報を精査してみれば、ある程度は真実にたどり着けるかと思います。

はじいてしまう製品も

そして最後には、これはちょっとあり得ないケース。

乳液というカテゴリーの製品であるにも関わらず、お肌に塗布するとアレレレ???とオイル成分が分離してきて、玉のようになってお肌上ではじいてしまう製品です。
これを見極めるには、お顔に塗布する前に手の甲や二の腕にまずは多めに塗布して頂いて、よ~く観察しながらなじませていくと、スーっと入っていくかどうかを観察することで見極められますよ。
製剤にあまり工夫が凝らされていない製品だと、この時点で小さな玉のようになったオイル成分がお肌の上に浮いていたり、ヌルヌルっとオイルが分かれて別々にお肌の上をすべっていったりといった現象が見られるかと思います。

これは今度は油分ではなく界面活性剤が不足していたり、この界面活性剤の性質選定が間違っているといったケースがあり得ます。
特に、合成界面活性剤不使用などといったコンセプトが謳われている製品は、この辺りに着目して見極めてみられて下さいませ。

これがあまりオススメできないのは簡単なことで、オイル成分が遊離してしまうと水分が手の上ではじかれて、まるでお肌に水をぶっかけた時のように玉状になってはじいてしまうためです。
こうなると当然水分がお肌の中に入っていくこともできなくなりますので、要注意です。
油分と水分が一緒になってお肌の中になじんでいってくれないと、意味がありませんね。

そう考えるとリポソームは、やっぱり凄い・・・。
コーセーさんの回しモノか!とツッコまれそうですが、OEM会社の私にそんなわけはありません。
でも、本当にお肌にとって良い技術やメカニズムは褒めるべきですし、私達OEM会社も真似できることなら取り入れるべきと思っていますので。

で、リポソームがナノである特徴だけでなく、なぜ優れているかと言えば、これへの理解はそれはさほど難しくはありません。
羅列しておきましょう。

 1)油分粒子が極端に小さい
 2)メカニズムがDDS
 3)安全性

1)に関してはもうお分かりの通りで、油分の粒子が小さければ小さいほど、当然のことながら角質層への浸透は良くなるに決まっています。
一般的なリポソームはナノサイズが普通ですので、それはもう語らずともお分かりの通りです。

ただ、昨今は医薬品業界で開発されている、巨大リポソームと言ったエマルジョンに近いような大きさのリポソームもありますが、これはまだ化粧品の業界では開発に至っておらないと思いますので、おそらくユーザーの皆さんが製品で出会うことはないでしょう。

次いで2)
これももう説明の必要もなく、リポソームはもともとが医薬品の有効成分を皮膚への塗布だけで体内にまで届ける製剤技術(DDSと言います)ですので、むしろ浸透させずに角質層に留めておくのが難しいほど、浸透性に異論はない技術ですね。

最後に3)ですが、これもあらためて説明の必要性もなく、リポソームの設計は界面活性剤など使わずに角質層にもともとたくさん持っているリン脂質で作られていますので、皮膚に悪いことなどあり得ません。

とはいえ、「合わない方」が全くおられないわけではありません。
というのも、リポソームの設計の中心となる成分は「リン脂質(レシチン)」と書いた通り、脂質ですので油と同じような成分。
ということは、油(オイル)成分で毛穴トラブルを招く方は、合わないことがあります。
時に白ブツが出る方などはこれに該当しますし、私も自分が設計したリポソームでモニタリングした際に、このような現象が出る方もおられましたので。
ここは合わなければ諦めて頂く必要がありますので、留意されて下さい。

あと、ここまでリポソームのスゴ技な解説を致しましたが、実は結構ポリマーが使われているアイテムもありますので、ここも見極めポイントとして注意しておくと、自分に合う乳液に近づいていけるのではないでしょうか。
ポリマーってどういう全成分になっているか知る方法については、過去記事のコチラ

合成ポリマーは避けられるか

以上、言うほど長くなかったかもしれませんが、今回は番外編でまとめさせて頂きました。
ではまた次週。

by.美里 康人

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