「ビタミンC誘導体の総括 2011年版 その2」の続きになります。
一般的な名称「アプレシエ」で有名になった
APPS(パルミチン酸アスコルビン酸3Na)ですが
ちょうど前述の油溶性ビタミンCが
医薬部外品の申請を厚労省に出された頃
つまり
「いよいよ、油溶性ビタミンCが
美白成分として医薬部外品に使えるようになるぞ!」
という話が業界内に広まった頃に
業界に投入されました。
APPSは水溶性ビタミンCの新しいタイプであるため
油溶性ビタミンCと比較すると
化粧水や美容液・ゲルなどへの使用が可能で
当然化粧品会社も使いやすい原料。
もちろん、乳液やクリームなどにも応用が可能なので
言うなれば
美容オイル以外はあらゆる基礎化粧品に活用が可能という事。
こうなると、当然業界の関心度も
油溶性ビタミンCよりもこちらへと目移りするのは明らか。
おまけに「アプレシエ」は
今までの水溶性ビタミンC誘導体(VCPMgやVCPNa)と比較し
10倍以上もの浸透力を持つと言われ
その効果の高さへの期待は
一般消費者の耳にまで届いたものです。
では、なぜ「アプレシエ」は
それだけの浸透力を持つのでしょうか?
そのメカニズムを少し説明しておきます。
前回のお話でも触れたように
ヒトの皮膚と言うのは油溶性成分の方が
受け入れられやすい構造になっています。
それは、角質層に存在するバリア構造そのものが
細胞間脂質で作られているためです。
このアプレシエは
今までの水溶性ビタミンC誘導体に
油溶性の性質を持つ成分を複合化させたものです。
分かりやすくすると、このようなイメージ
つまり、扱いやすい
そして製剤化の用途の広い、水溶性の性質を維持しつつ
油溶性成分の浸透しやすさを加味した
ビタミンC誘導体という事になります。
この評判は一般消費者にまで一気に広まり
せっかく医薬部外品の有効成分として
認可を受けようと申請を出していた油溶性ビタミンCは
その人気を奪われてしまった格好になったわけです。
加えて
1年程度で厚労省から下りるだろうと推測していたその認可は
予想外に3年以上もかかってしまい
結果的に存在意義すらも危うい憂き目に
あってしまいました。
さて、ここまでのビタミンC誘導体の歴史を
お読み頂いた限りでは
「アプレシエ」(APPS)が
もっとも消費者にとって
『価値あるビタミンC誘導体』という感じでしょうか?
いえいえ。
早まってはなりません!!
実はこのAPPSにも、問題点があるのです。
簡単に列記しておきましょう。
1.他の誘導体に比較し、価格が数倍も高価である事。
2.酸化安定性がよくない事。
3.さらにそれは、水ベース処方に配合した際に加速される事。
これらの問題があるがゆえに
配合量はどうしても低く抑えられているのが現状です。
そこで、さらにこれらの問題点が改善された
新たなビタミンC誘導体の登場です。
いよいよこの章の終わり
次回は最後のまとめに入ります。