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洗浄剤市場の戦い

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美里康人

成分名で知っておきたい
どれを選ぶべきか

前回に引き続き、洗浄用界面活性剤の現状についてお話していきますが、皆さんが実際に市場で見る製品の成分はどうなっているのか、またその中で市場で形成されている競争と裏側について進めていきます。

ここでいう洗浄剤製品

最初に記しておきますが、ここから解説でとりあげる洗浄剤用の界面活性剤を使った雑貨製品・化粧品を羅列しておきます。
ただし、洗濯洗剤や特殊な用途に使用される清掃製品は少し特殊な市場ですので、これは外しています。
また、メイクを落とすために使われているクレンジング料もほとんどは洗浄用界面活性剤からは少しズレますので、これを除外しています。

 ・台所洗剤
 ・石けん(手洗い・洗濯・ボディ用・顔用含む)
 ・シャンプー
 ・ボディソープ
 ・洗顔料

で、化粧品用途だけでなくこういった洗浄剤製品といえば花王さん(カネボウグループ含む)やライオンさん、そしてP&Gといった外資を含めた大手ブランドが大きな市場を形成しています。
そんな中にあって、付加価値を訴求する少し高価格帯のプレミアな洗浄剤も存在し、ユーザーの皆さんはどういった差別化がされていて、成分をどう見極めればよいのか、悩ましいシーンで出食わすこともあるかと思います。
特に手肌が敏感体質な方だったり、乳幼児に使用する洗浄用品をどう選ぶべきかにも関係してきますので、この辺りをしっかりと見極めたいところかと思います。

ただ最初に念押しとして、前回の記事にも書いたように一部を除いて今やもう動物や石油を由来とした洗浄剤原料はほとんどありませんので、ここはすでに訴求ポイントにならないことが原則と覚えておいて下さいね。

市場競争の中身~石けんコンセプト

ヤシ油洗剤100

さて、前回までの記事を踏まえて、大手ブランドと中小ブランドとの差別化で何が起きているのか解説していきます。

まず最初に、合成界面活性剤(と勝手に呼んでいる)と差別化して身の回りのあらゆる洗浄用品を販売している、いわゆる「石けん指向」のブランドさんです。

洗浄剤の成分名は

 ・カリ石ケン素地

ベビー用も網羅されていたりしますが、中にはベビー用はみがきには「ラウリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸ポリグリセリル-10」といった界面活性剤が使われてたりと疑問も感じますが、まぁ今回はここは置いておきましょう。
基本的には、ほとんどの製品はカリ石けん素地が主成分になっています。

一方で、前回の記事で触れたように、こういった多くのパーム油を使った石けんとは差別化するために、ココヤシから採れるヤシ油由来の原料だけで作っているとPRする、石けんメーカーさんも存在しています。
こちらはパーム油由来の石けん素地と差別化を図るために、こういう表示名称を使用しています。

 ・ヤシ脂肪酸K

「K」はカリウムですので、これも同じく石けん。
ところが「ヤシ油脂肪酸」となっていますので、ヤシ油そのものからケン化しているのではなく、ココヤシ油から精製された脂肪酸から作っていることになります。
化学的にいえば先にグリセリンを除去してあるというだけで、化学屋的にはどちらも同じだろうと思うのですが、さていずれが天然性が高いのか悩ましい判断が迫られます。
また、こちらも手に触れる食器用洗剤は「アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム」となっていたりで、アルキルの部分がヤシ油由来とはいえ・・・という疑問も残されますが。

市場競争の中身~アンチパーム油コンセプト

次に、ココヤシ問題でパーム油を使わない「アンチパーム油」をコンセプトにした自然環境を考えたとするポリシーの製品群が存在しています。
こちらもココヤシ由来のヤシ油しか使わないことを前面に出していますが、そういったメーカーさんに使われている製品の成分がこちら。

 ・ラウリル硫酸Na

合成かつ、お肌に刺激が強いと過去に大きく叩かれた成分で有名。
ですが、脂肪酸である”ラウリン酸”のところはココヤシ油由来の脂肪酸を使っているということで、差別化ポイントとされています。
ずいぶんと以前にブログでも取り上げたことがあるLUSHさんが、固形にしたこれを手作りの石けんであるかのように販売していましたが、さすがにユーザーさんも賢くなってきた今では石けん素地になっていますが、まだ一部の製品やシャンプーにはこれが使われています。

いずれにしても他の差別化メーカーさんがこれを使用していますが、これが果たして自然を前面に押し出す意味があるのか、疑問が生じます。
で、ここでさすがに「硫酸」とついているこの成分はユーザーさんも分かってしまうと考えたのか、中にはこういった成分名も存在しています。

 ・ココアルキル硫酸Na

「ココ」とついているので、パーム油由来の脂肪酸と差別化してPRしたいのでしょうが、う~ん・・・という感じ。

他には外資メーカーのDoveなどは、こういう素材がよく使われています。

 ・ココイルイセチオン酸Na

こちらも「ココイル」の部分は、環境破壊に繋がるプランテーションで作られたパーム油を使っていないとPRされていますが、硫酸と同じくイセチオン酸は天然由来といえるかどうか議論の分かれるところですし、お肌に刺激がないかと問われると、目に入るとかなりしみますので疑問が残ります。

何が天然由来で何が安全なのか

というわけで、こうなってくるとユーザーさんは何をものさしに製品を選べばよいのか、悩ましくなってきてしまいます。
実際にはお肌に優しくて自然環境にも優しい共生の道があればよいはずなのですが、今のところ大きくネットを賑わす(目にされやすい)情報から探るとこうなっているのが現状です。
これはつまり、PR文言ひと言で表現できる危険へのアオり商法、そして安心さを分かりやすい言葉でPRできることに他なりません。

・パーム油が自然破壊
・あぶないパーム油
・パーム油問題

石けんコンセプトのメーカーさんはもちろん分かりやすいですね。

・合成界面活性剤不使用
・石油由来原料不使用

たったこれだけの衝撃的かつ短かな文字で自社製品の特長をPRできるのですから、さもありなんです。
またもうひとつ重要なことは、大きな対抗勢力と戦うことを避けることも大きな理由のひとつでもあります。
例えば以前の記事でも書いたように、花王さんやDoveさんなどは対抗勢力組織の攻撃に負けてしまって撤退せざるを得なくなった歴史がありますし。

花王さんは、企業歴史の中に以下のように記されています。

■清浄文化は石けんを超えて

「花王石鹸」の登場は1890年(明治23年)。それから90年後の1980年(昭和55年)に、ペースト状の洗顔料「ビオレ」を発売しました。石けんから始まった花王が、その石けんを自ら否定するという意味でも画期的な製品でした。1985年(昭和60年)には社名も「花王石鹸」から「花王」に変更しました。技術革新によって、新しい生活習慣を提案する商品が多数生まれました。

■石けんからビオレヘ

1970年代まで、洗浄料の主役は石けんでした。そんな中、花王はより肌にやさしい洗浄剤をめざして、石けんよりも皮膚の刺激が少ない洗浄基剤「モノアルキルフォスフェート(MAP)」を開発します。このMAPを採用した洗顔料「ビオレ」や全身洗浄料「ビオレu」で、花王は新しい洗浄習慣を提案しました。

出典:kaoサイト「花王の顔」より引用

花王さんの企業名は、もともと花王石鹸だったんです。
自らの作っている製品を自ら否定し、人と環境の未来を模索する企業姿勢というところでしょうか。
ですので、敵に回す相手には気をつけなければならない、典型的な例です。

石けんよりも安全性の高い洗浄剤が世に出ようとしても、「出る杭は叩かれる」の図式はそう簡単に変われるものではないようです。

天然由来のものさしについて余談

最後に、合成であるか天然であるかの差別化点として、よく究極の天然として純石けんのような製品をうたっている製品があります。
こういった製品は、これ以外の洗浄剤は全て合成であるかのようにPRされています。

しかしここで考えないといけないこととして、石けんも植物油に水酸化ナトリウム(または水酸化カリウム)といった化学薬品と化学反応させて中和(エステル化)させていますので、これを純粋な天然製品と言って良いのかという問題です。
それを議論するのであれば、酸素を反応させてやるエーテル化も天然由来の範疇です。

他に具体例をいえば、花王さんが数年前まで全ての化粧用洗浄剤に使用していたモノアルキルフォスフェート(MAP)
いわば石けんにリン酸をくっつけた中性の洗浄剤でしたが、リン酸は土壌など自然界に存在する成分ですので、合成と言ってしまうのは理不尽です。
他にも味の素が良い例の、アミノ酸を応用しただけでも合成と決めつけられたり、何を基準としているのか化学屋の私達には全く理解できない不毛な論理といえます。
純石けんに使われる水酸化ナトリウムが、身の回りや自然界にそのまま存在しているのであればまた議論の舞台にもあがれますが、そんな危険な薬品が自然に存在するわけもありませんし。

ここの議論は今回の記事の主旨ではありませんので、ここまでにしておきましょう。

いよいよ次回でこの話題の最後になりますが、これらを踏まえて何をものさしにユーザーさんは製品選ぶをすべきなのでしょうか。
この話題の最後は、敏感肌向けやベビー用の低刺激洗浄剤の成分見極めについて記事にしていきます。

ではまた次週。

by.美里 康人

2 COMMENTS

Noah The Cat

初めまして、今日は。
確か20年程前でしょうか。手作り石鹸が流行りましたね。
アメリカ在住の高学歴意識高い系女子のM田さんでしたか、自分で作るオリーブオイル石鹸だったと思います。合成ガー、界面活性剤ガーというので、化学の成績は悪いが、実験だけは好きだったので、薬局で印鑑と身分証提示して「苛性ソーダ」を買って、Excelで鹸化率を出して作ってみました。
よく考えたら、エプロン、ゴム手袋、メガネかゴーグル着用の上、横に緊急中和剤の酢を用意するという危ないことをしていました。
硬い石鹸にするため食用レッドパームオイルも使ったことがあります(笑)
効率と安全性を考えてあっという間に止めました。ナトリウム系もカリウム系も「苛性」なので、手作りは結構危険ですね。分量を間違えると廃棄もままなりません。グリセリンが残っていても意味が無い。手間暇かける意味は何処。

話はかわりますが、今使っている海外製品(日本展開無し)の液体洗顔料上位成分、如何思われますか?
AQUA / WATER / EAU
GLYCERIN
SODIUM METHYL COCOYL TAURATE
COCO-BETAINE
SODIUM COCOYL ISETHIONATE
SODIUM CHLORIDE
PCA
PPG-5-CETETH-20
PEG-100 STEARATE
PEG-150 PENTAERYTHRITYL TETRASTEARATE
PEG-6 CAPRYLIC/CAPRIC GLYCERIDES
PEG-30 DIPOLYHYDROXYSTEARATE

私見ですが、泡立ち弱めな弱酸性系シャンプーに近いかな?と思いますが、如何でしょうか?

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美里 康人

Noah The Cat様

コメント、ありがとうございます。
いやはや、化学の成績は悪かったと恐縮される割りに、中和率をエクセルで整理して計算してアルカリ量を決定されるなど、シロウト仕事ではないですね。
私も関数を組み込んで作成した石けん系の中和率計算ツールが、まさに商売道具です(笑)

実際、私達のOEM工場の技術者レベルにおいては、この中和率計算をして洗顔フォームやボディソープの処方設計をしている方はかなり少ないですよ。
工場さんの研究者の教育に携わる事も多いのですが、処方をみて「中和率はどれ位を目指しての設計?」と聞いても、ほとんど答えが返ってきません(苦笑)
なんとも情けない現状なのですが、計算の仕方すらも理解できない技術者も多い現状に遭遇すると、まさに落胆しかありません。

水にグリセリンやBGといった保湿成分にエキスなどの美容成分を入れて化粧水、そしてそれに増粘剤のポリマーを足して美容液、さらにはもっと合成ポリマーを増やしてゲルコスメやオールインワンジェルと、子供のお砂遊びのような研究室だけでOEM工場が運営できてしまいますので、さもありなん・・・と言わざるを得ません。
頭から否定したいと常々から思ってはいるのですが、お口の悪いユーザーさんが「化粧品はほとんど水の製品で暴利をむさぼっている。」と揶揄されても、一理あるよねと言葉を飲み込んでしまう事もあります。

愚痴はそこそこにして・・・ご提出頂いた課題ですが、まさに次回のブログがズバリな内容でした。(先読みされてた?・笑)
もう更新予約してありますので、明後日月曜日の記事をお読み頂ければお答えになるかと思います。

またご愛顧、よろしくお願い致します。

美里

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