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「日本化粧品協会」とか、解析アプリ「エレメンツ」とか

コスメあら!カルト!?

美里康人

久しぶりに協会ビジネスのお話。
「日本化粧品協会」なるものがザワついています。
そして
スマホで化粧品分析ができるアプリ
「エレメンツ」ってどうなの?という話題。

 

日本化粧品協会って何?

既に皆さんもご存じのように、化粧品業界における正式な業界団体であるかのような「日本化粧品協会」なるものがあります。
これは、以前にも話題にしました「日本化粧品検定」と繋がりがあり、検定ビジネスとともに膨大な協会ビジネスストーリーの一環事業というわけです。

そして消費者さんに寄り添って活用できるようにという、公益性をアピールするかのようなコンセプトを打ち出して、化粧品の解析ができるというウリでスマホアプリ「エレメンツ」を配信スタートしています。

先日来から少しツイートでなんとなくボヤかしてつぶやいていましたが、裏がある程度取れてきましたので、きちんと団体名称をオープンにしての記事になります。

以前にも、こうした公的意味合いを含んだ業界団体であるかのような協会に関しては、「協会ビジネス」という言葉を使って警鐘を鳴らす記事をアップしています。
そういう意味でこの協会も、ユーザーの皆さん的には私達化粧品業界の企業や人間が手を繋ぎ、業界の自浄活動をするために立ち上げられた団体のような連想をしてしまうと思います。

ここは最初に断言しておきましょう。
まったくもって無関係な、単なる営利団体です、と。
正直、化粧品業界で実務レベルで高い技術力を持つ化粧品技術者さんは誰一人として関与していませんし、相談役の中にもおられません。

まぁ、とはいえ、私はこの化粧品業界のドンなわけでもないですし、単なる年老いた一技術者でしかありませんので、どこか秘密裏に進められていた可能性もゼロではないとも言えますが。

そんな中最近気づいたのですが、彼らは化粧品検定ビジネスの一環で、その検定をダシにしてアカデミーなるものを運営していたのですね。
「ジャパン コスメティックアカデミー」

え?
コレですか?

私、実は10年以上前にユーザーさん向けに「コスメティックアカデミー」なるものを運営していたんです。
一時は、読売文化センターのカルチャースクールにも登録されていました。
教壇に立つのは私一人ゆえに、多忙で運営が難しくなって中断してしまいましたが(苦笑)

真似っこしました?
これはジョークですけど(笑)

まぁ、しかし協会ビジネスをやられる方って、権威が大好きなのか「日本」とか「ジャパン」とか仰々しいネーミングが好きですねぇ。

公的機関との連携におわせ

こうしたいわゆる「協会ビジネス」に関しては、私達技術屋やユーザーさんに特に悪害がないのであればあまり叩く気も起きませんし、いわば「どうぞ、ご勝手に」というのが私のスタンスなのですが、この協会には悪意が満ちていてダマってはおれない事態となっていて、今回記事にしたというところでしょうか。

そのひとつに、まるで公的機関と連携しているかのような記述がHPのあちこちに散りばめられている点です。

化粧品検定事業に関しては文部科学省、そして日本化粧品協会に関しては厚労省の名前があちこちに記載されています。
もちろん、公的機関の連絡先やHPリンクに関してはリンクフリーが原則ですので、サイト内にリンクを貼るのは自由ですし、弊社サイトでも昔から公的機関のリンクバナーを貼っています。

しかしながら彼らのやり口は、さも連携を取っているかのような記述をしており、実際は全く無関係にも関わらず悪意が表ににじみ出ているといっても過言ではありません。

まぁ、それもこの美容業界の生業でいえば、そういったズル賢い商売をする連中がうじゃうじゃいるのは恒例で、そんなこんなから私自身もこういった業界浄化活動をしている発端になっているわけですから、さもありなんと言えなくないのですが。

ただ、今回それが大きく表ざたになる事態に発展したことで、今回の記事に至りました。

厚労省の見解

このコロナウイルス問題の最中に、正式な成分名称で言うところの大麻オイルの含有有効成分「カンナビジオール」、いわゆる「CBD」を取り上げて、化粧品メーカーさんや原料ディーラーさんの実名をあげて摘発じみたことを始めたことで、大きな波紋を広げています。
しかもタチの悪いことに、厚労省とさも連携しているかのように具体的事例をどんどん公表していることが大きな問題となっています。

ここで、きちんと裏が取れている事実関係を暴露しておきます。

まず、HPににおわされているような厚労省との連携は一切確認されていませんし、問い合わせも連絡すらされた事実関係は確認されていなく、むしろこうした機関名称の記述に対して厚労省の調査が入っています。

次に、このHP内に公表されている摘発・調査対象としたメーカーさんの情報です。

公表内容によれば、CBDについて化粧品メーカーさんの確認調査や、原料の現地調査と書かれていますが、こちらも連絡された形跡すら確認されていません。
これはメーカーさんの事実関係を確認済みです。

そして次に、分析結果の公表問題です。

彼らは独自に分析を進めたと記載され、それらしい画像も添付されていますが、これらは昭和大学で勝手に画像を撮影してそれを利用したそうで、昭和大学によれば分析を依頼された実績は確認されていません。

なぜなら、昭和大学は「日本カンナビジオール協会」「カンナビジオール分析センター」を立ち上げてCBDを正しく散り扱うための検査を行っていますので、こうしたメーカーさんと敵対する立場をとっている彼らの活動の支援をするわけがないんですね。
ほとんどのCBD製品を扱う企業さんはこの協会に入っていますので、怒り心頭という事態になっています。

それだけでなく、実は国内でCBDの分析は可能ですが、含有禁止成分であるTHC、つまりは覚醒成分の分析は国内ではできませんので、そのソースが明確に示されていません。
これはあくまでも憶測でしかありませんが、おそらくこの含有禁止成分の分析は実際に行っていないと思われます。

まぁ、これは化学の専門の人間なら誰でも分かる事なのですが、化粧品中に含まれているCBDの分析ならまだしも、さらにその中の微量含有成分である覚醒成分とされているTHC(テトラヒドロカンナビノール)が簡単に分析できるわけはありません。
分かりやすく簡単にいえば、分析機器の「検出限界以下」となるためです。

この事態を受けて各業者さんは、この協会に対して異議申し立てをしており、厳正な対応がなければ提訴に向かう事態に発展しています。
複数の化粧品メーカーさん、原料ディーラーさんがありますので、集団訴訟になる可能性もありますね。

こんな活動をしながら、日本化粧品協会の名で業界企業に加入を推進しており、なんと年会費50万円の暴利をむさぼっています。
つまり、「50万円払えば見逃してあげるよ」というストーリーがミエミエです。

ふざけたアプリ「エレメンツ」

もう皆さんはご存じかもしれませんが、さらに彼らはビジネスとしてのボリュームを拡大すべく、消費者さんまでターゲットにして「エレメンツ」なるスマホツール「化粧品成分解析アプリ」の配信を始めています。

個人的な活動ならまだしも、もうこうなると断言してしまいますが、ただでさえ化粧品の成分解析などできるわけもないのに、こんなスマホアプリは子供の遊びアプリでしかありません。

ここを長年ご利用下さっているユーザーさんはすでによくご存じですが、私自身が@cosmeでQ&Aの中で製品の鑑定活動をしてきましたので、こうした化粧品を分析するという活動が無意味であることは、もっともよく分かっています。

今でもコスメ解析などと称して活動される御仁もおられるので、こうして記事にする限りはその理由を明確にしておきましょう。

まず最初に、ほとんどこうした活動をされている方のやり方として、ユーザーさんがもっとも食い付きやすい「点数制度」を取り入れています。

最初にこれをやったのが、ゼノア化粧料本舗の元代表「小澤王春」氏が執筆した『化粧品毒性判定辞典』で、成分鑑定を辞書のように仕立てたのが最初でしょうか。
危険度の★がいくつ・・・なんて言葉が、ユーザーさんの間でも流行りましたね。

化粧品技術者は、口を揃えてこれを一刀両断しています。
こんなバカバカしいことはありません。

それはつまり、点数をつけるためのものさしがどこにもないからです。
もちろん彼も、どこにもそのものさしは示されていません。

そりゃそうですね。
合成界面活性剤だったら0点で、天然界面活性剤なら100点なの???
という話ですからね。

これをやるのであれば本来は化学構造から推定すべきであって、例えばパラベンであるとしたならば、いわゆる亀の甲と言われる「ベンゼン環」を持っているから皮膚に対する影響が強くなる・・・といった検証の仕方ですね。
もちろんそうなると、化学構造的にこれにメチルがついたメチルパラベンはどうなの?とか、ブチルパラベンとの違いは?ということになってきて、判定は複雑怪奇になるわけです。
パラベンごときでもこうですから、界面活性剤のように化学構造が複雑化すればどの程度の人体に影響するのかは、誰にも分からないわけです。

加えて、誰でも分かるもっと大切なことがあります。
例をあげてみましょう。

塩は普通に調味料として皆さんも毎日摂取していますね。
つまり特に危険な食材として指定されているわけでもないのは、当たり前のことです。
ところが、これをもしも1kg接種すれば人間は死に至ります。
するとこれは、点数をつけるとすれば何点になるのでしょうか?

どんな成分でも必ず致死量というものがあり、摂取量によって毒にもなれば、薬にもなり得るのは当たり前の原則です。

ということは、化粧品の成分も全く同じです。
配合量によって大きく人体への影響も変わってくるわけです。
パラベンを数十%も配合するバカはどこにいるんだ!って話です。

そうかと思えば、ほんのごく微量で人体に影響する化学物質もあるのは皆さんもよくご存じでしょう。
例えばうるしなど、天然素材にわずかに含まれている物質でアレルギーを起こして時に死に至ることがあるのは、普通に知られていることです。

シリコンなどは最たる例で、化学屋の誰に聞いても人体への影響が皆無の無機物成分が、どんな影響を及ぼすというのか、きちんと説明してもらいたいと思うのは私だけではありません。

もうお分かりですね。
たったひとつの成分だけを捉えても、その安全性についての評価は専門家でもひとことでは語れない、非常に繊細なことというわけです。

ここで最初の化粧品の解析アプリへと話を戻します。
こんなことが書かれてあります。

もうお分かりと思いますが、問題点を列記しましょう。

 ・何十種類もの成分の混合物で、全成分から何を基準にして★の数を決めたのか?
 ・成分の皮膚内浸透は化学構造に依存しているのに、それは無視するのか?
 ・原料メーカーやグレード違いで、機能評価は全く変わるとは考えないのか?
 ・危険な成分・安全な成分を決めた基準はどこにあるのか?
 ・配合%も分からないのに、どうやって危険度が判定できるのか?
 ・成分同士で起こりうる成分間相関性(反応)は無視するのか?

こういうことを踏まえると、私のような処方設計を生業にしている技術者だったところで、全成分を見させて頂いても配合%や成分の相互関係というのは不確定な要素を排除できず、「〇〇〇になる可能性が高いのではないでしょうか」といった評価しかできないのが現実というわけです。

例えば皆さんも非常によく目にする「ヒアルロン酸Na」
これすらも、分子量が80万クラスから200万クラスまで、メーカーさん・グレードによってバリエーションが様々なんですね。
そして80万と200万では、まったく保湿性能は異なるのが当然なのです。
こんな感じで成分なんて無限にバリエーションがある素材もたくさんありますので、そう簡単に全成分から情報が得られるわけもありません。

まぁ、実際に私が組む処方設計でも、全成分を同業者の技術者がみても分からない創意工夫をするのが仕事ですので、バレるようなシロウト仕事をするわけがないです。
バカにするのもほどほどにしとけってお話です。
あのアプリを設計した方に、市販コスメの全成分から同じモノを作ってもらいましょうかね。
資生堂さんのお安いドラッグ系シャンプーひとつとっても、1週間で同じ使用感のものが作れたら土下座させて頂きますね(笑)

というわけで、あのようないい加減なアプリに頼るユーザーさんはおられないとは思いますが、それでも化粧品によるカブレで痛い目に合われた方や、アトピー体質などで使える化粧品がごくわずかで死にたいほどお悩みの方は、わらをもすがる気持ちで使ってしまうことになるのでしょう。

それを見込んだ上で、弱者をカモにするようなズル賢い商売に走る協会事業を許すまじ・・・というのが、今回の記事でした。

by.美里 康人

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