週3で異なる目線の美容記事をお届け
はがれた皮膚はくっついて再生するか?
自分のカラダで実験ができる機会を得た
長年の疑問
最初に念を押しておきますが、決して今回の記事をお読み頂いて真似することのないよう、お願いしておきます。
それはなぜかと言えば、後悔することになるからです。
特に外観で目立つ場所では、決して真似されないで下さいね。
で、本題ですが。
この業界で長年仕事をしていると、皮膚の生理について知識も必要となるため、ある程度専門的なことも学んでいかなければなりません。
専門書を読んだり、皮膚医学の先生から教えを乞うといったことも、能動的に機会を持って勉学に勤しむ必要があるわけです。
特に美容成分に関しては、昨今は再生医療といったDNA因子に絡んだ受容体成分なども多くなっていますので、化粧品技術者として「分かりません」では済まされません。
ましてこの歳になれば・・・。
そんな日常業務の中でずっと疑問として抱えていたのが、今回の実験のきっかけとなった以下の課題です。
「剥がれた皮膚が再度くっついて、再生することはあり得るのだろうか?」
もちろんこれは医療の世界では、皮膚移植や臓器移植など、普通に医学的によくあることなのですが、この課題で自分がもっとも気になっていたのはそんな専門的なことではなく、「ただ貼り付けておくだけで再生するのか?」という点です。
まぁ、なんといいますか、昨今では私達の業界でも上で書いたように再生医療分野の技術がどんどんと活かされて、原料メーカーさんなんかのエビデンスをみていると、皮膚が生まれ変わるかのようなデータを目にするわけです。
特に海外の素材ではよくある資料です。
念を押しておきますが、もちろん販売される化粧品ではそういった踏み込んだうたい文句は許されていませんので、保湿成分として全てはまとめられています。
それでもヒト幹細胞培養液なんかは、ユーザーの皆さんも勝手な妄想で、「ひょっとしたら・・・」なんて淡い期待や夢を抱かれたことがあるのではないでしょうか。
とまぁ、そんな大げさなことではなくても、例えばコラーゲンを塗布すれば、ひょっとしたら真皮が生まれ変わるのではないだろうか・・・などと、妄想を描くのは私達技術屋でも同じです。
きっかけを得たケガ
というわけで、そんな背景の中で単純な疑問として、剥がれた自分の皮膚が元通りにくっついて再生するのかという疑問は、ずっと頭の中にあったのです。
おそらく他人の皮膚では拒絶反応を起こしたりで受け付けないとは思っていましたが、自分の皮膚を元のところに戻してあげるだけなら、特になんの手術もしなくてもくっついて再生するのだろうか・・・などと、子供のような疑問を抱いていたわけです。
そんな折、ある事故でそれを実験する機会を得ることになります。
いわば、自分で人体実験です。
大げさな書き方をしましたが、いわばカッターナイフを使っていてうっかり手の皮膚を削ってしまっただけなのですが(苦笑)
ただ、この事故は偶然とは思えないほどこの疑問の解消にぴったりなケガでして、切った皮膚の厚み(深さ)といい、傷口の鋭利さといい、絶妙なチャンスを与えてくれたのです。
その時の画像がこちら。
おそらく、これ以上深く骨まで達している(お食事中の方、ごめんなさい・・・)とお医者さんに行かないといけませんし、逆に浅いと表皮層だけに留まるので実験にはなりません。
しかも完全に剥がれてしまえば元の位置に戻るのは困難になりますので、一部がつながったままというのもおあつらえ向きでしたね。
いやいや、とはいえ、これを撮った時点では丸一日を経過して血はしっかり止まっていますが、当時の出血量はかなりのモノでしたけれど・・・。
ほんと、バカですねー。。。
嫁さんにしてみれば、よくもその瞬間にそんな冷静なことを考えていたな、てなもんでしょうが、さすがに止血してからでもこの皮膚をペロンとめくって中を撮影しようとまでは思いませんでした。
はい、オトコってこういうところは情けないんですよ、実は(苦笑)
そんなこんなで、厚みにしておよそ0.4mmほどの皮膚を三角形のカタチにカッターで切ってしまったケガを利用し、これを画像のようにピッタリと収めて絆創膏で固定しておきました。
はてさて、これはどうなったでしょうか?
①いくら固定していても、下からどんどんと新しい皮膚が再生されてきて、死んでいる古い皮膚はペロリと剥がれる
②古い皮膚はやがてくっついて、そのまま同化していく
さぁ、どっち?
結果はどうなった?
つまらないクイズみたいなこの企画、バカバカしいですよね、実に。。。
でも、自分の中ではかなり期待していたのです。
だって、もしもくっつかなければ、ある意味皮膚表面に塗布しただけで皮膚再生を促すようなアンチエイジング的な美容成分に、とてもじゃないが期待など持てないだろう、と。
そして2週間の間しっかりと固定しておいて、意を決して絆創膏を剥がしてみました。
それがこの画像です。
はい、くっついて完全に同化していました。
つまり、切ってすぐであれば、元のところに戻してあげれば乗せてあるだけでもくっついて元通りになろうとすることが判明したのです。
いやー、接着剤で貼り付けたわけでもないのに、見事にくっつきましたねぇ。
傷口の露呈していた基底層細胞が、この死んだと思われる剥がれた皮膚と同化しようとしているわけです。
お医者さんがみれば、なんてことを・・・ってなことなのでしょうけれど。
でもこれはダメ
結論はこういうことでしたが、でもこれはいけません。
もう元通りの、ケガがなかったことのようにキレイな皮膚には戻りませんね。
最初に真似されることのないように念押しをさせて頂いたのが、この点です。
なぜでしょう?
それは、私レベルの皮膚医学知識でも分かります。
この箇所の皮膚細胞は、異常細胞として成長してしまったためです。
いわばヤケドのケロイドと同じです。
一旦、異常細胞として構築されてしまうと、もう正常な元の皮膚再生機能には戻りません。
ずっと、周りとは異なる成長と代謝を続けていきます。
これ以上は専門ではないので判断できませんが、もしかしたら負傷時にペロリと剥がしてしまって一から再生させれば、もっとキレイな状態で根治したかもしれません。
まぁ、年寄りの指の皮膚なので、全く後悔などしていませんが(笑)
ということで今回の記事の言いたかったことは、これは美容の世界で紫外線によって真皮層がダメージを受け、シミになって元に戻らないのと同じなんですね。
漁師さんの奥様なんかが、老いてくるとお顔のあちこちにシミやあばたが多いのは、こういった要因によるものです。
これを機に、紫外線からお肌を守る、いえ真皮を守ることに留意して下さいね。
一度傷ついた真皮層のDNAは、元には戻せませんという、実はちゃんと美容のお話でした。
ではまた次週。
by.美里 康人