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ナノの誤解(FILE No.078)

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◆◆FILE No.078 / 2008年5月配信◆◆

ナノの誤解

『ナノ』

いわゆるナノテクノロジーのことですが
さすがにもうこの言葉を耳にしたことはないという方は
おられないですよね。

ナノ、ナノと呼称される『ナノテクノロジー』とは
さまざまな素材をナノメートル(nm)というレベルのサイズにする事で
素材に新たな機能を持たせる技術のことを指します。

では『ナノサイズ』とはどの程度の大きさのことだったでしょう。

いま一度、大きさの単位を再度整理しておきましょう。

1km→1,000m
1m→100cm
1cm→10mm

この程度までは一般的で、大丈夫ですよね。

ここからがミクロの世界でさらに小さくなります。

1mm→1,000μm(マイクロメートル)
*昔はミクロンと呼ばれていた。

そして次がナノサイズです。

1μm→1,000nm(ナノメートル)

まぁ、こうなると私達の目に見える世界ではありませんから
想像もつかない大きさですね。

という事で、ナノテクノロジーとは
1mmの百万分の1といった極小の世界
素材をそんなサイズの大きさに加工する技術のことと理解して下さい。


さてさて、なんとなく頭の整理ができたところで
いよいよ化粧品技術についての今回の本題。

皆さんは『ナノコスメ』という言葉に
どういった効果を期待しているでしょうか?

おそらくは
「粒子が小さいから皮膚内部にまで浸透するコスメ」
という感じですかね。

当然、浸透して皮膚の内部で
あらゆる薬剤がすごい効果を発揮してくれる。
そして確かに
商品のうたい文句や宣伝文句には必ず
そういった類いの文字が大きく踊っているはず。

少しお話がそれますが
大手化粧品メーカーの研究機関が主導をとり
化粧品技術も新しい時代へと進化をとげ
シミやシワなど皆さんが大きな期待を寄せる課題も
かなりのレベルで原因の解明と解決策が模索されつつあります。

そんな先端技術の進化とともに
そうした真の意味で有効性が立証された化粧品に関しては
化粧品とは言えど、有効性をうたうことを認めるといった
薬事法改定への強力な打診も続いているところです。

そんな中先ごろ
皮膚への薬剤浸透技術についてひとつの指針が示されました。

というのも、大手メーカーが主導で
こうした先端技術の研究に寝食を注いでいるにも関わらず
なぜか小さな中堅メーカーが堂々と
『皮膚内部に浸透する先端技術コスメ』
などといったマガイモノ商売が横行しているからです。

その中のひとつが
粒子が超細かく皮膚の深部にまで浸透するというフレコミの
『ナノコスメ』なるモノ

つまり
最先端の医療の業界でDDSの研究をしている専門機関から
薬剤を皮膚から透過させる技術についての
指針が出されたというわけです。

あ、DDSとは何か少しだけ説明しておきましょうか。

DDS=ドラッグデリバリーシステム
の略で
病巣の患部に外部から薬剤を送り届ける薬剤透過技術のことです。

例えば、肝臓にガンが発見されたとします。
その肝臓にできたガンを薬で治療するには
患部に薬剤を塗布する必要がありますね。
でも、お腹を切って開けない限り
物理的にそこに薬剤を直接塗布するのはムリなお話。
それを、お腹を開くことなく
皮膚の外部から塗布するだけで
肝臓にまで薬剤を送り届ける技術のこと。

つまり例えば
ものすごく小さなサイズのカプセルに包んでおいた薬剤を皮膚に塗布することで
皮膚から経皮吸収させ
その後血管を経由して肝臓に達したところで
カプセルが壊れて薬剤が放出されるという感じです。

ようは、肝臓に達するまでの時間や経路をきちんと計算し
そこでタイミングよくカプセルが壊れるようにコントロールするという
私達の想像を絶する高等な技術です。
まだまだこの技術も進化の過程で
完成域に達しているわけではない途上の先端技術。

* * *

お話を戻しますが
そんな医療最先端のまだまだ未完な技術が
通販やNETで販売されている数千円のコスメで
さも再現されているかのようにうたい文句とされているのは
これはイカンという事。

さていよいよお話の核心に迫ります。
結論から書きますが
ナノコスメと謳われるナノ粒子を駆使した化粧品ですが
これが皮膚の内部にまで浸透などすることはありません

上で書いた学会にて提言された研究指針によると
たとえナノレベルの粒子であったとしても
ただそれだけで皮膚内部への浸透は果たせないということ。

前にもサイトでは書いてきましたが
一般的に皮膚を通過できる分子の大きさは
アミノ酸単体レベルが上限の500程度です。
これ以上の大きさの高分子は
皮膚を通過することはできません。
例えば分子量何十万・何百万レベルの
ヒアルロン酸やコラーゲンなども同様。

で、実際に分子量500というのが
どのくらいの大きさかというと
直径が0.2~0.4nm

ナノコスメと呼ばれている化粧品で謳われている粒子の大きさは
だいたい直径が100~500nm程度のもの。
まぁ、仮に千歩譲って(笑)
超細かい粒子が達成できたとして直径が2~4nmだとしましょう。
それでも分子量500の分子の約10倍

「10倍程度じゃん」
などと言わないで下さいね。

分子とは立体のものですから
『直径』のサイズが10倍ということになると
体積でいうとなんと1,000倍!!!

つまり分子量でいうとなんと50万に相当・・・。
悲しいかな分子量50万というと
もうヒアルロン酸クラスの立派な高分子・ポリマー。
そんな大きさの粒子のコスメが
浸透などするわけはないですね。

皮膚の内部まで薬剤を浸透させようとするならば
粒子の大きなだけでなく
さらに奥深いDDSシステムを研究
構築する必要があるという事です。

とはいっても
通常のクリームなどの乳化粒子は10μm程度の大きさ。
そうしたモノよりは角質層の深部程度に
物理的に入りこみやすくなっているのは間違いのないところ。
いわゆる
『皮膚なじみのよい浸透性コスメ』
といった感覚で理解しておけばよいでしょう。
怪しいうたい文句にはご注意。

このナノテク技術のさきがけであるコーセーの
最高級トップブランド「AQミリオリティ」でさえも
皮膚内部浸透などとはどこにも謳っていない事をお忘れなく。

いつも言うことですが、今日もあらためて。

マガイモノ商品から身を守るには
自分のチカラに頼るしかありません。

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