◆◆FILE No.012 / 2006年7月配信◆◆
この記事の目次
保湿剤の有名人~その2:ヒアルロン酸
前回より、コスメを購入すると皆さんがよく耳にする保湿成分について
本当の姿は実は何なのか
一つ一つ解明しています。
今週は、皆さんもよくご存知のヒアルロン酸についてお話します。
化粧品に使われるヒアルロン酸もその歴史は長く
既に業界では20年以上になる素材として君臨してきています。
最近は原液と言われるヒアルロン酸液が100均でも手に入るようになり
それが手作りコスメ仲間の間でもクチコミで広がり
ユーザーの間で脚光を浴びる事になったかと思います。
実はこのヒアルロン酸も、意外とユーザーの皆さんが知らない業界裏話があります。
今回はそういった事を中心に書き進めていきましょう。
*
ちなみに同じ業界の技術者仲間である角谷貴斗さんも
最近出されたご本の中で興味あるヒアルロン酸の裏話について書かれていますので
そちらも参考にしてみて下さい。
基本的なヒアルロン酸のお話
さて、まずは皆さんも既にご承知と思いますが、基本的なヒアルロン酸のお話を少し。
実は、ヒアルロン酸という物質が発見されたのはもう70年も前で
アメリカで牛の目の硝子体から分離されたのが最初でした。
ヒアルロン酸とは
N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸という二つの糖が反復構造単位となって直鎖状(まっすぐ)に繋がった多糖類で
通常は数百万という分子が繋がった高分子(ポリマー)です。
家庭でお砂糖が水分を吸ってネトネトになるように
この繋がったたくさんの糖のそれぞれが水分を吸う性質を持つために
全体として非常に多くの水分を保持する能力を持つ結果となるという訳です。
結果的に皆さんもよく耳にするように
自身1gに対して6リットルの水分を保持する能力を持っていると言われています。
ここで疑問の声が・・・
「え?ヒアルロン酸って原液がドローってした液体やし、既に水を持った状態やないん??」
実はそうではありません。
100均のモノも含めて、一般消費者の間で言われている例の「原液」は
実は100%のものではありません。
あれは既に100倍の水で薄めた1%の水溶液であって
抽出精製された100%ものは白い粉末。
これが原末となります。
(またカルトやんかぁ・・・ブツブツ)
ではあの例のドローっとしたモノが原液と言われる所以は???
あれは、もともと化粧品メーカーさんが粉末で扱うにはドロドロになって扱い難いために
原料メーカーさんが扱い易いように1%水溶液で販売を始めた訳です。
それが「原料としてそのままの形ですよ」という意味だったのです。
それがどこでどう変化したのか・・・
言葉って怖いですね。
さてこのヒアルロン酸ですが
実はその昔は鶏のトサカから抽出していました。
このトサカ由来のヒアルロン酸
今ではもう1gで2,000円以上もする高価な素材になりましたので
10年以上も前からほとんどの原料がバイオ合成で作られています。
「え?バイオって合成???天然素材じゃないん??」
はい。動物愛護ですよ(笑)
天然天然と、自然を壊してはいけません。
「合成」という言葉にも少し深い意味合いがありますが
その中でもバイオというのは生化学上の合成という事になります。
つまり、ストレプトコッカス属のある種の菌にはヒアルロン酸を合成する働きがあり
その菌の力を活用してヒアルロン酸を合成している訳です。
「え??バイ菌からできてるん???」
ま、そういう事ですね(苦笑)
*
そういえば、余談ですが今朝ほどおもしろいTVCMを見ました。
「当社の化粧品は全て自然の素材で作っています!」
社長が自ら大声を出して、握りこぶしでテレビで叫んでいます。
そう。
過去に自社の化粧品を食べて見せた例のメーカーさんのCMですね。
その後にすぐ
「ちゃらら~ん♪コエンザイムQ10配合で好評の○○シリーズ・・・」
と、画面インサート・・・。
コラーーーーーーッ!!!
コエンザイムQ10が天然かいっ!!(怒)
大笑いした朝のひと時でした。
ちゃんちゃん。
ヒアルロン酸の特性
ヒアルロン酸のお話に戻ります・・・
上でも書いたように、実はヒアルロン酸は高分子である「ポリマー」です。
ここで少し皆さんはひっかかりを感じたかもしれませんね。
またいずれはポリマーについての記事を書かせて頂きますが
ここでは一つだけそのポリマーの特徴を書きましょう。
「ポリマーは高分子であるがゆえに体が大きく、皮膚内には浸透しない。」
という事は、ヒアルロン酸は皮膚の中に入る訳ではないという事です。
皆さんの中には
”ヒアルロン酸はもともとヒトの皮膚内にもたくさん存在するのだから、この成分が配合されている化粧品なら皮膚が若返れそう”
と、なんとなく思っている方もおられるかもしれませんね。
事実、結構なメーカーさんがそういった売り文句を掲げています。
確かにヒアルロン酸のその性質を利用して
間接に注入する事で関節炎の治療にも活用されています。
他には、目の水晶体の奥の硝子体に多く含まれる事から白内障の治療にも応用され
医療の現場でも活躍しています。
ただ、これらはその部位に直接注入する事で治療に活用されるのですから
皮膚の表面に塗布したからといって皮膚内に導入される訳ではありません。
ここはしっかりと認識し、あくまでも化粧品としての役割を担っているのだと理解する必要があります。
つまり
「ヒアルロン酸は、皮膚に水分を与えるための優れた保湿剤である。」
という事ですね。
しかも水に溶ける素材ですから
「水で洗い流されてしまう」
という事も、念頭に置いておかねばなりません。
最近はヘアケアなどの流しモノ(洗い流す洗浄剤などのアイテム)にもよく謳い文句として配合されていますが
これらの効果はしっかりと見極める必要があります。
新しいヒアルロン酸
最後に最近の新しいヒアルロン酸の技術についても取り上げておきましょう。
下記の二つの新しいヒアルロン酸は
いずれも「浸透型ヒアルロン酸」といった印象を与える謳い文句をされていますが
果たしてどうなのでしょうか。
既存のヒアルロン酸に油の性質を持った成分を化学的にくっつけたものです。
どういう事かというと
皮脂も含めて、皮膚というのはもともと細胞間脂質・レシチンなど油性の性質を持ったたくさんの成分で構成されています。
そのため、皮膚は油性成分と非常になじみやすい性質を持っています。
という事は、水溶性の保湿成分に油性物質をくっつける事で非常に皮膚となじみやすなり
簡単に水で落ちてしまわないようにする事ができるのです。
さらには
皮膚なじみが良くなる事で
角質層(皮膚表面の20ミクロン程度の部分)程度までなら浸透を果たす事も可能となります。
これによってアセチル化タイプと同様に油性の性質を持たせる事と
尿素の時に書いたように水素結合によって皮膚にくっつき易くなる性質を持たせたという訳です。
これら二点の素材は、ヒアルロン酸が皮膚にできるだけ残留するように工夫された素材で
そのヒアルロン酸の持つ保湿効果を高めるという意味で
大変期待の持たれる成分と言えます。
ただし注意が必要なのは
あくまでのその滞留は角質層程度までであって
皮膚の真皮層にまで届いて皮膚の再生
つまりアンチエイジング的な効果を期待できるものではない
という事ですね。
ご注意下さい。