化粧水は普通に水に保湿成分を配合しただけではNG。
大手ブランドさんは独自に、化粧水浸透技術を持っているというお話はこれまでにも取り上げてきました。
そして今回はコーセーさん。
市販化粧水に求める付加価値
これまでにも、化粧水は浸透性が処方設計の命といったお話をしてきました。
もう既に皆さんもご承知の通り、そうでないと今どきは、「キッチンコスメ」と言われる手作りコスメで、消費者さんで作れてしまうからです。
ネットを少し徘徊するだけで、様々な手作りコスメ用の材料があちこちのネットショップで売られており、時には私達プロの人間でも入手困難な材料や成分まで販売されていることもあるほどです。
ですので、考えてみればあらためてになるのですが、以下のような設計ならキッチンコスメレベルとも言え、投資をする意味がないと言えます。
また、付加価値として防腐剤フリーが謳われていても、以下のような防腐剤なら手作り材料で簡単に入手が可能です。
水溶性保湿成分)
BG、グリセリン、DPG、ベタイン、ヒアルロン酸Na
パラベン代替防腐剤)
フェノキシエタノール、ペンチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、カプリリルグリコール、エチルヘキシルグリセリン
これらをベースに、美容成分として植物由来のエキスなどが配合された商品はよく見かけるかもしれませんね。
ただ念のために記しておきますが、決して手作りコスメを推奨はしませんしオススメしているわけではないことをご承知おき下さい。
腐敗問題も含めやはり皮膚障害へのリスクが大きく、決して「自己責任において」などといった言い逃れでは済まされませんので、おそらく近い将来規制されていくことと思います。
大手ブランドさんの切磋琢磨
ということで、少なくとも市販商品にはプロとしてそれなりの処方技術力を盛り込んだ化粧品でなければならないはずですが、大手ブランドさんも角質層への浸透性には技術力を駆使しているといっても過言ではありません。
以前からお伝えしている通り、もともと人間の皮膚は外敵から守る機能を有していますので、水は浸透しないのが原則です。
ですので、何も浸透性の工夫がなされていない化粧水は角質層への潤い効果は見込めず、ここが化粧水としての機能の本分と言えるからです。
さて、このような背景があることから、以前にも記事にした通り花王さん・資生堂さんと、それぞれに独自の浸透性アプローチで、化粧水には他ブランドとの差別化に力を入れてきています。
資生堂さんは独自で開発して論文も発表している「アクアインプール」をこのブログで取り上げましたね。
過去記事:アクアインプールってなに?
「両親媒性」が技術のカギ
花王さんの技術もお伝えしたことがありますが、それぞれに独自な素材を開発されていますが、実はそのメカニズムの基本原則は共通点があり、それは以下です。
【水でも油でもない中間的な性質を持つ物質】
つまり、ヒトの皮膚は水も油も浸透を阻止することから、その中間的な性質をもつ物質を探せば皮膚内浸透は期待できるという意味になるわけです。
これを専門的な用語で『両親媒性物質』と言います。
皆さんもよく目にする「界面活性剤」も水にも油にも溶ける性質を持ちますので、これに該当します。
他には、皆さんがアルコールと呼んでいる「エタノール」も、水にも溶けますしインクや塗料といった油性成分も溶かしますので、物理的性質からいえばこれも両親媒性物質ということになります。
しかしながら、こうした成分はあまり消費者さんからは好まれませんし、できればもっとお肌に対して安心に使える成分であることが求められます。
なにより界面活性剤を配合するだけなら誰でもできますし、そんなのは処方技術とは言えません。
毎日ジャブジャブ使用してもお肌に安全で、そしてできるだけ角質層の深部に水分や保湿成分を届けることができれば、スキンケア理論としても付加価値の高い化粧水になるのですからね。
ここは
当然のことと言えます。
そういう意味で上記の「アクアインプール」は、合成ではありますがPOE(ポリオキシエチレン)とPOP(ポリオキシプロピレン)の数を自由に調整することで、水と油の性質のバランスのもっとも良いところを追求できますし、なおかつ皮膚に対して障害となる要素もない素材が設計できるというわけです。
そしてコーセーさんの技術
ということで、これまで大手ブランドさんの浸透性技術を紹介してきましたが、コーセーさんだけはCOSME DECORTEといった高級ブランドだけに採用された例の「リポソーム」しかなく、価格帯の低い通常ブランドに採用できる独自技術がありませんでした。
そして「ワン バイ コーセー」で前面に出してきたのが、「インナーブースト処方」と名付けられた技術。
※リンク元:コーセー公式サイト
その成分の名前は「シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール」。
なんだか長ったらしくカタカナだらけですが、まぁやはり水にも溶ける性質を持った合成のオイルということになるでしょうか。
これがオイル成分との仲介の役目を果たし、透明な化粧水にも関わらず肌なじみが良く、インナードライの解消にひと役かっているという技術です。
長きに渡って評判の「ライスパワーNo.11」という米ヌカ由来の独自保湿成分も角質層深部に届けてくれ、付加価値に期待される化粧水になっています。
かくして、独自なのだろうか・・・
さて、ここまでは皆さんもHPをご覧になれば分かる範囲のブランド情報。
せっかくこのブログをご覧頂いたのですから、「コスメあら!?カルト??」流の裏情報でなければ価値がないですよね。
ここからが、このブログの真価発揮です(笑)
ではこのコーセーさんのインナーブーストは、独自技術と言えるかどうか?
花王さんも資生堂さんも、いわば独自の開発素材ですから、私達のようなOEM企業では手に入れることはできません。
つまり真似の出ない技術。
(できるようになったとしても、その時はもう使い捨てられた素材・笑)
ところがこのコーセーさんの素材は、「Neosolue-Aqulio」という原料名で化粧品原料として市販されています。
※リンク元”日本精化”社:Neosolue-Aqulio
あ、いえ・・・市販といっても一般消費者さんがネットなどで買えるという意味ではないですよ(苦笑)
なので、私達も取り入れることができる技術というわけです。
ここで書いちゃいましたし、私は合成素材での浸透技術を好まないのでやりませんが、市販コスメの付加価値を求めるのであれば、このレベルの処方設計の工夫程度は凝らして頂きたいと思いますね。
それがユーザーさんへの誠意と思いますし。
さて、そしてさらにおまけ。
もうひとつの独自技術としてかなり以前よりイチオシされているライスパワーNo.11ですが、これはどうなのでしょう?
これも実は、独自と言うにはちょっと・・・というところがありますね。
「ライスパワー」という他社の化粧品ブランドがありますので、こちらの化粧品にもこの米ぬか由来成分は使われています。
というか、もともとはこちらの酒造メーカーさんが開発された素材で、開発No.は異なりますが同様の成分と言えます。
まぁ、私的には植物にもかかわらず非常にセラミド成分を多く含む米ぬかは、化粧品用素材としては非常に好みの成分でもありますので、好感触ですが。
こちらの原料「ライスパワー」も触ったことがありますが、大変面白い効果が期待できる素材でしたし。
他にも米ぬかは発展性が期待できる色んな潜在能力を秘めていますので、またこれについては突っ込んだ話題を取り上げてみたいと思います。
では今日はここまでで。
ではでは。
by.美里 康人