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サステイナブルな化粧品を深慮してみた

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美里康人

 

「SDGs」が話題のキーワード
サステイナブルな化粧品とは?
中身について掘り下げてみました

 

サステイナブルな化粧品の定義

お客様から、コンセプト企画として声があがるようになってきています、この言葉。

当然のことながら化粧品の分野で決め事があるわけではありませんし、どう解釈するかは様々な議論がなされるところだと思います。
ただ、社会的にこの言葉の意味するところは明確にされていますので、その提言に対して基準をどこに持っていくのかが、議論のポイントと思います。

で、いまさらの復習で申し訳ないのですが、一応この言葉の意味を書き出しておくことにします。

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とはサステイナブル デベロップメント ゴールズの略で、「持続可能な開発目標」という意味】

では、その具体的な目標とはなんでしょう?
これが分かっていないことには、議論は始まりませんね。

目標1:貧困をなくそう
目標2:飢餓をゼロに
目標3:すべての人に健康と福祉を
目標4:質の高い教育をみんなに
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
目標6:安全な水とトイレを世界中に
目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
目標8:働きがいも 経済成長も
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
目標10:人や国の不平等をなくそう
目標11:住み続けられるまちづくりを
目標12:つくる責任 つかう責任
目標13:気候変動に具体的な対策を
目標14:海の豊かさを守ろう
目標15:陸の豊かさも守ろう
目標16:平和と公正をすべての人に
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

以上ですが、この中で化粧品業界でできることを考えてみましょう。
もちろん、全ては無関係ではないので、広義で思慮すれば全ての目標になんらかのアクションを起こす必要があるのでしょうが、直接的に業界全体の取り組みとして検討が可能な目標について布石をしてみたいと思います。

目標5:ジェンダー平等を実現しよう
目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
目標12:つくる責任 つかう責任
目標14:海の豊かさを守ろう
目標15:陸の豊かさも守ろう

この中で、まずは誰が考えても簡単に改善できることとして、目標5に掛かってくる「メンズコスメ」といった商品名や言葉はどうでしょう?

これは業界でも長い慣習として普通に分類されて、女性用と規定されたことはほぼ皆無ですが、男性用は必ずといって良いほど「メンズ」という言葉がどこかに使われています。
これはなくしてしまってよいものでしょうか。

ようは、商品名だとかデザインだとかを男性嗜好性にするかフェミニンにするかで、好みによって選んでもらえば良いだけで・・・と、考えればよいようにも思います。
ただ、実はそうすると思い当たるだけでも、ひとつは大きな課題が出てきます。
それは育毛剤・抑毛剤です。

育毛剤は、ホルモンコントロールを補うことで発毛を促し、逆の抑毛剤はそれで毛の育成を抑制するメカニズムです。
つまりは、男性ホルモン・女性ホルモンをコントロールするわけですね。
なので、開発指向性としては原則的に男性向け・女性向けに中身の設計が振り分けられます。

さて、どう解決すればよいのでしょうか。
ちょっと私には答えがみつかりませんので、中途半端に提言だけで棚上げしときます(笑)

ゴミ問題

次いで、わりと簡単な目標のひとつ、目標12について考えてみました。
「つくる責任・つかう責任」ということですが、化粧品を使用したあとに残る容器や包材が、一切「なかったこと」になればきちんと消費されたことになるので問題は解決します。

ですので、実はプラスチックやガラスでも全く構わず、これが回収されて再利用、もしくは他の製品でも構わないので、100%リサイクルされて利用されればこれでもよいということになります。

現状からの改善方法としては、詰め替えなど私達が再利用できる容器に改善する方向性もないわけではありませんが、詰め替えによる汚染の問題や、他社製品を買えないといった問題など、色々と課題は山積みだろうと想像でき、かなり困難な対策になるように感じます。
ならば、原材料そのものをリサイクルする手段といった、社会的解決法を模索するのが早道と考えたりします。

一方で、資生堂さんがサステイナブルへのチャレンジとして実験的に取り組んだのが、石油原料を使用したプラスチック容器に替えた木製の容器でしたね。
いわば廃材を利用したものですが、これはどうでしょう?

確かに、一見は素晴らしい対策のように感じますが、廃材といえども木材は自然の産物です。
捨てられる・燃やされる木材だけで供給が間に合うのであればスキームとして成立しますが、供給が間に合わなければその木を植林しなければなりません。
これはどこかで破綻の可能性も出てくるように感じますが、ここは私はその世界のことを詳しく知りませんので、産業モデルへの考えが及んでいなければ申し訳ありません。

大きな課題は環境対策

さて、化粧品の中身にもっとも関係してくるのが残りの目標ですね。
その最初に関わってくるのが目標7で、エネルギー問題です。
これには、石油を枯渇させないという課題に加えて、エネルギーを利用して二酸化炭素を排出しないという課題も含まれます。

今のところ、化粧品を生産するのに使われている主たるエネルギーは、電気とガスだと思います。
電気については、化粧品業界だけの問題に留まらず生活インフラと直結していますので、社会全体のエネルギー源として電気をどう産み出すかという問題に派生しています。

この業界ではありませんが、工場に太陽光パネルを設置し、自社の稼働電気は全て社内で補うという取り組むをしている企業さんもありますので、方向性としてはそういう取り組みになるかと思います。

そして中身の大きな課題

もったいぶったかのようになりましたが、今回のこの記事でもっとも悩ましい課題が、これになりますね。
化粧品メーカーさんとしては、ここがもっとも企業PRの訴求点にもなり得ますし。

もう一度目標をみてみましょう。

目標14:海の豊かさを守ろう
目標15:陸の豊かさも守ろう

ようは、自然環境の未来を維持していくためにはどうすれば良いのか?という課題ですね。
ここでまずは大きく関係してくるのは、石油由来で作られている素材ということになります。
石油はエネルギー問題でも大きな課題とされていますので、ここは重要な点です。

石油由来といえば、皆さんもよく認識されているのは鉱物油のミネラルオイルでしょう。
他にもワセリンが有名ですが、「パラフィン」と表示されるワックスも化粧品には使われています。
サステイナブルなコンセプトの化粧品となれば、ここを避ければ良いことになります。

石油由来のオイルといえば、少し前までは合成油と言われるエステル油もこれにあたりました。
パルミチン酸〇〇〇〇とか、ミリスチン酸〇〇〇〇などの合成油が石油由来でしたが、今ではこれらは植物から採取された脂肪酸を合成して作られるものが多くなりましたので、石油由来のエステル油は少なくなりました。
なので、ここは処方設計を工夫すればなんとかクリアできそうです。

そして、化粧品の設計でもっとも難解な課題は、界面活性剤でしょう。
なぜなら、界面活性剤には普通にエチレン化合物がたくさん使われているからです。
そう、「PEG」で有名なポリエチレングリコールがこれにあたります。
石油由来のエチレンガスを、たくさん連ねて合成されます。

例えばよく使われるものでは「PEG-60水添ヒマシ油」がこれで、エチレンが60個連なっていると考えればよいですね。
それを水添ヒマシ油に、化学的にくっつけたものです。

また、PEGといってもこの表示名称だけではありません。
「ポリソルベート80」なんてのも、PEGを20個つけたものです。
他にも「ソルベス-30」なんかも、同じです。

まぁ、言ってみれば、だいたい10以上の大きい数字が表示名称にくっついている成分は、PEGがつけられた界面活性剤である可能性が高いと考えればよいでしょう。
ただし、「〇〇〇〇ポリグリセリル-10」など、例外もありますので100%ではありません。
ちなみにこの数字の10は、グリセリンが10個連ねられたものですのでPEGとは無関係です。

というわけで、化粧品に使われる界面活性剤はこのPEGタイプが非常に多く、これを使わずに化粧品を設計するのは非常に難問です。
現状の市販コスメの全成分を見て頂いても、油分を乳化した設計の乳液やクリームでこれを使っていない製品をみつけだすのは、かなり難しいはずですね。

そしてこれに加えてさら難問なのは、化粧品にトロミをつける合成ポリマー
代表的な「カルボマー」もそうですが、成分名に「アクリル」なんちゃらや「ビニル」なんてついて最後に「ポリマー」となっていると、全て石油由来。
言うまでもなく、ゲルコスメは全てダメになっちゃいます。

結論としては、石油由来の界面活性剤とこの合成ポリマーを使わないということになると、現状の市販コスメでは化粧水とごく一部の美容液しかこれに該当しなくなります。
もちろん、乳化している化粧品の乳液やクリームはほぼ全滅。

植物由来ならよいのか?

さて最後になりますが、こうなってくるとこれを避けて通るには、ナチュラル志向のブランドさんなどがよく提唱される植物由来の素材ということになりますが、これならサイテイナブルなのでしょうか?

ここをよく誤解されるのですが、これは上の目標をよくみると、こちらもNGの可能性が高いですね。
化粧品の原料として湯水のごとく使われても枯渇してしまわない植物が、どこにあるでしょうか。

この話題で非常にわかりやすく代表的なのが、ヤシ油です。

洗顔フォームやシャンプーと、皆さんが手元にお持ちのほとんどの洗浄系コスメの界面活性剤は、このヤシ油を原料として作られています。
植物由来ということでもてはやされてどんどん消費されていますが、当然自然に生えているヤシだけでは間に合うはずもなく、世界各国の土地に生息していた緑を伐採し、このヤシを植林しています。
ところが、ヤシ科の木は広葉樹ではないため緑がどんどんなくなり、人工衛星から地球をみても分かるほど砂漠化が進んでいます。
アマゾン流域問題です。

人間が使用する嗜好性商品に植物をどんどん消費し、足りなくなったら他の植物を伐採して栽培してよいものでしょうか。
どうやらこれも、掲げられた目標とは方向性が異なるように感じますね。

となると、どういう方向性に羅針盤を向ければよいのでしょうか。

私ごときが結論を指南できるようなことではありませんが、この貧弱な脳みそで考える限りは、まず枯渇することなどあり得ない単細胞生物「微生物」にチカラを借りるのがもっとも整合性があるように思います。
いわゆる菌がこれにあたりますが、発酵を代表として、微生物は限りなく増えて、そして様々な成分を限りなく生成してくれます。
いい子ですね(笑)

とはいえ、まだ現状では微生物から作られた成分だけで全てのコスメを処方設計することは、できません。

現在、発酵を利用した美容成分に始まり、色んな物質を微生物のチカラで作り出す研究が進んでいます。
サステイナブルな化粧品業界の未来は、こんなところにあるのかもしれませんね。
2030年までに達成できるとは思えませんが(苦笑)

では、また来週。

by.美里 康人

 

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