化粧品開発のご相談はビークラボへ >>

「界面活性剤」「石油由来」の概念が変わる

石油由来

いきなりですが、ずいぶんと以前にも
業界技術分野の世界に「合成界面活性剤」という用語はなく
いわゆる消費者が作った造語だと
説明したことがありました。

ただ、もう言葉としてはかなり広がっていて
美容業界の技術論文などでも出てくるほど
汎用性がありますね。

とはいえ、やはり学問的には
この言葉は不適切であることに根拠があり
それは、その基準となる根拠が曖昧であることに由来しています。

その説明には
例をあげるのがお分かり頂けやすいと思います。

例えば、化粧品によく使われる界面活性剤の中に
グリセリン系と言われる界面活性剤があります。

そのひとつをあげると
「モノイソステアリン酸ポリグセリル-10」
こんなのがあります。

よく「-10」と数字がついてたら「合成」
判断の方法として伝授されている消費者の方も見受けます。

が!

この10というのは
グリセリンを約10個連ねてある*という意味ですので
天然由来のグリセリンから作られていることになります。
*理解しやすい表現にしていますので、化学的なツッコミはごカンベンを

そして、成分名の一方にある「モノイソステアリン酸」はどうでしょう?

ステアリン酸というのは植物などの脂肪酸から採取されますので
「合成ではない」と言えるのですが
この「イソ」とついたステアリン酸というのは曲者。
アルドール縮合などといった方法で
合成して作られることも多い成分。

つまり、化学構造の片方は天然由来なのに
もう片方は合成と呼ばれやすい
石油の由来。

果たしてこれは
天然由来と言って良いのでしょうか?
それとも合成界面活性剤?

この判断に何か指針や規定があるわけではありませんので
いわば、化粧品メーカーさんによってこの判断は様々。
化学構造の一部でも天然由来の素材が含まれていれば
それは天然由来成分にふるい分けしても良いという
企業さんも多いですし
それも許さないというメーカーさんもあります。

これが「曖昧な基準」ということになってしまう理由ですね。

まして、私達化学屋の基準で言ってしまうと
まず界面活性剤のように
「二つの物質をくっつける行為そのものが、化学合成」
となりますので
天然素材なんて動植物エキスくらいになってしまいます。

昔に記事にしましたが
厳密にいえば「スクワラン」ですら
「スクワレンに水素を化学的に反応させたもの」ですので
全くの天然の油ではないというわけです。

とまぁ、そんな諸事情のもとに存在するこの言葉ですが
今回の記事の焦点はここではなく
実は、既に世界は変わりつつあるというのが
今回の話題。

ここまでの事情を踏まえて
どう転んで判断しても今までは
「合成界面活性剤」としか言いようがなかったのが
いわゆる「PEG系」と言われる界面活性剤。

PEGとは「ポリエチレングリコール」の略で
「ポリオキシエチレン」「エチレンオキサイド」とも呼ばれ
つまりは
石油や天然ガスから分留された「エチレン」ガスを
たくさんくっつけた物質です。

この「たくさん」の部分の数が
全成分名の数字に表されているため
よく「数字がついていると合成界面活性剤」と言われるゆえんです。

例えば
「PEG-20ヒマシ油」

これはヒマシ油にPEGを20個
くっつけてある
という意味です。

いくらヒマシ油が天然の油であっても
これを天然由来界面活性剤というのは
誰しもが否定してきたところです。

ところが!!
これが覆される時代がやってきたんですね。

なんと、このエチレングリコールを
「バイオエタノール」から作ることに成功しています。
なのでこちらで開発された界面活性剤は
完全に天然由来ということが可能になったというわけです。

ということは近い将来において
医薬品の軟膏基剤に使われる「PEG-1500」
天然由来のバイオエタノールから
作られる時代がやってくるということになります。

いや、まだめっちゃお高くなるので
そう簡単にはいかないのですが・・・。

そんな環境事情の最中にあって
一方で面白い動きも出ていますね。

「ワセリンは天然素材です。」

これ、私もずいぶんと昔に記事にしたことがありますね。

ワセリンは皆さんご承知の通り
原油から作られて精製されます。
この原油由来であることから
化学合成素材だと言われてきたのですが
原油は自然の堆積物質が蓄積してできた燃料で
それを掘り起こしたもの。

つまり、石油そのものが天然の物質なんですね。

こういうことを
ワセリンを主剤にしている化粧品ブランドさんが
今、意欲的にPRしているようです。

まぁ、私自身のポリシーは皆様ご承知の通りで
どっち偏りでもなく
いわば
「どっちでもいい」(笑)

とにかく、「ヒトに対して害がないモノ」が基準。
そういう意味においては
天然の物質に対してアレルギーを訴える人間が
どんどん増えていることがもっとも怖いことと感じます。

今どきは、飲食店に出向いても
必ずアレルギー物質を含む自然の素材が
ずらずらと明記されています。

私の子供の頃の時代には
考えられない飲食業界になりましたね。

人のカラダがこうなってきた根本的要因は何なのか
非常に興味があるのですが
私は専門外なので分かりません(苦笑)

ではまた次回。

by.美里 康人

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です